第46話
「どういうつもりだ!? 昨日どれだけの襲撃があったか状況わかってんのか?」
「しかしですね、そう言われましてもモンスターの対応を含めた金額を支払っておりますので」
「だが、ブリザードウルフの群れにブリザードフォックスの群れ、果てには雪巨人までも現れたんだぞ」
若い男が商隊の責任者に詰め寄る。
ブリザードウルフにブリザードフォックスは一匹一匹がレベル50を超え、雪巨人に関してはレベル60を超えている。
Bランクモンスターとはいえ群れの上に波状攻撃のような形で襲撃を受けていた。
モンスターがそんな行動を取ることはないので不運としかいいようがない。
寝ずに繰り広げられた戦闘で20人いたフリーの冒険者は半分に数を減らしている。
その原因として商会側の人間が一切加勢していないことを論点に言い争っているわけだが、商会側のモンスターの相手を含めた金額を支払っていると言われればその通りと引くしかない。
残念なことに死んだ人間は前金しか貰えないことになっているが、その前金から破格の報酬を貰っている以上は文句をいうのは筋違いだ。
慣れている人間は割り切って静かに話を聞いていた。
「ねぇねぇ、あんなの絶対におかしいよ」
「分かってるよ、あまりにも不自然だ」
しかし、商会が何かをやっている証拠なんてないし、そもそもやっていたとしてもモンスターの素材を集めるために呼び寄せたというのなら問題じゃない。
ただ、十中八九黒い噂は真実なんだろう。
前金で15万、成功報酬で15万、この成功とは町まで生き残って護衛をしたらという条件になる。
ブリュークの雪原ならそこまで難しい依頼でないし、破格の報酬でこの辺で取れる素材で商売をしようとすると、商会は赤字かトントンくらいになる。
それがブリュークの奥地に生息するモンスターとなれば話は変わる。
その上、成功報酬も払わなくていいとなると商会はボロ儲けだ。
「どうすんのさ?」
「どうもしないよ、当初の予定通りに行くだけだ」
「えぇ〜!? やっぱ本気なの?」
「当然だろ」
「やっぱあんたって頭おかしいよ。死にたいわけ?」
「今まで俺が死んだことあるか?」
「うーん、ないけどさぁ。でも今回の作戦は無謀すぎるよ」
「大丈夫だって……大丈夫なはず……」
「あんたが大丈夫だって言うんなら信じるけど、あんたが死なところなんて見せないでよね!!」
「安心しろって死んでる暇なんてないんからな」
デスペナルティはアイテムがロストする危険だけでなく24時間ログアウトできなくなるし、経験値は減少するしで一度死ぬだけでかなりの足止めになってしまう。
「ルーキーのくせに、随分と落ち着いているなぁ」
ターニャと小声で喋っているとキングスバレイが話しかけてくる。
「ふんっ、酔っ払いの割に冷静だな」
「生意気な奴め、お前がただのルーキーじゃないのは知ってる。それでお前はあの商会をどう思う?」
「ティルトイズマネーか、真っ黒だろうな」
「まぁ、そうなるわな、ところでいい儲け話があるんだが聞く気はないか?」
「怪しすぎて聞く気になれん」
「ちっ、しゃあねぇか、敵対しないことを願ってるぜ、ルーキー」
キングスバレイは酒瓶を開けて飲みながら踵を返していった。
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