22話 最初の仕事
「うーん、よく寝た」
次の日の朝。カーテン越しに刺す朝の光をうけて俺は目を覚ました。
自室のベッドから起き上がり小さくのびをする。
はじめて自分のアトリエで朝を迎えたが、最高の寝心地だった。
部屋を出て一階に降りると、既にミステルが起きていて、ダイニングテーブルに座ってコーヒーを飲んでいた。
「おはようミステル、早いね」
「おはようございます。ニコも飲みますか?」
「ありがとう、お願い」
俺は洗面所で身だしなみを整えた後、ミステルが淹れてくれたコーヒーを飲む。
「はぁ、美味しい」
野営のときも思ったけど、彼女の淹れるコーヒーはかなり美味しい。
俺がそのことを褒めるとミステルは嬉しそうな顔をした。聞くと豆の挽き方や淹れ方にも、かなりのこだわりがあるらしい。
「そうだ、ミステルはもう朝ごはん食べた?」
「いえ、これから準備しようと思っていたところです」
「ちょうどよかった。俺が作るよ」
「いいんですか?」
「美味しいコーヒーのお礼。ちょっとまってて」
ミステルに礼を言われながら、俺はキッチンに向かい朝食の準備をする。といっても昨日のうちに買ってきた食材があるのでそれほど手間はかからない。ベーコンエッグとサラダ、パンを用意して完成だ。
俺は出来上がった料理をトレイに乗せて、ダイニングテーブルまで運ぶ。
「お待たせ」
「わぁ……凄いですね」
目の前に置かれた皿を見て、ミステルが目を輝かせる。
「簡単なものだけどね。食べようか」
「はい。いただきます」
ミステルは手を合わせた後、フォークを手に取って食べ始めた。
「美味しいです!」
ミステルは満足そうに笑う。どうやら気に入ってくれたようだ。
(自分が作った食事を誰かに美味しく食べてもらうっていうのは結構嬉しいものなんだな)
その後俺たちは他愛もない会話をしながら食事を楽しんだ。
***
そして食後――
「ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」
「喜んでくれて嬉しいよ」
食器類を流し台に置きながら、ミステルの言葉に返事する。
「あ、洗い物は私がやりますよ? そのまま置いておいてください」
「大丈夫、錬金術であっという間だから」
「そういえばそうでした」
「ちょっとだけ待っててね」
「はい、ありがとうございます。ふふ、なんだかニコに頼りきりでちょっぴり申し訳なくなります」
「そんなの気にしないでよ。全部俺がやりたくてやってるんだからさ」
そして洗い物も終えた後、改めて俺もミステルもダイニングテーブルに座る。
「さて、今日から本格的に、この街の復興の為の仕事が始まりますね」
「うん。手始めに何をしようかずっと考えていたんだけど、まずは
「
「この前、ルークの案内を受けて市場や病院を見て回ったときに思ったんだけど、この街には、
「確かに、すぐに外壁の修理ができない状況では、魔族との戦いを見据えて、必要な物資を確保しておくことは大切ですね」
「うん、それに
「いいと思います。それではまずは素材集めですね」
「水はいくらでも使えるから、集めるべき素材は薬草とハチミツだ」
「ハチミツですか?」
「うん、ちょっと試したいことがあってね」
俺には一つの案があった。
そのためには
「そうですね、この辺りでは養蜂は盛んではないようなのでお店で買うか……」
「うーん、買うとなると結構いい値段するんだよなぁ」
ハチミツは
「それならば森で採取するのがいいと思います。この辺りの気候で今の季節なら、蜂の巣が見つけられると思います」
「その手しかないか……」
「当然ですが多少の危険を伴います。
「それと虫除けの手段も必要だな。オーケイ、出発前に錬成しておくよ」
「お願いします」
そんなわけで当面の活動方針が決まった。
俺たちは、今日一日を探索の準備にあてることにして、明日の早朝、素材採取のため街の外に向かうことにした。
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