第58話
ヒョウガから放たれた無数の氷の棘がミサイルのようにテンペストドラゴン目掛けて飛んでいく。
威力が高く同時に複数撃てる上に追尾性能もついている。
しかし、風の壁は分厚く棘は粉々になって空気中に散っていった。
空の王者たるテンペストドラゴンからすればいつもの光景、さしたる違和感も感じない。
悪あがきのようにアンドロマリウス、シェアロも続けて無意味な攻撃を続ける。
幾分かそんな光景が続き、ダメージはないもののさすがにイライラが募り、二人同時に攻撃しようとテンペストドラゴンは考えた。
二人は竜巻の攻撃が被らないような絶妙な位置を保って互いに攻撃を仕掛けてヘイト管理をしていた。
そんな二人を同時に攻撃できるとなると相当な広範囲、渓谷そのものを崩してもおかしくないほどの大規模な攻撃。
それはまさに天災。
テンペストドラゴンのランクはAランク上位、しかし今から放とうとしている攻撃はSランクを優に超える。
普通に討伐しようとしていればお目にかかることのない特殊な攻撃。
テンペストドラゴンとそれに相対する存在の互いが戦闘を継続して10分間ノーダメージでかつ、完璧なヘイト管理が行われていた場合のみ行使されるカタストロフテンペストはテンペストドラゴンがブレスを天高く撃ち放ち、それがキーとなって渓谷全体を押し潰すほどのダウンバーストを発生させる。
回避も防御もほぼ不可能。
ましてやアンドロマリウス、シェアロのレベル、アイテムでは絶望的。
いくらアンドロマリウスが知識を蓄えていようと、現状で発動されればどうすることもできない。
テンペストドラゴンが大きく息を吸い込んだと同時にそれは起きた。
魔法が光剣が氷の棘が風の壁を突破した。
さらに巨体が地面に落ちる。
「今だ!! 全力でやれ!!」
「幾重もの道連なり王道を斬り開け、煌剣・輝々閃々」
「凍てつき殺せ、絶対零度の槍」
何本もの光の太刀筋が鱗を斬り裂く。
投擲された氷の槍が体を貫き、傷口から凍結していく。
自慢の風もなく、空も飛べないドラゴンは格好の餌食にしかならなかった。
-インフォメーション-
ドラゴンラヴィーンのボスモンスター、テンペストドラゴンの討伐に成功しました。
ボス討伐報酬が分配されます。
嵐竜のドラゴンブラッドを獲得しました。
「ふぅん、まぁ当たりともハズレとも言えない微妙な結果だな。そっちはどうだった?」
「実は……」
「おぉ、それは天嵐の衣じゃないか!! 大当たりじゃん」
「でもぼくはほとんど何もしてないし、これは兄貴に渡しますよ」
「何言ってんだよ、報酬分配なんだから気にせずに受け取っておけって、実は俺からすればこのドラゴンブラッドは悪くないアイテムだしな」
「そうなんですか?」
「あぁ、これを飲むと身体能力が永続的に若干上がるんだ。下手なアイテムよりもいい。それにここに来た目的は達成できたしな。そんなことよりもスキルはどうだった?」
激戦の後だというのに他愛もない会話は続いた。
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