第3話 「桜餅と田中先生」

 「はいはいみなさ〜ん。耳だけ、こっちよ!スケジュールを言うからねえ〜〜。一回しか言いません!」


 クラブ長の田中先生が、甲高かんだかい金切り声を上げて、説明を始めた。


 「もう少ししたら、語り部の先生が来ますよ。楽しみにしている人もいるよね〜。それから、今日のオヤツは、特別メニューの桜餅さくらもちよ」


 手を止めて、一同が静かに聞いた。学童クラブ先生の指導としつけの結果なのか、全体的には、まとまりのある落ち着いたクラブでなのである。


 いやいや、はみ出しキャラはいるな。同じ学年の杉町タオちゃんもその1人である。


 「せんせ〜い、桜餅ってアンコ入ってるやつ?アンコきらいなんだけど〜!」


 「ごめんね〜。でもね、とっても美味しいんだからね。近くの永井和菓子さんのだから。人気で、東京から買いに来るお客さんだっているんだからね〜!」

 田中先生は、真面目に相手をする。


 「先生、私はすき〜〜。凄い美味しいんだよ〜〜!お母さんがたまに買ってくるから」


 お喋り大好き活発少女、やはり2年生の高橋やよいちゃんが先生に優しく助け舟を出した。

 「そうだよね!全員の好きな物は出ませんからね」お母さん的先生、ムロちゃんこと室谷先生がさらに付け加えた。


 この学童クラブ、皆が優しいのである。ありきたりで、しかし、尊いような平和な日常が、ここにはある。


 はて、此処に、事件なんて、起こるのかな?

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