落星

クリストファークリス

第1話 プロローグ

7月6日午前零時。


―――深川不動尊側の裏路地。

「ちくしょう……、ヒック……。ちくしょう……。どうして……、俺が……、どうして、俺ばかりが……、ヒック……」


「っせーなぁー、ユージ、テメェ……。何をブツブツ言ってやがんだよっ。この野郎……」


「んぐっ……、グハァッ……。ど、どうして……。グボォッ……。ヒッ……、ヒィィィッ……。も、もう、やめ、やめてくれぇーっ……。グハァッ……、フングッ……。フ、フミヤ君……、お、お願いひまふ……」


「ったくぅ……。あーっ、ムシャクシャする……。テメエ見てるとムシャクシャすんだよっ!」


「フングゥゥゥッ……」


「明日は、もっともってこい。2万じゃ、あっという間になくなっちまう……。最低でも10万は持ってこいっ! わかったか、ボケェ! いいなっ! ペッ……!」


「…………」


(どうして、こんな人生になっちまったんだろう……? 普通に生きていたいだけなのに……。大体……、高校卒業してもう10年も経っているのに……。小中高の時と……、何も変わらないなんて……。せっかく、学校終わって、大人になって……、誰にも関わらずに穏やかに生きていけると思っていたのに……。もう……、もう……)


「もう……、どうしたいのさ?」


(……?)


「殺っちまうか?」


(え……?)


「あいつをぶっ殺しちまうか? って、聞いているのさ」


(……? ん? ど、どこ? 誰? 幻聴……か?)


「さんざんにぶん殴られて、周りが見えないか? すぐ後ろだよ」


「えっ? う、うわっ! い、いつから、ここに? え? いつから……」


「アンタが殴られる前からずっとここに座っているさ……。周囲が認知できないなんて、よほどの恐怖に支配されていたんだねぇ……。ふっはっはっは……」


「そ、そんな……、全然、気が付かなかった……。こんなところで、何を……、何をしているんですか? ずっと? 僕が殴られているのを見ていたんですか?」


「あぁ、最初っからね……。それにしても、無様だねぇ。アンタ、小中高って、今みたいに虐められていたのかい?」


「無様って……。ひどいじゃないですか……、見ていたなら助けてくれたって……。大体、こんなところで何しているんですか……」


「おいおい、俺に八つ当たりはやめてくれよ。ふんっ、俺の方こそ商売の邪魔をされたんだ。アンタらのせいで、客が全然寄って来なかったじゃないか……。しかも、客でもないアンタを、なんの義理があって助けなけりゃならないんだよ」


「商売? 客? でも、もう夜中の12時ですよ。こんな時間に、誰が……」


「こんな時間だからこそ、誰にも見られたくない客が来るのさ……。人知れず、悩みや恨み、怒りや悲しみを俺に打ち明けに来るんだ」


「悩み? 恨み? 怒りや悲しみ……?」


「そうさ……。この格好見りゃわかるだろう。占い師だよ、占い師。そして、祈祷師さ」


「占い師……に、祈祷師?」


「あぁ、そうさ、。なんなら占ってやろうか? アンタの今の運命とこれから先の運命と……。そして、打開策と祈祷をしてやろうか?」


「え? い、いや、いいです。そんな余計な金なんかないし……」


「ほーう。じゃあ、明日、このままアイツに10万の金を渡すのかい? 気前のいいこったなぁ、ククク……」


(怪しい占いなんかに金払う方が気前がいいじゃないか……。占いなんて、当たるわけないし。俺が虐められていたからって、カモにしようとしているんだな……)


「10万集めるのに精一杯なんだ。占いや神頼みなんかにお金を使っていられないんですよ。もっと、現実的な問題なんです」


「別に、アンタが虐められていたからカモろうなんて、ちっぽけな考えじゃないさ。それに、打開策まで教えてやろうって言うんだ。俺の占いは、当たるしな。それに……、単なる神頼みなんかじゃない。所謂、呪いだ……。呪いをかけるのさ。明日、アイツに渡す予定の10万で占いと祈祷と両方やってやるよ」


