DEVIL BREAK
Androidbone
プロローグ 「歴史の授業」
歴史の授業は、嫌いじゃない。
王朝が興っては滅んだり......国家が覇権を取っては滅んだり......
そういった流れを見ていくのが、小説を読んでいるような気分になるからだ。
(これが案外面白い。まぁ事実は小説よりも奇なり、とも言うしね。)
普段から授業は寝ずにきちんと聞いている方だが、そんなわけもあって歴史の授業は特にしっかりと聞くようにしている。
......俺の名前は、
別に日常に退屈はしていない。ただ毎日適当に学校に行って適当に遊んでいるだけの無機質な生活を送っている自覚はあるが、残念ながら俺はそういった現状に満足してしまっている。よくないんだけどね。よくないんだろうけどね。でも俺はそんな生活が嫌になれるほど大層な人間ではない。本当に残念だけれども......
でも、何でもない日常も大切だと思うんだよな。
当たり前のように起きて、当たり前のように食べれて、当たり前のように帰る家がある......それ自体が、かなりの奇跡だと、もっとみんな分かった方がいいと思う......
......と、そんなことを思っていた時期もあったよな。
だって数年前まで......お、噂をすれば今から歴史の授業でその出来事についての説明がされるみたいだ。さて、真剣に聞いてあげよう......
「で、最後に、一番最近の、みんなも覚えてるんじゃないかな?」
(カッ、カッ......)
「『天魔戦争』。(A.D.2046~2047)」
教室全体の空気が凍る。今まで熟睡していたのに飛び起きた人もいる。当たり前だ。ここにいる、先生を含めた全員がこの戦争の「世代」だから......
(歴史、面白いんだから普段からこれくらいの態度で聞けばいいのに。)
「今から丁度10年前......我々人類の前に、唐突に『天使』という存在が現れたんだ。その時みんなは......小学校に入る少し前?覚えてる人って、どれくらいいる?」
俺を含め、十数人......クラスの3分の1くらいの手が上がる。
もっと上がるかと思ったが......まぁ、その頃の記憶なんて、そんなものだろう。
「なるほど......わかった、手下ろして。......その『天使』と名乗った人たちは......」
その『天使』と名乗った人たちが俺たち人類に何をしたのか......という話を先生は丁寧にしてくれたが、正直そういった詳しい部分には俺は興味がない。
小説を丁寧には読まずに、流して読むタイプの人がいるだろう。俺もそれだ。
......まぁ、今回のことに関しては実体験として知っているから、聞く必要があんまりなかった、という理由もある。
簡単に言えば、『天使』の看板に偽りはなかった。『天使』と名乗った人たちは、人類に何も危害を及ぼさないどころか、人類にとっていいことばかりをもたらしたのだ。
貧困、食糧問題、環境問題、そして紛争......
『天使』は、人類がずっと対処に困っていたこのような大きな問題を、次々に解決した。
......ヤバいだろう。
あまりにも見事に解決したものだから、具体的に何をやったのか、ということは全く覚えていない。あまりにも美しい物を見た時、感想は「美しい」しか残らないであろう......そういうことだ。
覚えていることといえば、我が家の生活に急に余裕が出てきたということくらい......
そんなことがあったから、人類の未来は確実に明るくなるものだ、と思われていた。
......でもある時。
......今から5年前のことだ。
突然、天使たちが暮らしていた建物が爆破された。
死亡者、『天使』4名、人類15名。
後に「悪魔事変」と名付けられたこの事件は、何よりも犯人に注目が集まった。
――――
犯行声明
我々は、『悪魔』である
『天使』によって平和ボケをした人類に
制裁を与える
以上
――――
事件の名前からもわかる通り、犯行声明を出したのは......『悪魔』と名乗る集団だったんだ。
......そこからはもう滅茶苦茶だった。
.......あの戦争の惨劇を文章で表せる訳がないし、文章で表したくもないから今まで以上に簡潔に言っておくと、
とても、現実世界の出来事とは思えなかった。
『悪魔』と名乗る人々は、あの事件からすぐに全国各地で暴動を起こしたのだが、
完全に火力がおかしかったのだ。
何をしようとも圧倒的なパワーで破壊されてしまい、手のつけようがなかった。
天使たちの徹底抗戦のお陰で人類は辛くも勝利を収めたが......
......その被害がどれほどだったのかは......言わなくても分かるだろう。
街はほとんどが壊滅し......
何にも形容し難いほどの犠牲を出した。
4年が経って、街の機能は完全に復活したものの(これも『天使』のおかげだ)、今も戦争の爪痕が残る場所は多い......
――――
例えば、ここみたいな荒野がそこかしこに......
「せ~、のっ!」
荒野に立つ一人の少女が、手から深紅の炎を放った。彼女を中心に扇形に炎が広がる。そしてその扇の延長にいた、謎の真っ白なモンスターたち約5体が塵と化した。
近くの小さな洞穴に隠れている俺のところにも、熱気と変な匂いが届く......!
「......大した事なかったね。出てきていいよ。光太郎。」
彼女に呼ばれて、洞穴から這い出る俺。
「......はぁ......」
「こういう『敵に襲われる』ってこと......よくあるからさ。慣れて。ごめんね。」
(何言ってんだよ......勝手に巻き込んどいて......)
......彼女の名前は、
深紅をベースにして、黄色いアクセントが入った高校の制服のような服を着ている......でも、こんな制服は俺の知る限り、どこにもない......
......あと蛇足だが、かなり可愛い。
『綺麗』というよりかは『可愛い』という感じ......
そんな彼女がどうして旅をしているのかというと、またしても本人曰く......
――――
『あたしはね、世界を救うために旅をしてるんだよ。(ドヤァ)』
――――
......とのことだ。
言葉からして何となく胡散臭い。手から炎とか出しちゃってるし......
......とにかく、俺はそんな彼女の旅に数日前から付き合わされているのだ。
それだけなら、それだけならいい......でも!
この深紅の綺麗な髪を持つ彼女に......俺はその数日前まで、出会ったことすらなかった!
ごく普通の高校生だったはずの俺が......どうしてこんなことに......
どうしてこんなことに、巻き込まれざるを得なくなってしまったんだ......
DEVIL BREAK
蓬莱 瞳
指宿 光太郎
指宿 朋花
ミク・カゴセ
冥戸 薫
上重 藍瑠
指宿 隆浩
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