Universe 

@x105strike

第0話 ープロローグー

 「…ハア!!」

 気合一閃、俺は剣を振りぬいた。


 二体の四足歩行自立型近接戦闘機QWFFCDが、紫電とともに両断される。

 振り向きざまに、左手でホルスターから拳銃を抜き、親指でセレクターを弾いて半自動セミオートに合わせ、左足を軽く蹴って体を半回転させながら背後にいた隠密型ドローンCTDに向かって牽制射撃。

 ボディに弾痕を刻みながら後ろにノックバックさせる。


 素早く剣を左腰の鞘に戻し、グロックをホルスターに収めると、背中にマウントしていたエネルギーライフルを取り出して両手で保持ホールド

 上空にいた自爆用突撃無人飛行機SDCUAVを打ち抜く。

 そのまま先程後退させた隠密型ドローンCTDも打ち抜き、エネルギーライフルを戻しながら右横の路地に向かって跳んだ。


 上空と左横でささやかな爆発が起こる。


 直後、頭の中で機械音声が響く。


 「10時の方向、100m先に4次元空間転送ゲートFDTGの発生予兆を感知、予測数1。視界内マップウィンドウに表示します。」


 俺の視界左下に表示してあったマップウィンドウ上に、赤い点で発生予測地点が示される。


 「了解。ナイス、バリオン」


俺は完全自立型人工知能バリオンに、そう言いながら、ゲート発生予測地点に向かった。


 到着した直後、20m前方に黒い球体のような物体が現れ、その中から数体の四足歩行自立型近接戦闘機QWFFCD、それと数人の戦闘員が現れた。

 戦闘員は全員サブマシンガンやアサルトライフルを主とした中距離射撃戦シフトの隊だった。

 彼らは俺を見るなり、こちらに向かって各々の武器を構えた。


 俺も剣の柄に手をかけながら、

 「コードネーム・ストライクより、完全自動戦略処理システムCISTS敵性機体UAV及び敵性戦闘員エネミーを確認。戦闘を開始する。」

 「本部了解。」

 俺は返答レスポンスを受け取るや否や、地面を蹴り飛ばした。

 そのまま、左腰の剣を抜く。

 ガラスに青空を溶け込ませたような刀身が、夕日を浴びて輝いた。

 俺は剣を構えると、

 「制限装置解除リミッター・リリース、『気体制御エアリアル』」

 と唱えた。


 直後、草原を思わせる緑色の光が刀身に宿った。

 それは次の瞬間に切っ先に集まる。

 俺はそのまま剣を横に薙ぎ払った。

 1m強であるこの剣の刀身では、絶対に相手には届かない斬撃。

 しかし、『気体制御』制限装置エアリアル・リミッターによって、切っ先に集中、圧縮された空気が剣の斬撃とともに射出され、剣を振り切った延長線上で、隊員たちが腹から血を噴き出して倒れていた。

 

 俺はそれには見向きもしないまま、五体の四足歩行自立型近接戦闘機QWFFCDのほうに向きなおる。

 何体かは今の斬撃で大破していたが、まだ運転可能アクティブなものもあるようだった。

  俺は背中のエネルギーライフルを抜き、セレクターを電磁パルスEMPモードに合わせ、トリガーを引く。

 不可視の波動が宙を貫いた。

 直後、四足歩行自立型近接戦闘機QWFFCDはメインコンピューターとバッテリーパックから五体同時に紫電をまき散らして爆散した。


 「測定圏内に、敵性戦闘員エネミー、及び敵性機体UAVなし。警戒レベルを3から1に引き下げます。ダウングレード


 バリオンの観測結果リポートを聞き、張り詰めていた息を吐きだす。

 制服についた機械オイルを手で拭い払い、無数の鉄とレアメタルの残骸と化した無人攻撃機ドローンを見つめながら、俺は本部CISTSに任務完了の旨を伝える。


 「ストライクより、完全自動戦略処理システムCISTS、予定行動時間を終了。作戦行動ストラテジーを完了する。あとは回収サルベージ班に任せる。」


 「本部了解。」


 俺は武装を解除し、元の家路へと歩いて行った…

 

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ーーーーーーーーーーーーーーーー西暦2050年ーーーーーーーーーーーーーーーー

 日本が、北大西洋連邦共和国FRONAに侵攻された。

 自衛隊が解体され、新日本軍が設置されたばかりの日本は、圧倒的な戦力差や戦術、技術差によって抵抗も虚しく、4か月で国土の2/3が荒廃した。

 そこで新日本軍は極秘の軍事計画をスタートする。


                「SW計画」


 それは、一つの恒星のエネルギーを圧縮し、武器として作り変えるという計画。

 国際連合の目もあった中、軍事的な理由や景観の悪化などの世界的な批判を恐れた日本は、この技術を長年封じてきたが、侵攻に対しての唯一の切り札として実行することにしたのだった。

 この計画により作られた武器が、「スターソード」

 エネルギーを圧縮し作り変えようとすると、当時の技術では剣のような比較的簡単な形でしか形成できなかったのだ。

 恒星のエネルギーは莫大なので、本来、圧縮された状態では非常に不安定であり、剣としての形を保っていられない。

 そのため、制限装置リミッターと呼ばれる、エネルギーの圧縮状態を維持できるチップをある程度内蔵することで、剣として生成するに至った。

 また、その制限装置リミッターを解除すると、その恒星のエネルギーを使って制限装置リミッターがそれ固有の事象を発動させることができる。

 これによって、莫大なエネルギーを武器として転用できるようになったのだ。

 


 その威力は絶大だった。



 敵の一個師団を数秒で壊滅…いや、全滅させてしまうくらいには。




 ある剣は圧倒的なそのエネルギーで敵を殲滅させ、


 またある剣は、荒廃した土地を瞬く間に文字通り修復していった。


 しかし、それには代償も伴ったーーースターソードの使用者が、ことごとく塵と化してしまったのだ。

 スターソードがあまりに莫大なエネルギーを保持していたため、能力を発動するためにリミッターを解除すると、そのエネルギーの奔流に身体が耐えられなかったのだ。

 そこで新日本軍は、当時実験体として処理に悩ませれていた、18歳以下の子供たちを使うことにした。

 敵を追放し国家を守る…軍の参謀らはそれを免罪符に子供たちにスターソードを持たせ、利用した。

 当然、実験体の子供たちも塵と化した者が大勢出てしまった。

 


 そんな中、何度スターソードの能力を使っても、身体に何一つ変化のなかった子供もいた。

 

 軍の参謀はこれに目を付けると、政策を一転。

 彼らを最前線に駆り立てるよう命じる。

 

 そこからの戦いは、もはや一方的と呼べるものだった。


 北大西洋連邦共和国FRONAの侵攻軍をわずか3日で退けた彼らは、のちに日本軍が力を持ちすぎないよう、「Universe」という民間の自警団を設立し、独立した。


 

 ーーそれから3年ーー

 

 

 初期は3名だった隊員も15名になり、敵国からの侵攻に今現在も対処し続けている…

 

 


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