負け組の廃人はルーキーに生まれ変わって無双する!!

セフェル

第1話

 誰もが輝ける主人公に……

 そんな触れ込みのゲームタイトル『ルキナスオンライン』がリリースして10年、世界中を熱狂の渦に巻き込んだソレは新規リリースされるゲームらを押さえ込み、未だなお根強い人気を誇っていた。

 プロリーグが開設され、億越えのプレイヤーが次々に誕生する中、競走に敗れるどころかスタートラインにすら立てなかった俺は、華やかな生活とは真逆の四畳一間のボロアパートで白米ともやしで栄養補給してからVRカプセルに入る。


 俺の名前は日影ひかげマサヨシ、こっちの世界ではアンドロマリウス。

 動画で見たとあるプレイヤーに感銘を受けてクリエイトしたキャラクターは全てを力で粉砕する脳筋スタイルだ。

 全身を覆うゴツイ黒と赤の鎧もそのプレイヤーを真似ているが、本物には遠く及ばない。

 その上、まだ左腕が完成していない。


「よぉ、またきたぜ。まじでそろそろ頼むよな」

 獄卒鬼-殃禍おうか、3メートルを越す巨体から繰り出される棍棒の振り下ろしは絶大な威力を誇り、赤黒い皮膚は魔法を弾く。

 物理特化の俺にとっては相性のいい相手だが、それでも倒すのに数時間を必要とする。

 

「あぁ……ダメか……」

 これで何十周目だろうか、お目当てのアイテムがドロップするまでひたすら周回。

 ボスモンスターの希少ドロップとなると確率は1パーセントを下回る。

 俺はそんな高望みはしていない。

 10パーセント程度のアイテムでいいんだ。

 それでも数十時間以上はかかる計算だが、根気よく頑張っていればいつかは……

 ボスを倒してからポップするまでの時間も無駄にしたくないので近場で鉱石を採掘する。


「っと、少し採掘に時間をかけすぎたか、もうポップしてる頃だな」


 あっ……


 そこには先客がいた。

 スカイブルーの全身鎧を身に纏っている男は殃禍と相対したばかりでまさに今から戦闘が始まるところだった。

 男が駆け出したのと同時に殃禍も動き出そうと右足を踏み出した次の瞬間にその右足が砕けた。

 そのまま態勢が崩れて地面に倒れると全身も粉々に砕ける。

 不可侵の氷城セイクリッドアイスキャッスルの異名を持つ切長の眼をしたクールイケメンでモデルもしているプロランカーのグラシェールだ。


「心臓か……いらないな」

 グラシェールが手に持つ心臓が破棄を意味するエフェクトと共に消えて、そのまま奥へと進んで行ってしまった。

 俺が何十時間もかけて手に入れたかったアイテムがゴミのように破棄された。

 そりゃそうか、プロからすれば価値もないアイテム、それを必死になって手に入れようとした俺は……


「はぁ、はぁ、はぁ、うぅぅ……」

 心臓の鼓動が早くなる。

 目眩がして立っていられない。

 急に……眠気が……そういえば、何時間起きてるんだっけ……

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