宮沢賢治の詩「小岩井農場」から百年

清瀬 六朗

第1話 「小岩井農場」から百年

 宮沢賢治が詩「小岩井農場」を書いてから、この(二〇二二年の)五月二二日でちょうど百年になります。

 小岩井農場そのものの開設百年ではありません。小岩井農場は一八九一(明治二四)年に開設されていますから、一三〇年以上の歴史があります。

 宮沢賢治がその小岩井農場を歩いて「小岩井農場」という長篇の詩を作ってから百年ということです。


 *「小岩井農場」の本文はこちらを参照してください。

https://ihatov.cc/haru_1/022_d.htm


 最初に、無粋なことは承知で、あらすじを紹介しておきましょう。

 ……って、詩で「あらすじ紹介」?

 この詩は、主人公が、小岩井の駅で降りて、小岩井農場まで行き、小岩井農場のなかを歩き、そこで見聞きしたもの、感じたこと、思ったこと、考えたことを書き留める、という体裁で書かれています。主人公の体験の順を追って書かれているので、それを、ひとまず整理してみようということです。

 「パート一」から「パート九」に分かれているので、その「パート」に沿ってまとめます。

 なお、小岩井駅は現在の田沢湖線(秋田新幹線の通るルート)にあり、そこから小岩井農場を経て向こう側は、現在のいわて銀河鉄道線の通っている地域です。岩手山の手前の鞍掛山(くらかけ山)はそのいわて銀河鉄道線の側にあります。詩のなかにはときどきこの地理的な位置関係が出て来ます。


 *以下、「小岩井農場」からの引用は、新かなづかいに直したり、漢字をかなに開いたり、行が変わっているところを一行におさめたりしています。なお、原文では促音の「つ」や拗音ようおんなどの表記で、小さく記すかな文字が大きい文字のままにいますが、賢治は自筆の原稿では小さい文字を使いて、これは印刷時の都合によるものと考えられます。したがってここではそれを小さい文字に直しています。

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