カトキ、トキドキ、ドキドキ

空間なぎ

第1話 オレの先輩は幽霊です

「先輩。オレ、先輩が好きです。たとえ、先輩が幽霊でも構いません。

 好きなんです。だから……」


「おい東堂、このプリント、職員室の俺の机まで頼む」


「ああああ三浦先生! なんですか!」


 せっかく、放課後の教室で、告白の練習をしてたのに。邪魔された。


 しかも、先生に。期末考査後は、みんな浮かれてさっさと帰るから、ちょうど教室が空いてんだよ。


 ちょっと諸事情あって、あまり家には帰りたいけど帰りたくない感じの、複雑なお年頃・オレ。


「いやぁ、たまたま教室に東堂がいたから。ほら、ちゃんと置いといてくれよ。職員室まで行くの、だるいしさぁ」


「はーい……」


 仕方なく、三浦先生(英語科・独身・バスケ部顧問)からプリントの束を受け取る。


 先生は、嬉しそうに体育館へと戻っていった。今日から部活が解禁されるもんな。


 この学校は、体育館と職員室がちょうど両極にある。そしてオレのいる教室は、体育館に一番近い。ここまで説明すれば、もう賢明な読者諸君は理解できただろう。


 オレ、東堂直とうどうなおは、青春真っ盛り、絶賛恋愛中の高校二年生だ。


 さっきは告白の練習を邪魔され……まぁ、あんな恥ずかしいことを、学校でやるオレが悪いんだけど。


 でも、この、放課後の誰もいない教室で、彼女のことを想っていたら、自然と口から出てしまってたんだ。


 おっと、「放課後の教室」ってワードだけで、変なことを想像するなよ、別に変なことはしてないからな?


 そもそも、オレの好きな人……オレの想い人は、もう、「死んでる」んだ。幽霊ってヤツさ。


 しかも、成仏しない幽霊なんだ。最高だろ?


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