LINK13 達磨寺
俺たちは『
真心は俺の左の
俺が見た映像はこれだ!
「赤いだるまだね」
真心がつぶやいた。
「真心、見えるのか?」
「ううん。月人さんが今、このだるまを見て心が動いたでしょ。少し映像が浮かんだの」
『あなたが私に映像を見せている』と前に真心が言っていたのはこういう事か。
なるほど、ベンチで読んでいた小説も俺が『面白く』、『切なく』思ったから小説の活字がイメージとして見えていたのか。
俺たちはそのまま本堂に入った。
台座には仏像ではなく大きな
4,5mくらいはあるだろうか。
その
そんな観光案内はどうでもよかった。
今はとにかく和尚から話を聞きたいのだ。
だが隣でつぶさに耳を傾ける真心の姿を見ると、話を
「———と言われています。ありがとうございました」
話が終わると間髪入れずに割って入った。
「あの、今日、このお寺の和尚はいないですか?」
「大概の事なら私がお応えしますが、何かご質問があればどうぞ」
「いや、観光の事じゃないんです」
「と言われますと....」
以前の俺ならば事情も説明しようともしなかったであろうが、
「実は今、人を探しているんです。科学博士の斎藤ってひとを。和尚に直接ききたいのですが....」
それにしても自分の質問下手には
俺の腕をグイっと引っ張るのは真心だった。
その顔には迷いと不安があった。
「真心、俺は『
彼女は首を縦に振る。
ちなみにその間、太郎君はカメラで
「『斎藤博士』ですね。私も存じ上げていますよ」
意外だった。
真心にはあのように言ったものの内心、『存じ上げません』という言葉が返ってくると思っていた。
「本当に?」
「はい」
「ただ、私は直接お会いしたことはございません。詳しい事情についても聞いておりません」
「どういうことでしょう?」
よく呑み込めない話だ。
僧侶は話を続けた。
「どういうことか説明いたします。実は和尚からは『斎藤博士』の名は聞かされておりました。私が訪れた方々へ、寺の案内係を始めて5年が経ちます。この係を申し渡された時、和尚に言われました。もしも盲目の女性を連れて誰かが訪ねてきたら『
「『
「ここから少し土肥温泉郷へ戻った海岸線にある民宿でございます」
僧侶はそれ以上の事は聞かされていないと言っていた。
だが『
俺たちは
博士は事前にこうなることを予測していたかのようだ。
その準備周到さに少し気味の悪さを覚えた。
「『
「うん。でも.... 『恋人岬』にも行ってみたいな」
どうせ見えないのに....などとは思わなかった。
きっと、その場所の音や空気を彼女は感じたかったのだろう。
それに俺が見た映像が伝わるかもしれない。
俺が素直な気持ちで景色を見ることができれば、きっと真心にも伝わるに違いない。
そんな決意にも似た強い気持ちを心に思う。
「ふふふ」
「何? どうしたの?」
「なんかね。今、やわらかい白.... ううん....もっと暖かい日差しのような色。今ね、少しそんな色が見えたの」
..俺の思いも色のイメージで伝わるのか。
でも、真っ黒って言われなくてよかった....
照れかくしに足早になった俺の
俺たちは青い海を背景に『恋人岬』まで歩いていく。
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