町興しの為に生贄にされたが、供物を要求する土地神に求愛されました。別に復讐とか考えてないけどヒロイン化した土地神が代わりに町に復讐するようです
三流木青二斎無一門
暴力と虐待
放課後のことだ。
僕はクラスメイトの人たちに呼ばれて校舎裏に連れていかれると思い切り殴られた。
「お前気持ち悪いんだよ!」
そう生徒が言うと僕の腹部に蹴りを入れる。
その蹴りによって僕の体はくの字に折れ曲がる。
腹部を抑えながら顔を上げる。
生徒は複数いた。
腹部を抑える僕の腕を掴んで羽交い絞めすると、何度も顔面を殴られた。
生徒たちは代わる代わる僕を殴ってくる。
そしてようやく終わった頃には僕はぐったりとして大の字になって地面に転がっていた。
「次に学校に来たら殺すからな」
生徒の中のリーダー格がそう言いながら帰っていく。
それに合わせるように他の生徒たちも帰っていった。
僕はその場にずっと座って寝ていた。
痛すぎて体が動かない。
けど帰らないと怒られるから、僕はゆっくりと立ち上がる。
体にできた傷をさすりながら家に戻る。
「ただいま」
と僕は言いながら扉を開ける。
「真純ィ!」
玄関先にまで聞こえてくる父さんの怒声が響いた。
「こんな時間になるまでいったい何をしていた!!」
父さんが僕の顔を見た。
僕の顔は生徒に殴られてひどく腫れ上がっている。
たぶん普通の父親なら僕の顔を見るなり『どうした』とか『大丈夫か』とか『何があった』とか聞いてくるんだろうだけど、僕の家のお父さんは違う。
「なんだその顔は、人様の子供には手を出していないだろうな?」
僕の心配よりも僕を殴った人の頭を心配する。
僕は首を縦に振ると、僕の襟首を掴んでリビングへと連れ出す。
今度は、お母さんがリビングで待機していて、僕を見るや否や、握り拳で僕の頭を殴った。
「何してた、お前ッ!!飯も作らずに、ッ!」
何度も何度も殴られるから、僕は腕を上げて頭部を守る事しか出来ない。
「誰がお前を拾った?!、身寄りの居ないお前を拾ったのは私たちだろ!恩を仇で返すな!!」
「…ごめんなさい」
僕は謝るけど、後頭部に強い衝撃が走る。
お父さんが後ろから思い切り頭を殴った。
僕は頭を抑えて膝を突く。
「お前要らない、家から出ていけ!」
テーブルの上に置かれたコーヒーカップを投げられる。
僕の体に当たって、床に落ちてカップが割れた。
「さっさと掃除しろ!使えないなあ!!」
僕を責め立てる声が響き続ける。
当然道具は渡してくれないから、僕は素手で破片を回収した。
破片を回収する際に、指を切る。
指先から血が流れだす。
傷みを我慢しながら、それを持って外のゴミ箱へと入れる。
その際に、僕は妹を見かけた。
雪の様に白くて、鮮やかな髪を持つ、妹の薊。
僕を見るけど、一瞥するだけで、何も言わずに自分の部屋へと戻る。
父さんや母さんが怖いから、出来るだけ近づこうとしないんだろう。
「さっさとしろ」
カップの破片を片付けた僕。
父さんは苛立ちながらそう言うと、僕の手首を掴んで部屋へと連れていく。
廊下を歩いて、薄暗い地下へと続く階段を降りた。
閂のついた扉を開けると共に、僕は部屋の中に押し込まれた。
「声を出すな、物音を立てるな」
それだけ注意して言うと、父さんは扉に閂をした。
これで僕は外に出ることは出来ない。
部屋の中がジメジメとしていて、それでいて温度が高いから蒸々としているから、暑くて仕方がない。
僕はこの部屋の中で暗闇を見つめながら過ごしていた。
こんな待遇なのは…きっと、僕が養子だからだろう。
僕は、一年前に、父さんと母さんの子供になった。
孤児院で、条件を満たした子供が僕だったから引き取られた。
新しい生活が始まると思った、けど、其処は酷い所だった。
新生活は、精神と肉体を摩耗させる事で一杯だった。
両親は家に戻ると態度を豹変して、僕を召使い以下の奴隷として扱った。
