第203話 寄り道
「こっちのスイーツとか良いんじゃない?」
「こっちも良い」
「見てください! これ金賞取ってますよ! 美味しそうです~」
目の前で三人の少女たちが縦横無尽に駆け回っている。そして俺の前にはどんどんと大量のスイーツが積み上げられていく。無駄にスイーツの出店が多く、更に彼女たちが一人分だけではなく全員分を買ってくるため、俺の分が次から次へと増えていく。
うん、やっぱりあそこでリア様を待っておいた方が良かったかもしれない。あの時、カリンに納得させられた俺の事を今ではぶん殴りたい気持ちにすらなっている。
「いや~、全部美味しそうだね~」
「あ、ああ」
「そこの席で食べちゃいましょうか」
「そ、そうだな」
スイーツの皿が山積みにされたプレートを持ってガウシアが言う席へと座る。い、今から俺はこれを食べるのか。ていうかこいつらって俺と合流する前からスイーツ食べてたよな? 普通、違う所回ろうとかしないか? って思ったが、それはリアとも回りたいでしょと返されてしまい何も言う事が出来なかった。
「やはりこのケーキは美味しいですね。流石、あのヤミーで金賞を取っているだけあります」
「有名?」
「有名ですとも。我がゼルン王国が主催ですからね。アマチュア部門ですけど、それでもかなりの腕の方々が集う大会なんですよ」
「へえ、知らなかった」
「確かにそのケーキも甘くておいしいけど、このフルーツパイは酸味もあって美味しいよ」
「私はこれが好み。ナッツが入ってて良いアクセント」
目の前で繰り広げられるスイーツ論争を眺めながらスイーツを頬張っていく。流石はメルディン王立学園で出店しているだけあってどれもクオリティが高い。それこそゼルン王国で食べたスイーツ店と比べて遜色ないくらいには美味しい。
でもこの量だぜ? 一度飯を食べ終わった身からすれば、今は大丈夫でも後に地獄を見るであろうことは予想がつく。
「よし、食べるか!」
♢
「うん、やっぱりお腹いっぱいだ」
俺の能力は消費が激しいため、ある程度までなら消化は早い。しかし、そのある程度という量を既に超越した品目の数々に俺の胃袋はノックアウトされてしまっていたのだ。
「ほら、クロノ。もう少しで美少女コンテスト始まっちゃうよ」
「うん、分かってる。分かってるけど走ったら吐きそうなんだ」
「……クロノって少食?」
「いや、おめーらが食い過ぎなんだよ」
ライカの言葉を即座に否定する。流石に俺の方が異常なわけがない。どう考えても10人前以上はあったし、それを全部平らげてもなお腹いっぱいになっていない奴等の方がおかしい。
「クロノさん、私も結構お腹いっぱいですし大丈夫ですよ」
「ガウシア、それは何の励ましだ?」
よく分からないガウシアの励ましを背に受けながら美少女コンテストをやる会場へと到着する。会場ではかなりの人でごった返しており、整理券が配られていた。
「私達、入れるかな?」
「どうだろう」
そんな不安を抱く中で「出場者関係者の方々」という看板を見かける。もしかしてと思い、そこに行く。
「すみません。今回、コンテストに参加されるリア様の付き人なんですけど」
「あっ、私達はそのお友達です」
「リア様、リア様。あー! リーンフィリアさんの事ですね。お名前を伺ってもよろしいですか?」
そう言われた俺達は順繰りに名前を言っていく。コミュニティカードに耳を当てている女性スタッフが何かを確認したのちにうん、と頷く。
「はい、確かにリーンフィリアさんの関係者さんですね~。では関係者席までご案内いたしますのでどうぞこちらへ」
そう言って俺達は関係者席とやらへと連れていかれるのであった。
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