プロローグ

「おら、陰キャちゃん。さっさと金出せよ、おらぁ!」

「もっ……持ってません」

「あぁ? 声が小さくて聞こえねえなあ?!」


 カバンを抱きしめ、3人組の隙間から通りを見つめる。みんな見て見ぬふりをして通り過ぎていく。同じ学生服なのに、気の毒にというようにチラ見しては足早に逃げていくのが目に入る。


「お金は、持ってません。ど、どいてください」

「……どけだと? 陰キャちゃぁーん? てめえ、誰に向かってそんな口聞いてんだァ……あぁ!?」


 ヤンキー達が興奮して大声を上げる。

 ビクッと肩を震わせると、ニヤニヤと笑われて、更に詰め寄られて……。


「(もうやだ! 誰か助けてッ!!)」

「おいてめえら、その女に手出したら殴り殺すぞ?」


 そんな声が聞こえてきて、半泣きのまま少しだけ顔を上げる。だけどヤンキー達は聞こえないふりをして、私の身体を触ろうとしてくる、その時──!


「手出すなつってんだろ!」

「っごほ! んだこらぁ!?」


 1人が咳き込んで脇腹を抑えながら、3人組が振り返る。そして私の目に飛び込んできたのは──。


「ガキじゃねえかよ、ぼくぅ? 痛い目見たくなかったら──」

「死に晒せ、クソカス共が。ぶっ殺す」


 鋭い目付きでドスをきかせていたのは、ランドセルを背負った、小学生だった。

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