自己嫌悪

 私は昨夜、家を飛び出した。


 昨日、定期考査も近づいてきていた為、私はテスト勉強をしていた。

「ごめん、織音~英和辞典ってどこだっけ?」

「ああ、ごめん。それ私の部屋だ~今、ちょっと手が離せないから勝手に入っちゃって良いよ~」

 なんて、会話をして私は光希との騒動以来、初めて織音の部屋に足を踏み入れた。

 部屋は女の子らしいインテリアがありながらも、きちんと整理整頓されており私とは大違いだった。

 それに心なしか、織音の匂いに混ざって男性っぽい匂いもする気がした。

「織音も隅におけないな~」

 英和辞典を探しているとテーブルの下に何かが落ちていた。

 白いハンカチだった。

 織音や家族のみんなが使っていた記憶がない。

 ハンカチを裏返して見るとそれには『西上光希』と書かれていた。

 つまり光希がここに来たと言うことだ。

 そこからはあまり記憶にない。

 私は頭が真っ白になり、気がついたら家を飛び出していた。


 ...わかっている。

 全て私が悪いことくらいわかっているのだ。

 私はフラれて当然の事をした。

 あれは完全に犯罪だ。

 それ以前に人として終わっている。

 自分の浅ましい心や確認作業の為に彼を傷つけたのだ。

 私は私が憎い。

 自業自得なのに、妹が憎い自分が。

 光希を憎んでいる自分が本当に気持ち悪い。

 なんて、自己嫌悪に陥っていると強い風が吹いた。

 身が縮こまる程に寒い。

 そんな中、私は駅前の広場のベンチで一人、鉛色の空を見上げていた。

 大きなため息を一息した後、私はスマホを取り出した。

「明日の朝には帰ります。心配かけてごめんなさい」

 これでとりあえず向こうの肩の荷も降りただろう。

 妹にまで迷惑をかける自分に吐き気がする。

 なんて、スマホに気を取られていたら三人組の男がこちらへ近づいてきた。

 男たちは大学生くらいだろうか?

 ニタニタとした不気味な笑みを浮かべ、こちらへと近づいてきた。

「こんな所でなにやってるの~?」

 なんて、男のうちの一人が話し掛けてくる。

「特に何も、あなた達には関係ないですよね?」

「冷たいな~ちょっとだけで良いから、遊ぼうよ?」

「無理です」

 ...遊ぶって、一体何をするんだろうか?

「良いじゃん~5分で良いから差~」

「何度も言いますが無理です。それでは」

 私がそう言い、この場から立ち去ろうとしたしたその刹那、男は私の手首を掴んできた。

「やめて...!」

 私は恐怖心からか喉が締まり声が出しにくかったが、それでも何とか今出せる最大の叫び声をあげた。

「うるせーよ。ちょっとついてきてくれるだけでいいんだからさ」

 抵抗しても力に差がありすぎてびくともしない。

 ...もう、無理だ。

 きっと、罰が下ったんだ。

 私が悪い。

 全てを諦め、抵抗する力を奪われたのとほぼ同時に聞き慣れているけれど、どこか懐かしい声が聞こえてきた...

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