『創造と製造』
それをあらゆる血の武具が裂き、潰して回る。
「そこの
人形の山から真っ赤な服に白髭の巨漢が飛び出し、両手に備わった鋭爪を突き出してロビンソンの頭上から襲いかかる。
そこに侵入防止用の柵みたいな血の槍の連なりが伸びて、勢いよく突き刺した。槍玉にあげられた
その
そして、小爆発の連続。
破裂するプレゼントボックスから飛来した破片群を、床から迫り上がった血の壁がロビンソンを守る。
「……その手はもう、見飽きた」
「HA!! それでどうするつもりだあ!? 血流操作で
「そうか……、君には聞こえていないんだな。
「
トンネルの奥からやってきては血の武具によって叩き伏せられバラバラに散乱する人形の
「君の権能、『
散乱しているあらゆる
「君は、君の造った
『オルナンの埋葬』。
長く、黒い、十字の杖。
その一振りに呼応し、血液を纏った玩具の
出来上がったのは、くるみ割り人形の頭に、マネキンの胴体。不格好な美女の脚。その手には、血液の斧。
「……まさか、ロビンソン! ぼくの、僕の作品を……!」
「血液で繋ぎ、血液で紡ぎ、血液で包み、血液で塞いだ。 君が乱暴に使い捨てた
しかも、それは一体だけに留まらず。
余った
そうして、アと言う間に十体程の血濡れ人形が復讐に立ち上がった。
その情景は、まるで死者の集団復活。生前の残留思念を晴らすべく、墓下より次々と湧き出る死霊たちの軍団の如く。
「――――超現実描写、『絵画のアトリエ』。
君の
私にとって、あるべき姿に!」
主人を変えた血濡れ人形たちが、
血の飛沫と、跳ね飛ぶ
人形同士が殴り合い、斬り合い、刻み合う。
「またしても、僕の作品を……!」
「憤りを感じているか? 私としては感謝して貰いたいくらいだ。 君の下劣な
「HA...!! しかし粗悪品だ! 有り合わせのゴミの塊では強靭に欠けるネ! キッズが夏の工作で組み立てた巨大ロボットみたいなもんだ!!」
「本当にそう思うのかよ?」
始めは
「ば、ばかなっ、こんな事が……!」
「『
「……折れたよ。 あぁあぁそうだよォ、折れたよ僕は! 挫折した! でもさあ僕みたいに騙される奴もいるって! この業界には夢があるんじゃないかってさ!!」
開き直った
「芸術の道に進んだ君なら分かるだろ!? 僕と同じ、物作りを生業にすると決めた君なら! 君だって最初は絵を描くことで誰かを感動させたかったんだろぉ!? でも大人の世界はずっと汚かった、僕らは裏切られたんだ! 僕らの創作は、感動は、心は! 汚い大人どものビジネスに利用されちゃったんだよ!! この世間に! 社会にぃ!!」
「……先程まで蔑んでいた私に共感を求めるとは。 本当に
人形たちが衝突し合い、各所が小爆発し、四散し、そして血の武具を握って再生する。
血風は、ロビンソンに吹いている。
「確かに、この社会は酷いものだ。 希望ばかり持たせて、その実は醜悪だ。 だけどね、私をお前みたいに間違った思想犯と同じにはしないでくれよ。 確かに道の始まりは同じかもしれない。 しかしね、他人を感動させたいなんてのは綺麗なお題目で、実際の私は自分のために絵を描いていたとすぐに分かったよ。 父に褒められたくって描いたんだ。
遂に、ダムが崩壊する。
堰を切るように血濡れの人形が
人形が
「争いすらも
「僕と……、僕とお前は、同じ……!
「まだそんな戯言を。 もう、いい。 知能指数の低い奴と話すとイライラする。
人形の山の頂点から飛び降りたロビンソンの
青色が、
「……ちっ、くだらない奴に時間を浪費した」
割れた
「HAHA......HA...HA...HAHAh......、
HaahAgrrHahAA......、HaA......、
良ぃ……、子のみんなア……!
おもちゃを飲み込んじゃ、いけないよ……、
お友達、と……、順番に遊ぼ……!
遊び終わったら……、箱に……、戻し……」
ばきり。
ロビンソンの靴底が、仮面を粉々に踏み潰した。
『オルナンの埋葬』を血液化し、その血で傷口を縫って穴を埋める。人形の破片だらけになったトンネルを、暗闇に向かって歩き出す。
「……地団駄を踏むなんてのは誰もが過ぎる道だ。 大人になるにつれて過ぎ去るべき現実の関所、登竜門なんだよ。 そこを乗り越えられないからと泣き果て、無差別な八つ当たりに死力を尽くすとは、全くもって美しくない。 没落者め……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます