第2章 第10部 第7話
ミコは強襲されたのではないかと、恐怖で腰が抜けそうになるが――――。
「し……ミコちゃん」
それはみどりだった。
「え……と……これはですね」
「ちょっと様子みにきたんだけど、え……お二人さんもう始めちゃってるんだ!」
みどりは声を潜めながら、ミコの高位を咎めることなく、寧ろ目をキラキラとさせている。彼女はある程度こうなることは予想していたらしい。尤も、鋭児との距離感、彼女の強引さんを見るに、焔がこの状況に燃えないわけがないと、みどりは思っていた。
「鋭児……ダメ…は………立てねぇ……」
「焔さん……」
二人のそんな会話が聞こえたと同時に、湯から上がる音が聞こえる。息も絶え絶えに震える焔の声が余りに生々しい。
「炎皇殿は、先生のおっしゃる通り手練れ……なのですね……」
「え?えんこー?」
「あ!いえ、此方の話です。ハハハ……」
きかん坊であると思われる焔を完全に撃沈させてしまっている鋭児の評価が更に一つ上がるのであった。
「あ、ご飯の時間快晴と、こっちで食べて言いって、母さんがいってたの。それでお二方にも声を掛けようとおもってたんだけど……ね」
「解りました。では、お二方をお誘いしておきます。きっと嫌と言われる方では御座いませんので……」
自分をこの部屋に、態々通してくれた焔の事を思うと、彼女がそれを断る人物だとは、ミコは思わなかった。
「え……でも、あの直後だよ!?」
寧ろみどりのほうが気が引けてしまう。ただ、二人が睦まじく求め合っている姿を想像してしまうと、それはそれで生唾ものである。
「みどりちゃん!」
「ん?」
「みどりちゃんは、カイくん……その……お二方のような……アレ……を」
モジモジとしながらも、相当大胆で踏み込んだ質問である。ミコはみどりが思うよりも思春期のようだ。
「したよ……中学卒業した日に……アッチも卒業しようって……」
ミコの耳元で、そっと甘く艶めかしく囁くみどりだった。先ほどまで元気溌剌で、好奇心旺盛な彼女とは一線を画した、隠微ささえ窺えるささやきである。
その囁き声に、思わず性感をくすぐられたミコは、思わずぞくりとし、腰を抜かして……身震いをしてしまうのである。
「はわわわ……」
しかし、それは余りに早い、奉納である。
「そそ……それはつまり、お二人も……そういうことなのですね……」
「ヘヘ……そだよ……」
そう言って、みどりはゆっくりとミコを押し倒す。
ミコは抵抗をせず、目をつぶって、両手を胸元でキュッと結ぶ。
「でも、快晴……ずっと、ミコちゃんのこと待ってたんだよ?」
「え?」
みどりのその迫り方は、今にも自分の花びらを散らさんとせんがばかりである。そして甘く耳元に掛けられる吐息に、ただただ従うのみである。
「ミコちゃんなら、別にいいよ……」
ミドリはそういって、ミコの耳にもう一度息を吹きかけ、静かに彼女から離れるが、女中姿でミコからマウントを取ったまま動こうとはしなかった。
すると、ミコは目を閉じたまま、ミドリに唇を差し出したままである。
「ミコ……ちゃん?」
「せ……先生は、ここ……ういう道もあると……、みどりちゃんなら……別に……いい……」
「そ……か」
ミドリは舌なめずりをした後、ニヤリとして、ミコの唇を奪い、深く彼女を求める。
その求め方にミコは一瞬心臓が止まりそうになるが、抵抗はしなかった。
「ミコちゃん?」
「はい……」
みどりは、下着姿のままのミコの脚をとる。
「靴連れ……痛くない?」
「え?」
ミコはいま、ふと気がつく。この瞬間にそれなのか?と思った。散らされる覚悟は出来ていた。だというのに、ミドリは満面の笑顔でただそれだけを聞くのだった。
「そう……いえば」
ミコがそれに気がつくと、ミドリは彼女を組み敷くのをやめて、一度正しく正座をする。
「そっか……よかったよかった!んじゃ、続きは夜ね!」
そう言って、ミドリは残りの仕事を片付けるべく、ミコの部屋を後にするのだった。
「みどりちゃんに、唇を捧げてしまいました……」
ミコは唇に残るミドリの感触を、少しの間味わっていた。
そして、続きは後ほどだという。
「先生……この道は、破廉恥が過ぎます……」
そう言いつつ、ミコは余韻を味わっているのだった。
気がつけば、靴連れのあとは多少残っているものの、めくれてしまった皮も既にかさぶたのようになってしまっている。先ほどまで痛みによる違和感があったはずだというのに……。
「これで、お風呂にも安心して入れますね」
さて、みどりは先ほどの続きといっていた。
それに対してミコは、興味津々といった感じで、その非常識さに驚きこそしたものの、余り否定的な価値観を持っているわけではなかった。
ミコが若干妄想の世界に浸っているところに、焔が顔をだす。
「よぉ」
「日向様……」
ミコは至って普通の振る舞いをする。確かに鋭児とどれだけの事をしていたのか?というのは気になる所であるが、二人が恋慕の情で結ばれているのは、理解している所で、とどのつまりそれだけ仲睦まじいのだと思うと、さほど不思議さはなかった。
冷静というわけでは無かったものの、不快感は感じない。
「メシの件聞いたか?」
「はい。みどりちゃんとカイくんと、お食事をご一緒することになりました」
「オレ達も誘われた」
「まぁ!」
出会ったばかりであるが、ミコはそれに感激している。
そんなミコの姿を見て、焔はクスリと笑う。
出会ったばかりの人間と食事が出来る事に、それほど感動出来るとい籠の鳥ぶりに、思わず新鮮さを感じずにはいられなかった。
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