第66話

「雑魚が群がってどうするってんだよ」

 アストリアの若きプレイヤーキングが双剣を振るい一陣の風を起こす。

 風が複数人の横を撫でて抜けていくと、いつのまにか切り刻まれている。

 烈風双剣『鎌切』の威力もさることながら、キングの身につけている指輪に腕輪、ネックレス、ピアスなどの装飾品は風属性の攻撃を強化するスキルで固められている。

 威力も射程も桁違いに上がっていた。


「しっかし、次から次にどこから湧き出てくんだろうな」

「キング、下がってくれ」

 10人程度がやられたくらいでは勢いは止まることなく屍を踏み越えてアストリアのメンバーに襲いかかるプレイヤーたちの前に立つキョーヤ。

 服装は白を基調とした高貴な雰囲気を感じさせるものだが、戦いには向いてなさそうで、武器の類も持っていない。


「なんだこいつは?」

「バカが轢き殺せ!!」

「ガキはお呼びじゃねぇんだよ!!」

 問答無用で三人が三方向からキョーヤに飛び交かる。

 

「換装、氷帝『ニヴルヘイム』」

 キョーヤがネックレスに手をかけてスキルを発動した瞬間に氷の鎧に包まれる。

 キョーヤのクールでスマートな印象とは裏腹にその鎧は荘厳さは感じさせるものの、透明な青と白で飾られたゴツゴツとしたフルアーマー。

 切りかかったプレイヤーの刃は分厚い鎧に阻まれる。

 それどころか刃を通して体を凍てつかせる。

 三人のプレイヤーは一瞬、空中で静止してそのまま地面に落ちて砕け散った。

 ゆっくりと歩いていくだけで近くのプレイヤーが凍っていく。

 近づけないと踏んで遠くから攻撃しようとするプレイヤーはアストリアの他のメンバーによって邪魔をされる。

 キョーヤが目指すのは敵の本陣。


 実は砂金狐が仮の拠点としている村の近くにはもう一つ村がある。

 砂金狐が村に入って一日後にはもう一つの村に物資やら人が集まり出していた。

 相手は隠すつもりもないらしい。

 裏で糸を引いているのはティルトイズマネーだ。

 つまりは商売を主としたギルド同士の抗争ということ。

 今までは商売する客層もエリアも違っていたため何事もなかったが、砂金狐が第三の町に拠点を移すことになり、それをよしとしないティルトイズマネーが大規模な妨害工作に打って出たわけだ。


「はんっ!! あんたがアストリアの氷帝か?」

「あなたは女帝の鎖の破壊女帝、そちら側についたとの噂は本当だったようですね」

「私と相対して余裕そうだな、クールぶったイケすかねぇガキは嫌いだよ」

「淑女がその言葉遣いはいかがなものかと思いますが……」

「ぶっ潰してやる!!」

「加減は苦手なのでお気をつけください」

「生意気すぎるぞ、クソガキがぁぁぁ!!」

 メルルが高く跳躍して大槌を両手で握り全力で振り下ろす。

 迎え撃つようにキョーヤは拳を振り上げる。

 両者の激突で辺り一体の地面が割れて冷風が吹き荒れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る