恋?恋愛?ナニソレオイシイノ?
はなびえ
プロローグ
プロローグ
ある少年がいた。
その少年は幼い頃に母を亡くしたものの実の父と義理の母、妹からたくさんの愛を受けて育った。
とは言え実の家族でも問題が起きるのだから義理の家族で問題が起こらない訳がない。
少年が第二次成長期を迎えた12歳の頃からだろうか。
少年の顔は最も慕っていた亡き母の顔立ちにだんだんと近づいていったのが発端だった。
母に似てきた少年のことを、父と義母が少しずつ少年を避けるようになってきたのだ。
そんなある日。
小学校の卒業式前日。
亡き母の遺影を眺めながら父に抱き着きながら、泣いている義母を見てしまったのだ。
きっと、義母なりに思う所があったのだろう。
大人がなくとはただ事ではないと思い、少年が義母に駆け寄ると思い切り振り払われた。
義母の甲高い声が両親の寝室に響く。
「触らないで!」
少しすると、つーんとした痛みが頬に走った。
ぶたれた事のない少年は事を理解していないのか、はたまたそれを拒んでいるのかただただ茫然としている。
その後義母には「思わず反射的に!ごめんなさい...!」と泣かれながら謝られたが少年の頬の痛みは腫れが引いても収まる事はなかった。
そして卒業式当日。
式を終えた少年は義妹と共に幼馴染の家に遊びに出掛けた。
幼馴染とは母が死ぬ前つまり幼稚園の頃から仲良している少女で、少年は密かに想いを寄せていたりする。
ちなみに義妹も同い年で三人とも趣味が似通っていた為か、思いの外話が弾んでしまい気づけば外は真っ暗になっていた。
「急いで帰らないと怒られちゃうな..」
「だね、急ご!おにーちゃん!」
少年と義妹は暗い夜道を少し怯えながら、走り抜けていく。
家まであと500m程の所となると、辺りは住宅街になってきて繁華街に比べ薄暗くなっていた。
流石にこの暗闇の中、走るのは憚られるので少年と義妹は歩いて自宅へと向かうことにしたようだ。
するといきなり真っ黒な軽自動車が近くに止まった。
近くに家や店があるわけではなく、全く意図が読めない行動に思わず固唾を呑む。
.......恐怖から放心状態でいると、車の中からマスク姿で鼻息をあらげた中年男性出てきた。
鼻をふがふがと荒げ、早歩きでこちらへと近づいてくる。
男は少年には目もくれず、義妹を強く睨んでいた。
「おい...逃げろ!」
「えっ?なにっ?おにい...!」
男が義妹を強引に抱き抱え、軽自動車に向かって走り去っていった。
(やばいやばいやばい)
少年は歯を食い縛り地団駄踏み、その反動で男に向かって突進した。
男の体勢が崩れ義妹が脇に吹っ飛ばされる。
一瞬見てみたが怪我してないようで良かった。
「ほら、早く逃げろ!」
「えっ?えっ?お兄ちゃん...どうしよう...」
「大丈夫だから...家でも安全な場所に行って警察を呼べ!」
「い、いきなり言われても!」
義妹があたふたしているうちに男がまた義妹へ向かって走り去っていった。
.......手には短いがナイフを握っている。
意識と共に体の感覚が鈍くなっていく。。。
........気づくと俺少年は義妹の前に立っていて男の静止に成功していた。
火事場の馬鹿力が出る時は脳内麻薬が大量に分泌されるから意識がハッキリしなくなると言われているが本当だとは思わなかった。
「お兄ちゃん...手が!?ねえ!ねえ!大丈夫れ!?」
手にはナイフが刺さっていた。
感覚が完全になくなっているのか痛みを感じない。
「クソガキが!」
男が少年の手からナイフを抜き義妹の方を向いた。
この状況はまずい。
義妹を何とかして守らなければいけないが手は負傷中。
そもそも体格差があるため普段でも闇雲に戦っては勝てないだろう。
少年はしゃがみ負傷していない方の手で男の右目に向かって力の限りを尽くし、石を投げつけた。
鈍い音と共に男が怯む。
それでも尚男は動こうとしたので少年は喉仏を蹴り挙げた。
色鮮やかな赤が視界いっぱいに広がる。
それからは覚えていない。
男を止めようとする少年とそれでも尚動こうとする男の勝負。
気がついたら辺りは2人の血で溢れていた。
意識がどんどん遠くなってくる。
少年は男にとどめをさし倒れたのだった。
目が覚めるとそこには真っ白な天井と淡い光を出す電球があった。
鼻腔を突くようなツンとした香りもしてくる。
.......察するにここは病院なのだろう。
今まで病気をしてこなかった少年が、そう結論を下すまで少しの時間を有した。
.......それに、意識が錯乱していたから気づかなかったが、義妹を含む家族が周りにいた。
「目が覚めたのね。よかったわ」
そう言う義母の瞳はあの夜以来、少年に対してだけ輝きがない。
まるで、プライベートで関わりがない仕事相手と接するかのような作業染みたそんな目だ。
「よる...大丈夫だったか?」
少年が義妹の手に触れると、物凄い力で振りほどかれた。
それが、自分への拒絶なのだと、流石の少年もすぐに理解できるほどには強い力だった.....
「触るな!犯罪者!」
義妹が少年を見る瞳は義母の物と全く同じ。
少年はそこで初めて自分は義妹から嫌われているのだと理解した。
いや、してしまったのだ。
余談だが犯人も一命を取り留めたらしい。
少年もあれだけの死闘を繰り広げたにしては、骨折と擦り傷のみだったので、それは幸運だっただろう。
それから少年の体は回復し少し遅れて中学校生活が始まった、が現実は甘くなかった。
あの夜目撃者がいたのかは定かではないが、少年の噂は既に広まっていていつも影で『殺人者』と揶揄されたのだ。
好意を寄せていた幼馴染からも距離をおかれ少年は全てを失った。
それは物質的にも精神的にもである。
生きる活力は徐々になくなっていき、何にも意義を見出せなくなったのだ。
だが、不思議と怒りはなかった。
諦めである。
最初から何もなかったのだ。
自分が誰かに愛されるわけがない。
構われるわけがない。
悪いのは自分。
こうして少年こと
......そんな俺も今日からは高校生である。
少しでも、まともになれることを願って...俺は家のドアを開いた。
~作者から
新作→『失恋したらバイト先の美人な先輩に慰められて修羅場になるラブコメ』
【恋人にフラれ女性恐怖症になった主人公。
そんな時、同じ委員会の美人な先輩に声を掛けられて!?
先輩と一緒に失恋から立ち直るシリアスあり修羅場あり、でも甘いラブコメ!】
長期連載予定の新作出ましたので是非とも読んでくださるとうれしいです!
https://kakuyomu.jp/my/works/16817330647965671917/episodes/16817330647965862396
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