冷酷無比な殺し屋が高校生となって異世界転生したらこうなる

Leiren Storathijs

プロローグ

 俺の名はジャック。今はこの偽名を使って、殺し屋を生業にしながら生きている。

 本名は忘れた。

 殺し屋になる以上、いくら変装してもいずれ顔が知られる。だから多くの変装に合わせて無数の偽名と人格を用意する。そのため、元から使っていた名前ももしかしたら偽名なのかもしれない。

 だがそうすれば対象の記憶に瓜二つの俺がいたとしても、他人を空似など良くあることだ。名前も性格も違うとなれば、それは最早別人と捉えられる。


 生業としている俺の殺し屋は、完全依頼制。ネットにサイトを作成し、一定期間潜伏。頃合いが来たら、サイトを削除し、拠点を変更し、PC端末も買い換える。そのため、依頼料は一般的にはかなり高めに設定している。


 だが俺もただ金稼ぎのために殺しをしている訳では無い。殺し屋は世間では叩かれる職業だが、依頼は悪人の『掃除』ではなく、しっかり依頼人の理由や事情を聞いて実行している。


 俺にもそれなりのこだわりがある。別に依頼人に感情移入することは無いが、少なくとも人の役には立っている。

 特に、法で裁かれなかった人間の処分は依頼が多い。対象の立場的には簡単に裁けない人間もだ。

 俺はそのようなどうしようもない人間を"選んで"殺している。


 それは特により良い国を作る訳でも、慈善活動のつもりでもない。

 ただ、悪人がのうのうと生きているのが腹立つだけだ。目障りで耳障り。死んでいないことを知って嘆く遺族の声もクソッタレだ。

 政府のルールが何だの言って何もできない無能がいるのなら、快適な生活をするには自分でやるしか無い。そう思って殺し屋をしている。


 さて、今日も新たな依頼が来た。時間は午前二時三十分。依頼だけ見て実行は明日にしよう。

 俺はPCでサイトを開き、管理者メニューから依頼タブを開く。

 依頼に必要なのは、依頼者名、対象ターゲットの名前、対象の詳細と依頼内容だ。


「は……?」


 こんな遅い時間にどんな依頼が来たのかと依頼内容を見れば、俺は一瞬硬直した。

 依頼者名はUnknown。

 どこからどう見ても偽名。依頼者名に関しては個人情報もあるので、ニックネームでも許可している。しかし、対象ターゲットには……。


 俺の素顔の顔写真と偽名のジャックという名前が入力されていた。

 しかも顔写真はまるで証明写真のように真正面から撮られたもので、写真に写り込んでいる対象の服装が、今俺が着ている黒のパーカーになっていた。


 俺は今までに一度も警察には捕まったことはなく、写真は撮られてもここまで真正面からの写真は許したことが無い。

 一体依頼人は何者なのかと思えば、依頼内容も意味不明だった。


『は〜いジャック君。初めまして! 僕はUnknown。今君は、対象の顔写真を見てきっと驚いているところだろう。どう? よく撮れてる?

 凛々しい顔に、人を殺しているような鋭い瞳。いいねぇ〜。これは逸材ってやつだ☆

 それはさておき、依頼内容気になるよねぇ? でも残念ながら、それは今は教えられないんだよね。ここに座標を置いておくから、明日の朝に僕に会いに来て! んじゃアディオス!


 座標:縺励↓縺後∩縺ョ縺ク繧』


 依頼内容が意味不明な上に、重要であろう座標が文字化けしている。

 口調もノリ軽で、まるで俺をやっと見つけたかのような言葉も残していた。

 しかし、どうやって俺の顔写真を入手したのか。依頼人は何者なのだろうか、とにかく明日には早急に場所を変えなくてならない。


 俺は様々な考えを持ちながら、遅い時間の眠気に体を委ね、ベッドに倒れ込んだ。

 明日、考えようと。


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『あれ? 寝ちゃったか。まぁいいや』

 

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