No.1のVTuber(幼馴染)が俺を養ってくれるそうです

桜井正宗

VTuberの幼馴染が養ってくれるそうです

 高校二年に上がり、悪友・智希ともきから『VTuber』なるものを教えてもらった。以降、俺はドハマリして――気づけば『投げ銭』をするほどになっていた。


 おこづかいは直ぐに底をつき、俺は窮地きゅうちに立たされていた。そんなギリギリの生活を毎日送り、半年。


 ある日、教室内で過去の動画を視聴していると、幼馴染の『静内しずない 桜花おうか』が久しぶりに声を掛けてきた。


 珍しいな、いつも俺に冷たいのに。


 ほんの数年前までは、普通に話しかけてくれただけど今はツンツンだった。やっぱり高校生にもなると彼氏とか出来ちゃうのかな。だから、自然と距離感が出来ていた。


 そう思っていたのに。


 隣の席の桜花は、焦った表情で俺に話しかけてきたのだ。



「あ、あの……ショウくん、それ」

「ああ、動画これか。いや、その、いいだろ、俺の趣味なんだ」

「う、うん。別にダメとか言ってないよ。あのさ、その子って」


 スマホに映し出されている『静花シズカ』は、現在のNo.1VTuberだ。桃色髪で全体的に桜色テイストのデザインだ。服装は“桜模様の和服”にこだわりがあって、とても可愛らしい。和風系お嬢様というのか、清楚せいそで大人気。炎上も一切ないという、クリーンなVTuberで、No.1もうなずけた。


 俺もファンのひとりだった。


「なんだ、桜花も知ってるんだ?」

「あ、あのね。実はその『静花シズカ』って、わたしなんだけど」


 桜花は不思議なことを口にした。

 え、静花シズカの中の人が桜花?


 うそだろ??


「いや、信じられないんだが」

「じゃあ、証拠を見せればいいんだよね!?」



 桜花は、ぷんぷんと怒ってスマホを取り出す。ムキになってタップを連打する。どうやら、動画サイト・ユーチューブのアカウントにログインしたようだ。


 画面を見せてもらうと――


 そこには確かに『静花シズカ』のアカウント名が。……え、本物じゃん。この画面を出せるのは本人かスタッフだけだろう。もちろん、スタッフという可能性もあるのだが、いや、そんなわけないだろう。桜花にそんな技術があるとは思えない。


 なら、中の人の方が納得できるわけでして……。



 え、え……ええッ!?



「本物だ!!」

「言ったでしょ! 本物なんだから! ねえ、ショウくん、もしかして君って『ショウ』でいつも投げ銭してくれてる人だよね」


「ば、ばれてたの?」

「うん。だって名前そのまんまなんだもん。本名とかおまぬけさん?」


 うわぁ、どうやら桜花にモロバレしていたみたいだ。くぅ、俺は桜花と知らずに投げ銭しまくっていたのか。今まで十万以上は使ったぞ。


 つまり俺は、幼馴染の桜花にお金をあげていただけかよ。


「びっくりしたよ。まさか、桜花がVTuberやってたとか。しかも、No.1じゃん。毎日、ネットニュースで話題だし、ツイッターのトレンドでも度々入っているし」


 そう、ここ最近はどんどん盛り上がって『静花シズカ』の登録者数は百万以上。ツイッターのフォロワーも百万以上となっていた。ついでに、インスタグラムも五十万以上となっていた。


 もちろん、俺は全部登録してフォローしていたので知っていた。


「わたしも身近にファンがいるとは思わなかった。しかも、幼馴染のショウくんとかさ、信じらんない! ていうか、嬉しいっ」


「た、たまたまだよ。俺は中の人が桜花って気づかなかったわけだし」


「ううん。でも嬉しいの。そうだ、また昔みたいに仲良くやらない?」

「え……いいのか」

「うん。最近話しかけてあげられなかったのもVTuberで忙しかったせいだから、今まで冷たくしてごめんね」


 それで態度が急変したんだ。

 おかしいと思った。

 ということは……。


「疑うようで悪いんだけど、彼氏はいないんだな?」

「い、いないよ、そんなの! ファンともリアルで会ったことないし」


 そうなのか。

 人気者なら、毎日メッセージとかありそうだけど、丁重にお断りしているんだな。さすがプロ。きちんとしているんだ。



「分かった。俺も桜花とまた仲良くしたかったし」

「うんうん。ショウくん、良かったら、わたしのマンションに住まない? 実は、今週引っ越すの。手伝ってくれる人を探していてさ。ほら、機材とか大変だし」


「なるほどな。でもいいのか、俺なんかで」


「いいよ。やしなってあげる! だって、ショウくんとわたし、幼馴染だし~、別に問題なくない?」



 ――その通り。

 なにげに十年以上の付き合いだし、ご近所さんでもあった。それがNo.1のVTuberとか夢のようだ。目の前に生身の本物がいるんだからな。ネットでは、あの伝説になりつつある『静花シズカ』だ。



 やばいな、それ。



 ……って、ん!?


 やしなってくれる??



 マジか!!



***おねがい***

 続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。

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