最強で最弱の賢者〜Sランクスキル「視界に入った物を爆発させる」を手に入れて無双できるかと思いきや日常生活すらままならないんだが〜
伝説の貧乏小僧
第1話 全ての始まり
俺の名前はダンテ・ウィリアムズ。チャームポイントはサラサラの髪と、澄んだ青い瞳だ。碧眼の男って超かっこいいだろ?
今日は俺の十六歳の誕生日だ。この世界では十六歳で成人になる。晴れて俺も、大人の仲間入りって訳さ!
さて俺の誕生日パーティーといこうか。今日のために街中の人間にパーティーの招待状を配っておいたからな。さぞかし沢山の招待客がいることだろうよ。
俺は自室の扉を開けてリビングに向かう。
「待たせたなお前ら! 今日の主役の登場だぜ!」
「あら、ダンテおはよう」
「あ、母さん。おはよう…」
あれ? おかしいぞ。俺の誕生日って確かに今日だったよな? 間違えてないよな? 家には母さん以外誰もいないように見えるんだが…
寝ぼけてるのかもしれない。とりあえず顔を洗おう。
俺は顔をじゃぶじゃぶ洗い、再びリビングに戻った。さて、どれくらいの招待客がいるかな? 数えてみよう! えーっと、ゼロだと!? 一でも二でも三でもなくてゼロ!?
「ふむ…これは夢か」
「現実を見なさいダンテ! あなたみたいな友達もいないぼっちの誕生日を祝う人なんて誰もいないに決まってるでしょ!」
少しオブラートに包んでくれたって良いじゃないか。実の母親にまでそこまでボロクソ言われると、流石に傷つくぜ。
「もうちょっと寝てくるわ…」
「駄目よ! この後ギルドに行かないと!」
あー、そういえばそうだったな。誰も誕生会に来てくれないのがショックで忘れてたぜ。
この世界では十六歳になると全ての国民に職業が割り当てられる。職業は農民、鍛冶屋、商人などの他に戦士、魔法使い、僧侶などの戦いに関するものがある。その手続きをするためにギルドに行かなければいけないのだ。
「じゃあ行ってきます」
俺は家を出てギルドの方向に歩き始めた。自宅からギルドまでは徒歩十分だ。俺の家は馬車の駅まで徒歩五分、商店街は目と鼻の先で最高の立地なんだ。とっても暮らしやすいぜ!
どうせなるなら戦闘職が良いな〜なんて考えながら歩き続け、ギルドに到着した。
「たのもーう!」
「いらっしゃいませ。整理券を取ってお待ちください」
俺は「30」と書かれた紙を受け取る。今、呼ばれてるのが8番だから相当待つことになりそうだ。
ギルドには初めて来たが、お役所みたいな感じだな。もっと筋肉ムキムキの冒険者達がひしめき合う感じの空間を想像してたんだが…
待ち時間やることも無いので、とりあえず俺は眠ることにした。昨日、誕生日が楽しみ過ぎてなかなか眠れなかったんだ。その期待も全て空振りに終わったがな。
「整理番号30番、30番の方〜!」
受付嬢の呼ぶ声で俺は目を覚ました。ウトウトしながらカウンターへ足を運ぶ。
「ダンテ・ウィリアムズ様でいらっしゃいますね?」
うわ、何だこの受付嬢!? おっぱいでけえ! 制服からはみ出そうだ。谷間が見える。ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。
「ダンテ様、本日はどういったご要件でしょうか?」
すごい揺れてる! 柔らかそうだな〜、触りたいな〜。
「あの、ダンテ様…?」
「あっ、すみません!」
いけない、いけない。巨乳に魅入られて意識が飛んでた。これじゃただの変態小僧だと思われちまうよ。
だけど仕方ないよな。巨乳だもん。男は誰しも巨乳に憧れるものだろ? しかもこの女、金髪なんだぜ。金髪で巨乳って俺のハートにドストライクだよ。
「今日で成人なので職業を割り当ててもらいにきました」
ドキドキする胸を押さえながら、どうにか声を絞り出す。
「かしこまりました。それではこちらのハンドルを一回転させてください。中から玉が出てきますのでそこに書いてある職業があなたの職業です」
「ちょっと待て。これ商店街の福引きとかに使うガラガラじゃねーかよ!」
「ガラガラじゃないですよ! このギルドに古くから伝わる神器です! この神器があなたの適性を判断して職業を割り当てるんです」
どっからどう見ても神器には見えないがな…まあ文句を言っても仕方ないし回すか。
「えーっと、俺の職業は…賢者!?」
「上級職ですね! おめでとうございます!」
受付嬢はハンドベルを鳴らして俺を祝福する。まんま商店街の福引きじゃねーかよ。
