旅人
灰児
第1話旅人
故郷に帰る旅でゆっくりと鞍に揺られる
空の色は茜色で白い雲も染めている
自慢のロバに乗ってとっくりとっくり歩いて行く
急がず慌てない旅の放浪中で
旅してきた服装はぼろぼろでしかない
廃屋を雨宿りに使う、ロバをロープにつないで休ませる
ゆっくり休憩して汚れてない板の間にマントを敷いて寝転ぶ
私はにんまりと旅の酒の味を思い出す
あの女は良かったな、あの子も可愛かった、あの子は繊細だった
だけどあの子供は酷かった、握りこぶしを握って悔しそうだった。
丁寧にも親切にも愛情にも扱われず暴力を受けていた
私はだから意外にも手が出ちまった
助けてしまっただから後をちょこちょこついてくる
子供の情かけちまったよ、運の悪いことに
私の一緒にマントに潜り込んでくる女の子に
気づかないようにかけ直してやる
やれやれ女の子には食事代も衣服代もかかるよ
必ず嫌になるよ、自分の気まぐれに
雨もやみ朝になり再び出発の時
女の子を前に乗せてロバは出発する
それが少し意外だから聞いてみた
「お前は何なりたい?」と
「お嫁さん」と団栗の眼のようにじっとこちらを見る
「拾わなければ良かったよ、私は意固地でね」
「でもなるお嫁さん」ポツリとしっかりと呟く
故郷に近づきつつある村に私は故郷が大嫌いだった
自分を嫌い続ける故郷に例えそれが罵声でも
たかが血が混じり、顔が違うとその理由で
やがて一人旅を志し故郷を離れた
もう帰ってこないと決心して振り返らず
しかしあちこち旅してこんな年齢になって思うことがある
「寂しい」とあんな所でも懐かしく思えた
酒瓶を手にあおるのど越しの美味さ、焼ける感触
よその酒、食べ物はうまかった故郷には絶対ないものばかりで
女の子にも食べさせた、とても嬉しがって涙を流していた感激だろう
ただ酒を欲しがるのは参ったが、それは私の友だよ
だから帰って来た老いた母親はびっくりするだろう
情が移っちまったかね、焼きが回ったものだよ
結局私が育てることになりそうだ
もう少しであのおんぼろ家屋につく
なに周りもそうだ、臆することはなにもない
ただこの女の子の世話は私がしないと
危なっかしいからね、私は意固地だ、やれやれ本当
この子は未来の花嫁かい、酒がまずくなるね
助けて育てていい所に嫁にでも出す、相手を探す旅にまた出よう
人生の目標が出来ちまった、いらぬお節介が心情でもないのに
感謝するべきだね、入り口を見て古い家屋の列を見て思う
女の子に感謝を一握りの勇気で帰って来た、故郷に
大嫌いで懐かしい故郷にさ
酒瓶を飲み焼けるのどを潤して門に入る
心情は母親の顔を見ればわかる
私のお節介にさ
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