「え? でも、そんな……。10万なんて大金……。簡単に……」


「10万、あいつに渡して、その後もずっとタカられるか……。俺に渡して、もう金輪際、アイツに虐められることがなくなるか……。どっちを選ぶ?」


(何言ってるんだ、この人……。俺をどこまでも馬鹿にする気か? そんなアホみたいな提案に乗るわけないじゃないか……。余計に10万かかるだけじゃないか……)


「あの……、だから、占いなんて……」


「別に馬鹿になんかしてないさ。俺に、10万払えば、明日からアイツにはもう虐められなくなるって、親切に教えてやっているのさ。余計に10万かかるわけじゃない。10万ポッキリで終わるんだ」


(え?)


「あぁ、そうそう。口にしなくたっていいぜ。アンタが口を開かなくても、会話はできる」


「えっ? な、何を言っているんですか?」


「だから、アンタがいちいち喋らなくても、思っているだけで会話はできるってことだよ。アンタが俺の存在に気が付く前は、そうして会話していたろう? さっきのことだぞ。もう忘れたのか?」


「えーっ?」


(そ、そうだ……。確かに、確かに……。しかし、そんな馬鹿なことがあるはずがない。こ、これは、夢か? 幻想か? 俺は、殴られて頭がおかしくなったか?)


「ふっはっはっはっは……。何を言っているんだ、紛うことなき現実の世界だよ。さぁ、どうする? 俺に占わせろ、な? もう、これまでのアンタから脱却するんだ。ん?」


(う、うあぁぁぁぁっ……、一体、何がどうなっているんだ……。どうしたんだ? とうとう、俺は、頭までおかしなって……)


「あー、面倒臭いやつだな、アンタ……。でも、まぁ、仕方ないか……、ロクでもない人生を送ってきたんだものな……。何を信じて良いのかがわからないんだろう。よし、わかった。じゃあ、10万は後払いでいい。俺の占った通りにして、上手くいったら、その時に払ってくれ。なぁ? それでいいか?」



―――神田神保町靖国通り付近。

「ダメだよ……。はぁはぁ……。もう間に合わないさ……。日付け変更線越えるぜ。それに、気持ち悪くなる。結構飲んだからな……」


「大丈夫だ……、走れよ……。はぁ……、はぁっ、まだ12時なったばかりだろ? あと10分はある……」


「もういいよ……はぁ……、酒入ってて……、こんなに走って……。つーか、もう走れねぇ……。ダメだ……、マジ無理……、吐きそう……。はぁ……、まだ駿河台下にすら着かない……」


「もう金ねぇんだ……。なんとしても、はぁ……はぁ……、終電乗らねぇと……」


「俺は……、いい……、俺の方の終電には30分以上ある……。はぁはぁっ……。だから……、はぁはぁっ、お前だけ先に行ってくれ……はぁ、はぁ、はぁ……」


「なんだよっ……、マジかよ……、俺はこのまま行くぞっ……、くっ……くはぁっ……。じゃあなっ、ナオト……。明日の昼……学食行くから……」


「あぁ……、気持ち悪い、マジもどしそう……。はぁはぁっ……。あぁっ、きっつい……、はぁっ……」


「わーった……。んじゃなぁっ……」


「おうっ……、はぁはぁ……、はぁはぁ……、はぁ……」


(マサル……、。本当に走ってった……。あぁ……しんどい……。あいつ……、北千住だったっけ……。終電早いんだな……あっち方面は……)


(0時5分か……。この時間になると、昼間とはまるで雰囲気違うな……。車も人もほとんどいないし……。しかし、薄気味悪いな……。こんなにも変わるものか……? 酒が入ってなけりゃ、おっかなくて、なかなか一人では歩けないぞ、こりゃ……、ふはははははははっ……って、マジ吐く……)


(ん? なんだ? あのビルの入り口の前にある白くてモゴモゴ動いて見えるのは……。ひょっとして、見えてはイケナイものが見えてるか? えー、事故現場跡じゃねーよな……。まさか、ここら辺一帯、墓場とか刑場とかなかっただろうな? 江戸時代とか……、もっと昔とか……。って、あー、なんだ、鳥肌立ってきた……。あの白いの……、なんだ? いやだな……。回り道するか……? 脇道……入るか……ん? ダメだダメだ、おっかなすぎる……。脇道細過ぎ……。おまけに雑居ビルばかり……、余計に気味悪ぃや……。ギリ車道近くを行こう……。いやいや、車ほとんど来ないから車道でもいいか……)


(ん? なんだよ……。本じゃねぇか……。風でパラパラ捲れてるだけか……、おどかしやがって……。チッ……。そういえば……、昔、公園の植え込みとか、河原にエロ本が落ちてたっけな……、くっくっく……。雨で濡れてガビガビになってるのを破けないようにユックリめくったっけなぁ……、くっくっく……。って、それにしても、あの本、白過ぎじゃね……? やたらと分厚そうな本だけど、何も書いてないのか? やたらと白いな……。ちと、見てみるか……。幽霊の正体見たりなんとかかんとか……。本とわかれば怖くはないしな……)


(んんっ? なんだ、こりゃ? 白紙じゃないな……。てか、近くに来たら急に字が見え始めたか? 見間違いか? 筆書きだな、紐で綴じてある……。いつの時代だよ? って、それなのに白過ぎじゃね? 汚れていない……。なんだぁ……?)


(筆書きでズラズラ文字が書かれている……。ん? 挿絵も描かれている……。指を組んでいる絵だ……。なんだ? 臨……、者……、前……、あー、風でペラペラ捲れてよく読めないな……。汚くなさそうだから、拾ってみるか……)


(分厚いな……、広辞苑くらいか……、和紙だから余計か? って、これ和紙? わからん……。綺麗だよな、ちっとも汚れていない……。それに……、妙に軽い……。表紙は白紙か……。阿毘羅吽欠 ……? なんて読むんだ? 読めねぇ……、くっくっく……、俺が無知なのか? お、これは……、臨……、兵・闘……、者・皆・陣……烈……在・前……、なんか聞いたことあるな……。なんだっけ……、なんかで見たか聞いたかしたな……。指を組んでいる絵は……何だ? いやいや、他は読めねぇ字ばっかりだな……。持って帰っか……。へへっ、珍しいしな、電車の中で見てみるか……。つまらなきゃ、網棚に置いて帰ればいいし……)



―――南アルプス天体観測所。

「まただ……。ったくぅ……。こんな数値あるわけない……」


「またかよ、キド。お前のスコープ、調子悪いんじゃないのか?」


「そんなことはないと思うんだけどなぁ……。でも、ここ最近よくあるんだよ」


「でも、継続的ではないんだろう? でもって、断続的って言うほどの規則性もないんだろう? なんらかのバグか、スコープがいかれているんだよ。ほら、ダンさんの測定システムもいかれてたって……。お前と同じように、X線とガンマ線だけがやたらと計測されたってコグレさん大騒ぎしていたけど、テスターにかけたら結局スコープがぶっ壊れていたんだと……。だいたい、古いんだよな……。こんな機械使ってっとこ、ほとんどないぜ……。まったくさぁ、注目されない星の観測部署には、予算つけてくれないもんなぁ……。俺たちにも、もっと近場の星や人気の流星群の観測させてほしいよ……、だいたい……」


「そうなのかなぁ……。でも、一応、テスターにはかけたんだよ、俺のも……」


「へー、そうなんだ⁉︎ で、正常だったのか?」

「あぁ、誤差に関しては、さすがに最新の機種に比べれば幅は大きけど、中央値を取るのに不足はないし、メンテナンスだけはちゃんとしているから、回路のどこ調べても、不具合ないって……」


「じゃあ、なんだ……? 本当に……、おかしいのか?」


「だから、よくわからないんだ……。ここの近隣で、放射線を発生させるような機械や施設があるか……、例えば、病院かなんか……」


「何言っちゃってんだよ、こんな山奥だぜ……。登山するほど身体が元気なら、病院なんか行かないし……」


「うおっ……。まただっ‼︎」


「えっ……⁉︎ なんだ? どうしたよ?」


「ほらっ、見てみろよ、ケイジ……。これ……」


「うげっ……。マジかよッ……。振り切ってんな針……」


「なっ……。言った通りだろう……」


「これはぁ……。スコープに異常がないのだとしたら、やばい数値だよな。自然界ではまずあり得ないだろう……。どのくらいの頻度なんだ? 記録装置には録ってあるのか?」


「ここ一週間は、毎日不規則に出てくるんだ。最初は俺もバグだと思っていたから記録は録っていなかったんだ。だが、一昨日からは録ってある……」


「一昨日からかぁ……。データとしては説得力に欠けるな……、まぁ、ないよりはましか……。キド、計測器に内臓の記憶装置じゃ4日分程度しか保存しておけないだろうから……、ほら、容量超えると上書きされちゃうから、外付けかサーバーに繋いで、これからの分もずっと、てか全部記録しておいた方がいいかもな……」


「そうだな……。オーケー、わかった……。なぁ、言った通りだろう……」


「一体、この広い宇宙のどこから放出されているんだ……?」


「おそらく……、おそらく、アルタイルからだと思うんだ……」


「アルタイルって……、あの、夏の大三角形のアルタイル……、七夕の彦星のことか?」


「あぁ……、このスコープは古いタイプだけど、やたらとピンポイントの指向性だけは強いんだよ。で、このスコープがアルタイルの方に向いたときにだけ、この強い電磁波を拾うんだ……」


「誤差も考えてみたか? 他に人口衛星含めて、疑わしい物体とか星はないのか?」


「あぁ……、他は考えにくい……。このスコープが拾うことのできる範囲内で、これだけの電磁波を放出することができるのは、太陽の2倍近い質量がありながら太陽の70倍近い速さで自転しているアルタイルぐらいしかないんだ……」


「アルタイル……か……」


「まだまだそんな時期じゃないはずだけど、ブラックホール化が進んでいるっていうことか……?」


「まぁ、時間の経過って観点からだと、俺たちの常識では測れないからな、宇宙に関しては……。ちょっと俺のスコープもそこに向けてみよう。キド、アルタイルの座標をくれっ!」

「あぁ……、今、送る……」


「あと……、大学や学会……、それに気象庁やらで、アルタイル関連の情報が流れていないか……、ちょっと見てみよう……」


「わかった、じゃ、俺はそっちを見るよ……」

「あぁ、頼む……。よしっ……、これで、アルタイルに向いた……」


「ケイジ……」


「ん? 何か、わかったか?」


「いや、ダメだな……。天体関連のどのホームページやチャットを見ても、わし座方面の異常については報告されていないなぁ……」


「JAXAはどうだ?」


「あぁ、そっちも見たけどな……。何もない……」


「ひょっとしたら、これは、大きな発見かもしれないぞ……。一番近い国の観測所はどこだっけ?」


「えーっと、野辺山に宇宙電波観測所があると思ったけど……」


「俺たちのような民間ではなく、国立がいいだろう……。連絡してみよう。おっ、来たっ……。キドッ! 俺のスコープでも異常値が受信されたっ! お前の機械がおかしかったわけじゃないっ! やっぱり、何か異変があるんだっ! 普通じゃない、普通じゃないぞぉ、ひょっとして、俺たちが世紀の大発見の第一号かもしれないぞぉ!」



―――京都、鞍馬山、山腹の洞窟。

「御前、本当に道士を全員集めるのですか?」


「あぁ、そうしてくれるか、エイケイ……。どうしても、この緊急事態への対応策について、奇門遁甲道士たち全員からの承認を得たいのじゃ……。どうしても……、一名たりとも、かかしてはならないのじゃ……。気の早いヤツは、もうすでに参じている。時代が時代なら、本来は全ての道士がもうこの地に馳せているはずなのじゃが……。弱い……。脆弱すぎる……。果たして……」


「おいおい……。気の早いヤツってのはなんだよ? 別にせっかちで京都くんだりまでわざわざやってきたわけじゃないぜ」


「おい、タドコロ……。御前に失礼だぞ! ここに座して……」


「まぁ、エイケイ、よい……。よいのじゃ……。こやつの持つようなレベルの気を……、本来はすべての道士が持つべき……。それが、今の世ではそうもいかん……。タドコロよ、気の早いとは、それだけお前の感覚が優れているということ……。誉め言葉じゃ……」

「ほー……。俺はてっきり暇人扱いされているのかと思ったぜ……」


「タドコロ! 先ほどから御前に向かって、なんと言う悪口雑言……」


「エイケイ……、よいのじゃ……」


「しかし、御前……」


「あっはっはっはっは……。エイケイさんよぉ、御前様がいいって言ってるんだからぁ、いいじゃねぇかよ。それに……、人様から暇人扱いされると妙に腹が立つが、実のところ、俺はマジで暇を持て余していたんだ。この太平楽な現代日本の中で、俺たちのような異常者が、持っている能力を解き放つことなどないからな。一般ピープル様と同じように社会に溶け込んで暮らし生きていくことが、どれだけ苦痛か……。道士の血筋を持つ者や道士を志願する者たちを毎日のように修行と称していたぶって虐めているようなアンタたちのように、楽しい日常ではないわけよ」


「くっ、タドコロ……。おのれっ! 誰が楽しい日常を送っていると……」


「おっほっほっほっほ……、タドコロよ、よう言うた……。よう、言うたわい……。おっほっほっほっほ……。それくらいの戯言が言えるようではないと、これから迎えることになる脅威に、到底太刀打ちはできまい……。お前の望む世界かどうかはわからぬが、今まさに、魑魅魍魎が蠢く暗闇が、この日本を覆いつくそうとしている……。少なくとも、タドコロよ……、お前のような念波に長けた道士が、大勢でこの脅威に立ち向かわなくては……、ならぬのじゃ……、ゴホッゴホッ……、ゴホッ、ゴフォッ……」


「御前! 今日はもうお休みください。お身体に障ります……。仰せの通り、道士たちを全員、この地へ呼び集めます。まずは、お休みを……」


「いや……。これより100日勤行に入る。エイケイ、その間の火を絶やさないよう護摩木を準備しておいてくれ。道士たち全員が集まるまでに、悲しいかな、おそらく100日はかかるじゃろう……。せめてその間、微力ながら宇宙の……、自然の……力に歯向かわなくてはならない……」



———横浜、黄金町雑居ビル地下

「新たに3人……、これで、7人かぁ……。俺好みの女どもばかりを7人……。グハッ……、ゲホッゲホッ……。しかし……、何か、物足りない……。まだか……。もっと、もっと集めないとならないか……」


「ちょっとぉ、放してよっ! 帰して! 解放して!」


「グホッ、ケホッケホッ……。なめてんのか、コラ……。これから陵辱するために集めた女を、一体、どうして解放するんだ?」


「りょ、陵辱? な、なんでよ……? ちょっと、バッカじゃないの……、放してって……」


「ん? なんだ? バカだと? うっひゃっひゃっ……、ゲホッ、ゲホッ……。バカはお前らだ。もう、どうにもならないという事をわかったほうがいい。その元気は、俺に犯られる時まで温存しておいてくれよ。クックック……。俺はなぁ、女を抱くとき、ギャーギャーと喚きながら抵抗されないと本気になれないんだよぉ……。だから、今は先輩の女どもみたいに黙ってろ……。みんな、ここにきた時は、お前みたいに威勢のいい事ばかりホザいていたがな、服ひん剥いてやったら泣いて詫び入れて大人しくなりやがった。お前ら7人、取っ替え引っ替え犯ってやるからよぉ、もう少し待ってろぉ……。この世の極楽に案内してやるっ、ゲホッ……」


「こんなことして、タダで済むと思ってんじゃないわよね? うちの旦那は、私の携帯のGPSを常にチェックしてるんだからね! 夜中の12時を回っただけで、すぐに場所を調べて怒鳴り込みに来るくらいしょっちゅうなんだから……」


「そうよ……。うちの親だって、私がなんの連絡もなしに門限すぎたら、アチコチに電話かけまくったり、携帯サーチして居場所を突き止めるわ……。すぐに、警察に連絡されるからね!」


「クッハッハッハッハ……。いいね、いいねぇ……。みんなみんな、愛されて大事にされているんだなぁ……。いいねぇ……。いいよなぁ……。すっごくいいよねぇ……。クッヒッヒッヒッヒ、アーッハッハッハッハ」


「何よっ! 何がおかしいのよぉ!? この変態っ!」


「ッハッハッハッハー……。おかしいねぇ……、おかしくてたまらない、たまらないねぇ……。お前……、お前がそんな口を叩くのも、俺が情けなく、貧弱、ひ弱、おまけに気が弱そうな男に見えるからだろう? え? ナメてるからだろう? 強気になれば、俺がビビると思っているからだろう? え? どうなんだ?」


「ふんっ、ハナっから、アンタのことなんか怖くないわよ。この変態。どうせすぐに捕まるわっ……」


「ウッヒョッヒョッヒョッヒョ……。高まるー。いいねぇ……、本当にいいなぁ……。俺はなぁ、そう言う気の強い生意気な女をとことん陵辱してやるのが、何よりも好きなのさぁ……。泣いて叫んで喚き散らしているところを、思いっきり嬲って、犯しまくってやるのが大好物なんだぁ……。だから、もっともっと、もっともっと大声で強がってくれよぉ……。いいなぁ……、いいよなぁ、すっごくいいよなぁ。俺にはカナリヤの歌声だよぉ……。気持ちいいいんだろうなぁ……。あぁ……、想像しただけで、身体が疼いてくるよぉ……。」


「ふっ……。そんな戯言みたいなことを言っていないで……。とっとと犯っちまえばいのよ……。もたもたしていると、あの子たちの言う通り、GPSで場所を特定されて、捕まっちゃうのがオチよ……。それとも、なぁに? 口先だけで、本当はどうしていいかわからなくてドキドキしちゃっているとか……?」


「んん? なんだぁ、お前は? さっきの女たちみたいにイキは良くないくせに、言うことだけは生意気だなぁ……。暗い感じの女も、どこかソソる所があると思ったから掻っ攫ってみたけど……。なぁんだぁ……。どっちかというと、こういうシチュエーションを楽しみたいタイプなのかぁ? あぁ? 興奮するのか? こういうのが……。あっ、そうだ。いいことを教えておいてやるよ。ここはなぁ……古い雑居ビルの地下二階なんだ……。周りも狭い路地に古い建物がひしめき合っている……。お前らの期待するGPSとやらは、機能しないよ……、くくくくくっ……、それだけじゃなく、携帯の電波だって通じやしなんだ。と言うよりも、お前ら、気がついていないのかもしれないが、お前ら一人一人を掻っ攫ったとき、携帯はすぐに取り上げて電源落としてあるからな、なんの心配もないさぁ、ふっくっくっくっく……」


「ふんっ……。能書きや御託はいいから、とっとと犯っちゃいなさいよ」


「ちょ、ちょとぉ、アンタ、何言ってるのよぉ? 話聞いたでしょ? バッカじゃないの? そんなに言うなら、アンタだけが犯られればいいでしょ?」


「んかっかっかっか……。高まるなぁ……。そうだな……、まずは……」









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