第68話

 メルルは全身完全凍結、キョーヤは全身粉砕骨折、両者死亡という引き分けで幕を閉じた。

 が、メルルとキョーヤの戦闘が終わっただけで、戦場は未だ広がり続けており、あちこちで戦闘が繰り広げられていた。

 しかし、この戦闘が与えた影響は大きく、破壊女帝が散ったことを知った女帝の鎖のメンバーたちは奮起し一気にティルトイズマネー側が優勢となる。

 このまま砂金狐が押し切られると思ったプレイヤーは多く、特にプロチームがアマチュアと引き分けになったという事実は味方の士気を大きく下げていた。

 そんな状況を打破したのはキョーヤと同じアストリアのプロプレイヤーだった。

 ただし、キョーヤと同じパーティではない。


「あっ、あれは……」

「アストリアトップのグラシェールだ!!」

「まさか、アストリア総戦力でのバックアップなのか!?」

 現れただけで興奮が伝播し士気が上がる。

 いるだけで安心感がある絶対的なカリスマ。

 ルミナスオンラインを始めて僅か二ヶ月足らずで並いる強豪を打ち破り闘技場でトップテンに入った。

 その実力は名実ともにアストリアのトップでキョーヤたちをすでに超えている。

 アストリア内で模擬戦をしたりするのだが、キョーヤはグラシェールに勝利したことはない。

 闘技場ランキングで十位に甘んじているのはシステム上不可能だからだ。

 現在の闘技場は勝利ポイントによってランキングがつけられるのだが、一日の試合数が決められている以上、物理的に超えれない壁がある。


「ふぅ、あまり干渉しずきるのも問題なんだが……あいつらがやりすぎてなければいいが」

 アストリアは大手プロチーム、多少の助成ならまだしも過度にどこかの勢力に加担することは良しとされていない。

 ギルド同士の軽いイザコザならとアストリアルミナスオンライン部門の監督が依頼を受けたのだが、予想よりも大事になってしまい困っていた。

 監督からの指示でもあまりやりすぎるなと言われている。


「くそっ!! 向こうはダメだ狂犬が暴れ回ってる!!」

「うわぁぁぁ、アストリアの……狂……」

 人がどんどんと流れてくる。

 向こうで暴れているプレイヤーがいるからに他ならない。

 そして逃げてくる者が口々にする名前はアストリアの同じパーティの一人を示唆していたことにグラシェールは頭を抱える。


「なっ!? こっちにはグラシェールが……」

「どうせ、もう終わりだ!! 一か八か全員でかかれっ!!」

 後ろにはアストリアの狂犬、前にはアストリアトップのグラシェール、プレイヤーたちはグラシェール目掛けて一斉に襲いかかる。


「はぁ……振りかかる火の粉は払うしかないか。ヘルブリザード」

 軽くあしらうように腕を振ると猛吹雪がプレイヤーたちを凍てつかせた。

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