何はともあれ賢者になれたことはすごく嬉しい。賢者は高い魔力を持ち攻撃魔法も回復魔法も使える魔法のエキスパートだ。魔法使いと僧侶の存在価値を全否定する完全上位互換である。
「俺、人生の勝ち組じゃん! これで来年の誕生日は多くの人が祝いに来てくれるぞ!」
俺はガッツポーズをして心の内を大声で叫んだ。
「現在、初心者応援キャンペーンをやっているのですが参加されますか?」
「初心者応援キャンペーンってなんぞ?」
「新しく戦闘職に就かれた方にランダムに一つスキルをプレゼントします。FランクスキルからSランクスキルまで多彩なスキルがありますよ。特にSランクスキルはどれも強力で、どんな敵も瞬殺できる優れものばかりです!」
「Sランクスキルってどんなのがあるんすか?」
「ノートに名前を書いただけで相手を殺せるスキルとか、死んでもセーブした所で復活できるスキルとか、この世に存在するあらゆるベクトルを自由に操作するスキルとかですね」
どこかで聞いたことあるようなスキルばっかだな…
「じゃあせっかくだから参加します」
「それではこちらのガラガラを回してください。金色の玉が出てきたらSランクスキルですよ」
もうガラガラって言っちゃってるじゃん…
ま、とりあえずガラガラ回すか。玉の色は……金色じゃん! 上級職になれたうえにSランクスキルなんて最高過ぎるぜ! もしかして俺、この世界を支配できるんじゃねーか?
玉にスキルの内容が書かれてるぞ。小さい文字で読みにくいな。えーと、なになに? 「視界に入った物を爆発させる」だって? 絶対最強じゃんこんなの!
「こ、こ、こ、このスキルは…」
うんうん、お姉さんも俺の最強さに絶句してるみたいだな。
満足気に頷いた次の瞬間、ギルドが吹き飛んだ。何言ってるか分かんないと思うかもしれないが、冗談抜きでギルドが吹き飛んだ。壁も天井も椅子も机も何もかもだ。幸い怪我人が出ることはなかった。
「ダンテさん! これをつけてください!」
受付嬢のお姉さんが黒い布のような物を投げつけてきた。
「何これ、アイマスク?」
「良いから早くつけて!」
俺は訳もわからず、言われるがままにアイマスクを装着した。
「何が起こってるのか説明してくれる?」
「あなたの視界に入ったからギルドが爆発しました」
「え? もう一回言ってくれる?」
「あなたの視界に入ったからギルドが爆発しました」
「俺の能力って『視界に入った物を爆発させる』だったよな? 爆発させたい物とさせたくない物を自由に決められるんじゃないの?」
「いいえ、視界に入った物『全て』爆発します」
「は? それ欠陥スキルじゃねーか!」
「使い方によっては強いんですけどね。Sランクスキルの中では一番使いにくいですが」
運良くSランクスキルを引き当てたと思ったら一番のハズレスキルを引くとか最悪だよ。アイマスクをつけたままだと、まともな生活送れないじゃんよ。
「このスキルいらないんで返品します」
「できません。一度付与されたスキルは基本的に返品不可です」
「は? じゃあ一生アイマスク生活しろってこと?」
「そういうことになりますね」
畜生、ふざけんじゃねえよ。一生アイマスク生活とか実質失明したのと同じじゃん。
「でも一応、希望はありますよ」
「希望?」
「心眼のスキルを修得してください。そのスキルがあれば目を閉じていても目を開けているのと同じように生活できますよ。真っ暗な洞窟なんかを探索するのにも役立ちますね」
「へー、その心眼スキルは簡単に修得できるの?」
「心眼はAランクスキルですのでかなりレアです。ですが、モンスターを倒したりして根気よく修行すればいつかは修得できると思いますよ」
なるほど、望みはゼロではないのか。険しい道のりになりそうだが俺は諦めないぞ。鍛錬を積んで必ず心眼を手に入れて見せる!
「一流の賢者になるぞぉぉーー!」
俺は叫んで自分に喝を入れる。
そんな俺の背中を受付嬢はとんとんと叩いた。そして俺に一枚の紙を渡す。視界が塞がれているから何が書いてあるか分からんがな。
「盛り上がってるところ悪いのですが、こちら請求書です」
「ん? 請求書?」
「あなたのせいでギルドが壊滅したので建て替え費用の請求です。流石に全額は可哀想だということで三千万ゴールドだけ払ってください」
俺は成人した当日に三千万の借金を背負うことになるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます