第207話 魔物討伐体験

「あら、いらっしゃい。久しぶりね~」


「お久しぶりです。セシル会長」


 魔物討伐体験の受付をしている時、奥の方からセシル会長が出てきてそう出迎えてくれる。


「ちょうど今から私が案内係に回ることになってね。来てみたら知っている顔がいたからびっくりしたわよ」


「いや~、久しぶりに会えて嬉しいです。なにせ闘神祭ぶりですもんね」


「そうなるかしらね。校舎では一年生と三年生の教室が全然違うから、会う事はないし」


 リア様とセシル会長が再会を称え合う。


「カリンさんもクロノ君も久しぶりね。今から案内するわ。是非、楽しんでいって頂戴」


「「「はい!」」」


 そうしてセシル会長の案内で中へと入っていく。中は全部で五つの扉があり、その奥に広い空間が広がっている。


「ここから一人ずつ違う扉に入ってね。中はどれも同じ難易度だから基本的には倒した魔物の数でスコアが決まるわ。扉の先には全部で三種類の部屋があって、最初は陸上、次に水中、最後は空中の敵が出てくるわ。各部屋ごとに制限時間があって、その間しか魔物は出てこない仕組みになっているから出来るだけ素早く倒していく必要があるわ」


「武具は使用しても良いですか?」


「基本的に部屋に置かれている武具以外は使用禁止よ」


「分かりました」


 なるほど、楽しそうだな。


「はい、これがポイントカウンターよ。腕に巻いてね。魔物を倒したらそこの液晶にスコアが表示されるから。それじゃ、ハイスコアを目指して頑張ってね」


 セシル会長から液晶のついた機械を渡され、三人とも違う扉から中へと入る。中に入ると、そこは一面に緑が広がった平原であった。それに屋内だというのに太陽まで見える。


「何だこれ? どうなってるんだ?」


 不思議に思いながらも明らかに建物の大きさよりも大きい気がする平原を取り敢えず走ってみると、周りに次々と魔物たちが出現してくる。


 魔物たちの身体をよく見ると、1とか10だとか何かの数字が書かれているな。試しに10と書かれた魔物を倒してみると、腕に巻いたポイントカウンターの液晶に10という数字が浮かび上がってくる。


 なるほど、魔物たちに書かれている数字がポイントなんだな。


「よし、倒していくか」


 能力の使用が許可されているため、ある程度の力までは許されているだろうが、流石に破壊の力を全開放なんてことをすればぶっ壊してしまう恐れがあるので、力を制御しながら戦っていく。


 これは凄いな。まるで本物の魔物と戦っているみたいだ。ただ、魔物の死体は残らず消えていくため、本物ではないのだろう。どうやって再現しているのだろうか? 


 そうして次から次へと現れる魔物たちを狩り続けていると、突如として周りから緑や太陽が消え去り、無機質な部屋へと変貌を遂げる。


『はーい、一部屋目はここまでとなります。それでは目の前にある二つ目の部屋へとご入場くださーい』


 上からセシル会長の声が聞こえる。言われた通り目の前にあったドアノブを捻り、中へと入ると、今度は景色がガラッと変わる。これは、水中か?


 体の動きは確かに水中の中に居るみたいだが、呼吸は陸上と何ら変わりなく出来る。これまた不思議な感覚だな。


 今の数値は、おーっ、千ポイントか。中々に高得点なんじゃないか? そう思いながら水中を泳いでいく。少し泳ぐと周りに先程よりも高いポイントが書かれている魔物たちが現れる。一つ目の部屋では1ポイントが最低だったのが今度は10ポイントが最低みたいだな。


 ってことは入り口でもめてたあの厄介な客は一つ目のエリアでしか魔物を倒せなかったという事なのだろうか。それであのでかい態度をよく取れたものだ。


「さてと、倒していくか」


 そうは言うものの陸上の時とは違う動きに苦戦しながら水中の魔物を倒していく。


「破邪の拳!」


 周囲の魔物よりも一回り大きなサメの魔物が現れたため、少しだけ力を入れて殴る。一撃で仕留められたは仕留められたが、触れた体の堅さが他の魔物達とは違う。


「一般向けに解放されているとは思えない程、魔物のレベルが高いな」


 最も強い魔物でBランクくらいはあるんじゃないだろうか。流石は最高学年Sクラスの出し物である。単純に他とは一線を画する。


 しばらく狩り続けてポイントが5000ポイントを超えたあたりで急に部屋の中が暗くなり、再度無機質な部屋が映し出される。


『お疲れ様~。さっきよりもちょこっと難しかったんじゃないかな~? それでは最後のステージです! 今までとは比べ物にならないくらい強い魔物達だから気を付けて~』


 どこに扉があるんだろう? そう部屋の中を見回していると突然目の前にブゥンッという音を立てながら大きな扉が現れる。


 そうして最終ステージへと足を踏み入れるのであった。

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