第十二話 其ハ何ヲ求メ彷徨ウカ④
掌に何かしらひきつる感覚を覚えたから目を向けると、やはり皮膚が擦れて赤くなっていた。
「こーれ地味に痛いんだよなぁ。」
現実味のないことばかり起きていたが、この痛みが、今目の前で起きている事、俺自身の身に起きたこれまでのことを現実だと教えてくれていた。
しかし、目まぐるしく環境が変わっているせいか、俺に土地勘が全くないせいか、自分がどこにいるかわからない。見渡しても先ほど通ってきた扉ぐらいしかなく、その扉も一方通行だった様で、
「まじか、反対側にドアノブのない扉って欠陥品じゃんかよ。」
絶賛詰んでいる状態が続いている。
モンスターが、まして人間がいるような場所ではないのは明らか。
次の行動に移るにせよ、周囲の状況を確認する必要がある、のだが.....
「相も変わらず真っ白です、と。」
何ら役に立つものがない。
ここは部屋なのだろうか?はたまた道なのだろうか?まわりが真っ白な空間であることはわかるのに、自分の影が見えないほどに明るい........いや待て、光がないのか?
周りが壁に囲まれているかどうかが分からないと悩むうちに気づいた。この部屋に来てから黒色を見ていない。いや、自分の服の中とかにはみえるのだが、俺が立っている地面に自分の影が存在しないのだ。
おかしい、光源があるならばどこかしらに影ができるはず、なければこれほどまではっきりと自分自身、ましてや部屋の白さなどわかるはずもない。この部屋自体がそういう仕様なのか、
「影すらデカないほどの巨大、かつ強い光源がほかに存在しているか、だな。」
............我ながらなーに変なこと言ってるんだろうか。もう彷徨いすぎて頭おかしくなったんじゃないの?そんなんあるわけ、あるわけ......ないよね?
「.................」
そういえばここおかしな世界やったし、てきとうにほっつき歩いていたら見つかりそう。まーなくても別に困ることじゃないし?なんならこんなことより脱出方法を見つけることが大切なんだ―
「あったわ」
―えー、早すぎん?疑問に思ってから解決するスピードが尋常じゃないんだが。ってかまた扉かよ!ここのやつらどんだけ用心深いんだよ。
見上げるほどの高さに半球の光源らしきものがくっついた扉を見つけた。周りのものがはっきり見えて、なおかつ影すら発生させないほどの光の強さなのに、それを直視しても眩しくない。まるでゲームの画面の光でもみているような....って、んなことはどうでもよくて!その半球体よりも圧倒的存在感を放っている扉だよ突っ込みたいの!扉デカすぎんだろ....巨人か?巨人がここにすんどるんか?
それは石造りのように見えるが、そこらへんにころがってる石を削って作りましたーでは説明できない、なんというか、威圧感?のようなものを受けた。
「作為的な何かを感じる。これ先に進まないと絶対出れないやつだし、いろんな場所に移されてここに来るってことは、
正直
いやー、夢落ちならクソくらえだなこれ。俺こんな想像力高くはねぇよ。どうして夢で落下したり虫に血ぃ吸われたり水が美味いと思うまで森を徘徊しなきゃならんのだ。そんな精神病んでねぇよ俺は!
一人でいらだっていた俺は気を静め、冷静さを取り戻した後、その扉を開こうとしてまた気づいた。
これどうやって開けるの?........と。
はぁいク〇ー、ごみう〇ちー!やっぱパソコンやローは見つけ出して殺さねぇと気が済まねぇ!ナゼ、ワタシハマイカイ、コウイキヅマルンデスカ!カギはない、開けてくれるような
「あー、ね?なるほど、これからそういう力を手に入れるんですね。」
そうだ、きっとそうに違いないじゃないと詰むんだから!さぁそうと決まれば早速瞑想しよう。
ズボンが砂で汚れることなど虫いてその場で座禅を組む。そしてそのまま目をつぶって精神を研ぎ澄ませる。周りの澄んだ空気が灰の中に入ってきて、こころが浄化されるようだ。
ぐへへへへへ、最強パワーくれ!
そんな空気の浄化でも、瞑想をしても、俺の心の中の邪な念は消せないようだが。
あれから体感三十分ほど過ぎ、俺は早くも座禅をやめ、瞑想を終えた。
「うん、現実逃避やめよ、探索に行こ。」
まぁ、そんなパワーが都合よく手に入るわけがないもんな。俺はおとなしくこの広く白い空間を調べることにした。まぁ見渡す限り白い部屋にまともな手がかりなどないのだが。
かがんで低いところを調べたり、背伸びして上を見てみたり、くまなく探してみたが、予想通り手がかりのようなものは一つもなかった。
残るは、
「俺を悩ませる原因そのもの、と。」
このでけぇ扉を何とかする。これ以外本当に道はなさそうだ。
先ほどのようにしたから上へと順に扉の表面、枠、半球体をくまなく調べる。
流石に手がかりあってくれよ............お?
「これ、ひびか?」
ふと扉の一部分に目をやった時、そこに不自然な黒い線が見えた。俺の影すら映らない空間に黒がある、これ以上に調べる理由はないだろう。近寄って見てみると、それは地面との境目から上に無数に枝分かれした線であった。
誰がどう見ても亀裂だろう。つまりこの先に別空間、あるいは俺が来る前に来た
「にしても、これを壊すのかぁ.......骨粉砕骨折(物理)しそうだな。」
そもそも人間の拳は岩なんかを壊すためにあるもんじゃねぇんだよ。道具かなんかないと俺の拳が終わってしまう。
だが、ようやく掴んだ手がかりだ、壊せませんで諦めてたまるかよ。確かに、俺には不可能かもしれない。そう、拳であれば、な?
「ハンド部先輩方直々に鍛えられたこのショルダーで、ぶち抜いてやらぁ!」
スッ
そん時だ。
あっ、最近
不安になる体力と共に俺のショルダータックルの助走はスタートする。まぁまぁの距離を開けたから速度はいつもよりはあるだろう。
身長は何故か高校から伸びなかったが代わりに肩幅だけは大人並らしいこの体を活かして脆い部分の破壊を試みる。
たぶん痛いだろうから、せめて一思いに─
ドォォォォン
─あぶねぇ!
相当、ヒビの入っていた部分は脆かったらしい。人間の力だけで簡単にボロボロと崩れてしまった。
ということは、だ。
相当な速度を出していた俺、だけど案外脆かった、そんで今も勢いは止まらないわけで。
「こけると思ったか!俺は学んでるんだよ!」
ついさっき
さて、ここまで俺をコケにしたんだ、クリア報酬に期待しねぇと............
「─は?」
え、どこ?
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