イチャラブ予定の幼馴染みがある日いきなりおっさんに見え始めたんだが俺は彼女を愛し抜けるだろうか

山田 マイク

第1話 おっさん、誰!?


「こーら! 早く起きなさいよっ! この、バカ翔平しょうへい!」


 ああ、咲良さくらが来た。


 俺は朝のまどろみの中で思った。


 ったく、うるせーやつ。

 

 彼女でもないのに。


 ほんと、毎日毎日ご苦労なこと。


 マジでお節介なやつだ。


 お節介なやつではあるんだが。


 ……まあ、そんな悪い気はしねーんだけどさ。


「うーんむにゃむにゃ。あと8時間だけ」


 俺は眠くて寝返りを打った。


 すると咲良は右手をプルプルと震わせた。


 それからいい加減にしなさいよねと言いながら、


「起きなさいよ! ほんとうに遅刻しちゃうわよっ!」


 強引に布団をはぐった。


 俺は布団に巻き込まれて反転し、そして仰向けになった。


 パンイチの俺が、仰向けになると。


 俺のパンツはテントのように隆起していた。

 

「な、なによそれ! ど、どうなってるのよ!」


 咲良は俺の股間を見たのか、声を裏返しながら怒鳴った。


「な、なんでなってるのよ! 朝からバカじゃないの! なに考えてるのよ! バカ! 変態! エロ猿!」


 咲良は手当たり次第にものを投げつけてきた。


「いや、朝だからなってんだけど」


 俺はポリポリと腹を掻きながら言った。


「咲良さ、お前、いい加減に男の身体ってもんを理解しろよ。俺みたいな健全な男ってのは、朝はいつもこんな風に――って、お前だれだよ!」


 そこで、俺は飛び起きた。


 咲良だと思っていたが。


 目の前にいるのは、見もしらぬおっさんだった。


 小太りで。


 てっぺんのほうが禿げてて。


 若干、あぶらぎってる。


 まごうことなき、おっさんである。 


「だれって言い方はないでしょ! 今日もちゃんとおばさんに挨拶して入ってきたんだから! ほんと、翔平は私がいなきゃ一人で起きることも出来ないんだから」


 おっさんは腰に手を当て、ふふん、とどや顔を作った。


 マジで可愛くない。


 絶望的にキモい。


 多分、現時点で世界で一番汚いツンデレだ。


「あ、あの、すいません、マジでだれスか。つか、ここ、俺んちですよね?」


「はん。そうくるのね。 翔平ったら、なかなか手がこんで来たじゃない! でも、あんたのことはおばさんから任せられてるからね! 言っとくけど、私だって嫌なのよ? 誰が好き好んであんたみたいなだらしない男の面倒みなきゃいけないのよ」


 おっさんはブツブツ言い出した。


 俺はそのときはたと気付いた。


 こ、この声。


 この声は。


 俺は頭を抱えた。


 声が――


 声が、咲良だ。


「つ、つかさ、あんた、いつまでその格好してんのよ。いい加減にズボンくらい履きなさいよ。ほ、ほんとに変態なんじゃないの?」


 咲良の声のおっさんは顔を赤らめた。


 禿げたおっさんが。


 死ぬほど恥ずかしそうにモジモジしながら。


 俺のパンツをチラチラ見ていた。


 俺は――


 急激にテントが萎れていくのを感じていた。


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