第2話
「うぉっ、すっげぇリアルだな」
「リリースしてすぐにやればよかったな、出遅れたぜ」
「ねぇねぇ、ちゃんと守ってよね」
「わかってるって、チュートリアル始めるぞ」
「そこのお嬢さん、俺っち実はβ版テストからやってんだけどよければいい狩場とか教えるよ」
「えー、キモいんですけどぉ」
「そんなこと言っちゃダメだよ。すみませんこの娘口が悪くて……」
「早く行こうよぉ!!」
「俺も行く!!」
ガヤガヤと何気ない会話が耳に入ってくる。
このダンジョンはそんなに人が来る場所話でもないのに、何かのイベントか。
目を開けると俺は見覚えのある真っ白な天井を見上げていた。
「あの……大丈夫ですか?」
「こっ、ここは!?」
「ここはチュートリアルの塔ですよ。ずっと上を見上げてぼーっとしてたんで心配しました」
チュートリアルの塔、やはりそうか。
でもどうして今更こんなところに。
「何かのバグか……?」
「あー、バグとかではなくてVR酔いだと思います。慣れてないとなるんですよ。すぐに慣れるはずですが」
シルバーメッシュの少年が説明してくれるが理解できない。
いや、これはまさか……
「ルミナスオンラインが発売されてどれくらい経ってる?」
「半年ぐらいですよ」
「そうか、やはりな、アハハハ、ハハハハハッハハハハッ」
「……? 本当に大丈夫? 一度ログアウトしたほうがいいんじゃないですか」
何が起きたのか、ここは俺が初めてルミナスオンラインにやってきた過去の世界だ。
少年の言う通り、このときの俺はフルダイブ型のゲームが初めてでそれはそれは酷いありさまだった。
それにゲーム自体の経験が少なく、非効率の極みを征くプレイスタイルを数年続けることになる。
それでも楽しくてしょうがなかった。
今となっては懐かしくて良い思い出だ。
「少年よありがとう。俺は今最高に気分がいい。もしも困ったことがあれば力になってやる!!」
「は、はぁ……」
「俺の名前は……っと、アンドロマリウスだ。覚えておいてくれ。歴史に名を刻む偉大な名前だからな」
「少年もキャラクタークリエイトがまだのようだし、じゃあ、またな」
互いの頭の上に表示されるはずのネームが空白になっていた。
これはまだキャラクターが作られていない証拠だ。
目の前に浮かんでいるクリエイトボタンを押せば自分だけの世界に移ってチュートリアルが開始される。
最高の気分のまま俺はボタンを押した。
「キョウヤ、さっきの人はファンか何かか? 随分と絡まれてたみたいだけど」
「いや、彼は僕のこと知らないみたいだったよ」
「ちぇっ、俺らの知名度なんてそんなもんか」
「大体さぁ、ウチのチームもスポンサーの意向か何だか知んねぇけど、半年も出遅れたじゃん」
「まぁまぁ、僕らアストリアなら半年ぐらいすぐに追いつけるさ」
「まっ、とっとと作って、とっとと行こうぜ」
アストリア、多数のプロゲーマーが在籍しており、多岐にわたるタイトルで実績を残している強豪チームがルミナスオンラインに参入していた。
アストリアの中でVRMMOのPVPで特に定評のある5人は、のちに破竹の勢いで名を上げ、一時は全員がトップランカーに名を連ねることとなる。
しかし、このときのマサヨシは興奮のあまり気づいておらず、「あれ、少年なんて呼んでたけどよく考えれば俺と同い年くらいじゃん」などと呟きながらキャラクターを作ろうとしていた。
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