こんな内面的な性格だからか、新しい学校でも、僕はイジめられている。
何時か、この状況が改善される事を願って、僕は眠る。
明日になれば、良い事があると思って。
…そして。
また1日が始まり、閂を外される音で僕は目を覚ます。
扉が開くと父さんが顔を出して、僕を一瞥した。
そして部屋の中を見回すが、すぐに視線を切って一人階段を上っていく。
舌打ちが聞こえて来ると、僕に怒りをぶつける。
「さっさと起きろ馬鹿がッ!」
僕は体を起こして父さんの後についていった。
父さんと母さんは会社へ行き、家の中には僕だけになる。
其処で僕の自由時間が始まる。
まずは体中に張り付いた汗を拭う為に風呂へ入る。
お湯に浸かる、と言うよりかはシャワーで体を洗う。
時間は3分とかからない。3分以上を越えたら怒られるからだ。
風呂に入った後は次は食事だ。
昨日から何も食べていないから、冷蔵庫から料理を取り出す。
朝は卵と食パン、それだけしか許されていない。
卵と食パンを食べる。
火を扱うのもダメなので生で食べる。
トーストも焼いてはいけないので食パンのまま齧る。
そして飲み物は水道水の水だけで、水をいっぱい飲んだ。
それで腹が膨れるので朝食はそれで終わりだった。
後は、父さんたちが食べた後の食器を洗う。
今日は何を食べたのだろうか、そんな事を考えながら洗う。
それが終わると、いよいよ登校の時間だった。
鞄は玄関の前に投げ捨てられていたから、それを持って僕は登校する。
学校へ到着して、教室の扉を開ける。
ガヤガヤと煩わしく声を荒げる生徒たちの楽しそうな表情が僕の視界に入る。
対して彼らは僕の顔を視界に入れると不機嫌そうな表情に変えた。
「は?何来てんだよ」
昨日。
僕を一番に殴った生徒が僕の元までやってくる。
「お前、次来たら殺すって言ったよな?」
鬼気迫る表情をしながら彼はそう言った。
名前は武之内くんだ。
もちろん覚えている、けれど僕は学生の身分として授業を受ける権利がある。
それを説明しても、彼の言葉は暴力しかない。
「…」
軽く会釈をしながら机に行く。
机の上にはたくさんの落書きが施されていた。『死ね』『学校来るな』と言った文字がマジックペンで書かれている。
後で消しておかないと…そう思いながら僕は机の引き出しに手を入れる。
教科書が無事かどうか確認しようとした。
指先にはぐっちょりとした感触があった。
それを手でつかんで引っ張り出してみると、引き出しの中から雑巾が出てきた。
濡れている雑巾は異臭を放っていた。
どうやら牛乳を拭いて放置した雑巾であるらしく、僕は顔を歪ませるとそれを握ったまま教室から離れていく。
トイレの手洗場で僕が雑巾を洗っていると、その時チャイムが鳴り出した。
授業開始のチャイムだった。
雑巾を絞って勢いで教室の方へ向かっていく。
教室の扉を開けるとすでに授業を始めている先生が僕の顔を見た。
先生は僕の方を一瞥するとまるで存在しなかったのようにまた授業を開始し始める。
机に座ると同時に僕はお尻に鋭い痛みを感じた。
誰かが僕の椅子の上に画鋲を置いたらしい。
僕が、か細い悲鳴をあげても教師は見向きもしなかった。
教師にとって僕は存在しない人物である。
極端に干渉しようとはしなかった。
僕は黙って先生の授業を受けることにした。
休み時間になると、武之内くんが僕を呼び出しては屋上へ連れて行き、僕をサンドバッグにする。
「死ね!」
「お前なんざ居ない方が良いんだよ!!」
「くたばれ疫病神!!」
罵倒を浴びせながら殴られる。
何時もなら、放課後くらいで終わる筈だったのに。
それでも、今日は一段と暴力が激しい。
昼休みが終わって、解放される。
屋上でぐったりとする僕が、次に意識を覚ましたのは午後の授業が終わった後だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます