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高圧電線の流れる鉄塔の上で、色素の抜けきった真っ白な少年がいた。
お気に入りの場所=平野をドーム状に覆う潰瘍が見える。
新調したばかりの真っ白なシーツで体を包む=ちょっと人間っぽくなった気がする。
人間/ただの餌である。見分けなんぞできない。相容れぬ存在たち。
ここに時々やってくるのは、潰瘍の横の建物に面白い人間がいるからだ。潤沢なマナを備えた人間=おいしそう。
とはいえ、手あたり次第食べていたのは過去の話だ。不用心に食事を続けていては人間たちが警戒することを覚えた。
龍脈からマナを補給できるが、やはりおいしいのは人間のほうだ。
その手に、得体のしれない軟体動物がいた。
「いったい、これは生き物なのか。ん? 僕を見ている?」
触手の根本に付いた目が、じろじろと舐めまわすように見ている。
「君は、いったいどこからきてどこへ行くんだい?」
答え/無し。意思疎通できる手段を持っていない。ブクブクと粘液を垂れ流すのみ。
「あはっ、面白いね。自我がないのに生きようとしている。それに、マナも、ある」
欲求=空腹。
ガブリとその生き物にかじりついた。
5本の触手が暴れるが無理に押さえつける/ああ、ゾクゾクする。生き物の抗いだ。
少年は口元を粘液まみれにし、シーツもドロドロにしながら、それをすべて腹に収めた。
「うーん、君は、まあまあのおいしさだったね」
すぐ足元の電線に触れる/指先にスパークが流れた。
「マナ、か。なるほど。君の食べ物はこれだったんだね。でも、もっとおいしいものがあそこにあるじゃないか。フフフフフフ──おいしくて楽しいことになりそう」
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