行方不明の絆。
如月ななせ
No.1
「ちょ、ちょ、こっちくるなって!!」
「待てよ~、今度は逃がさないぞ、スペーサー」
「あはははは、いいぞいいぞ、もっとやっちゃえ!」
「ふっふっふ、スペーサー、覚悟!」
「うわあああああ!」
悲鳴とともにプレイヤーが死んだことを知らせるキルメッセージが表示される。
大人気ゲーム実況グループのメンバーであるまーみんは、キルメッセージを見てうれしそうにうなずいた。
「はい、終了~!この勝負、、、まーみんチームの勝利!」
「イイェーーーーイ」
勝負が終わったので、みんなは中庭に集まる。中庭と言っても、ゲームの中の、中庭と呼ばれている部分だが。そして今回の試合の感想を話し合うのだ。
「いやー、まーみんうまかったねぇ」
メンバーであるナスナがまーみんをほめる。もちろんナスナは本名ではない。まーみんたち実況者は大体、実況者としての名前を使って呼び合っている。
「えへへ、スぺだったからさ、本気出しちゃった」
まーみんとスペーサーは犬猿の仲・・・・・・という設定である。ゲーム実況グループは、そういうメンバー同士の関係も面白い要素なのだ。
「いや、まみ、もっと行けたよね?私まみにいいぞもっとやれて言ったよね?」
「ちょ、こわいこわいこわい。めーな怖いよ。」
「俺さ、個人的には冒頭でワイエムがナスナにサイレントキルされてたのがすごいよかったとおもうんだよね」
いつも冷静に感想を言うのはスペーサーだ。
「いやーワイエムだったからさ、本気出しちゃった」
「なんやそのセリフ。既視感感じるんやけど」
ムカトが言うと、どっと笑いが起きた。
ひとしきり感想を言い合ったところでエンディングとなる。
「次もまた、ぼくたちの動画で逢いましょう。それでは、また。」
リーダーであるまーみんがそう言って、残りのメンバーも各々別れを告げる。
ピッと録画を切ると、まーみんは腕を伸ばした。
「あーーー。録画切ったから撮影終わったよー」
「はーい。あの動画の最後に、今度の生放送の紹介載せとかないとだね」
「あー、もうそんな時期か」
しばらくメンバーとともにで打ち合わせをした後、まーみんは通話を抜けた。
「ふう、疲れた。」
伸びをして、今回の録画データをナスナに送る。
まーみんたちのゲーム実況グループは、大学の同じサークルのメンバーが集まって結成されたものだ。男女三人ずつの合計六人で活動している。メンバーは、総統まーみん、編集長スペーサー、編集員ナスナ、コラボ等連絡担当ワイエム、企画と企画準備のムカト、アシスタントめーなだ。
まーみん、めーな、ナスナは女子で、残り三人は男子である。そして編集は大変なので、表では編集長はスペーサーということになっているが、実は裏に本当の編集長アヤナがいる。アヤナはまーみんのリアルな友人で、編集技術に関してはプロ顔負けである。アヤナは裏方であまり表には出ないが、たびたび審査員や天の声、ゲームマスターなどとして動画に登場する。
「おなかすいたーー」
まーみんは冷蔵庫にあるものでパスタを作ると、それを食べてお風呂に入って、動画投稿サイトを開いた。時刻は午前二時。実況者とはこんなものである。まーみんたちは顔出し等はしておらず、個人情報についてはほとんどが不明である。性別も実ははっきりと公表していないし、年齢や、同じ大学のサークル仲間と結成されたものだということも、公表はしていない。
「この前の動画投稿しないと。」
まーみんは自分たちのチャンネルに、一週間前に撮影した動画を投稿した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます