追憶編4
中三の初春、人生で初めての彼女が出来た。
きっかけは同じ委員会に所属していた事で、多くの時間を共にしたことでしだいにお互い引かれていき付き合い始めた。
「...これからよろしくね...!」
なんて、歓喜で瞳を潤ませながら微笑んできた元カノ《彩夏》の顔は今も尚、脳裏に焼き付いている。
付き合う前はお互いに初めてと言うこともあり遠慮がちだったが、付き合うとたかが外れたように俺達は遊び歩いた。
定番の映画館にカラオケ、遊園地と思い付く限りのデートスポットに赴いた。
寝る時も通話しぱっなしだったし、学校でも常に一緒。
...お互いに依存し合っていたのだ。
俺も自分自身を見てくれる人なんて人なんて今まで居なかったし、向こうも同じような物なのだろう。
俺達はどんどん深い深い沼へと沈んでいった。
ある日、俺がよるとそういう関係にならないか心配と彩夏が訴えかけてきた。
...そこからだろうか?
ただの依存関係じゃなくてそれはより歪になっていった。
一緒に居られない時は常にLINEで状況説明。
LINEは10分以内に返信。
なんてのは序の口で、他の女とは必要最低限しか喋らない。
家族にも近づかない。
連絡先も異性の物は全て消す。
もし、破ったら愛を確かめる為、そして愛の証をつける為、殴る。
なんて感じに変わっていった。
勿論、これが異常なのなんて重々承知だ。
でも、俺は少し嬉しかったのだ。
俺の体に傷をつけていると彩夏は満たされたような顔をしていて、痛みもなくなる程に幸せを感じられた。
今まで傷ついてきたのだ。
痛みなんて苦ではないし、むしろ俺自身も満たされていた。
だが、いつからだろうか?
付き合いが長くなっていくにつれ、彩夏の心配事はより大きく、歪になっていった。
常につらそうな顔をしているし、口数も減っていった。
俺はそれが堪らなく苦痛だった。
それと同時にどうすれば良いか分からなくなった。
自分が出せる精一杯の力は出していたつもりだ。
なぜ、彩夏が苦しんでいるのかが苦しむ事を放棄した俺には到底理解出来なかった。
そんな日々は続き、彩夏はとうとう俺と一緒にいる時は常に泣くようになった。
...きっと、俺が悪いのだろう。
いつもそうだ。
でも、俺にはそれがわからない。
だか1つだけ確かな事があった。
彩夏には苦しんでほしくないと言うことだ。
「何で...君は...!そうやって、笑っていられるの!?...今だって馬乗りになって殴ってるんだよ...?」
彩夏は涙で目を腫らしながら一発また一発と鋭利な拳を腹に当ててくる。
腕は震えているし、左手は殴る右手を止めようと押さえ付けようとしている。
「どうして...!殴るのよ...!もう...殴りたくないのに!!!」
...見てられない。
これ以上、俺のせいで彼女を苦しませたくないそれだけだった。
俺は重い口を開いた。
「別れよう」
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