第200話 学園祭当日

 あれから2週間が経過し、本日が学園祭初日である。劇の熟達具合も丁度良いものとなっており、後は本番直前のリハのみ。そして、今俺達は入学式の時と同じホールに居る。普段は教室に集まっているが、学園祭の日はここで集合するらしい。


「では、生徒会長のセシルさん。開催の挨拶をお願いします」


 メルディン王立学園学長のレイディ先生がそう言ってマイクをセシル会長に手渡す。そういえばずいぶん久しぶりに会長の姿を見たな。闘神祭以降会っていなかったから懐かしく感じる。


「ご紹介にあずかりました。三年Sクラス、セシル・グラスバーンです。まず最初に先生方。今回、学園祭を開いていただいたこと心より感謝いたします」


 そう言うとセシル会長は真っすぐ前を向いて頭を下げる。そして再度、頭を上げてこう続ける。


「改めましてこれよりメルディン王立学園第百回の開催をここに宣言いたします!」


 その瞬間、生徒たちの雄たけびが会場中に響き渡るのであった。



 ♢



「始まったわね」


 学園内の吹き抜けを2階の廊下から見下ろしていると、凄い数の観覧者たちが押し寄せてくるのが分かる。久しぶりに開催したのもあってか、聞いていたよりも多くの人が来ている気がする。


 今回、魔神教団の脅威もあって、入れる人はレイディ学長の判が押された学園入場のための紹介状が無ければ入れないようになっているわけだが、そもそも裏ルートで手に入れることもできるわけで。本当に安全かどうかはまだ分からない。


 まあ、紹介状に判子を押す際にレイディ学長が生徒一人ずつ記録しているため、いざとなったらそこからあぶりだされるわけだが。


「とは言っても私達は演劇まで暇なのよね~」


「ですね」


「どうする? 屋台にでも行く?」


「ありね」


 カリンの提案にリア様が賛同なさって俺達は屋台を目指すことにする。メルディン学園祭には三年生が経営している屋台というものがあり、そこでは流石トップ校と言わざるを得ない程高い技術力を使った料理の数々が提供されている。屋台というか、どちらかというとレストランに近いかもしれないな。


 一応、食べるスペースもあるらしいし。


「何を食べに行きますか?」


「どこも多そう」


 ライカの言う通り屋台エリアでは校舎内よりも更に人が多い。昼飯時になればもっと増えるであろうことを考えると恐ろしいものがあるな。


「並ぶ時間とか考えたら自分の好きな物を食べに行く人で分かれた方が良いわね」


「だね~。他の所も見に行くって考えたら流石に全部回ってる時間はないし」


 そうして結局、リア様と俺、カリンとガウシアとライカの二組に分かれることとなる。リア様と俺は食事派、後の三人はスイーツ派で分かれることとなった。


「じゃあまた校舎内回るときに集まろうね~」


 そう言って三人が離れていく。


「私達も行きましょうか」


「はい」


 奇しくもリア様と二人きりになれたわけだ。この時間を思う存分に楽しむぞ。三人の向かったスイーツエリアとは反対方向に主食と呼べるものの屋台が並んでいる。そちらはスイーツエリアと比べて少し空いていたため、俺達はすんなりと店内に入ることができた。


「お待たせいたしました。グランシュリンプパスタでございます」


 丸いテーブルの上に同じパスタが二つ置かれる。ここは学園内でも特に有名なパスタ屋台である。何と、ココの学生であれば無料という中々に太っ腹なシステムを利用して、その旨味を体験することができるのだ。素晴らしい。


「あなたってホント、海鮮系好きよね」


「そういえばそうですね。特に意識したことは無いのですが」


 リア様にそう言われて、自分が海鮮料理を選ぶことが多いのに気が付く。単純に肉は内陸でも食べれる上、公爵家に拾われる前にも食べていたのに対して海鮮系はリア様や公爵様に連れていってもらう時にしか食べられなくて珍しいから頼んでいた気はする。


「まあ、肉も好きですけどね」


 そう言いながらパスタを口に運んでいく。うん、旨い。


「美味しいわね。評判なだけあるわ」


「ですね。この繊細な舌触りといい、エビのプリプリ感と言い最高に美味です」


 それでいて生臭くはなく、クリームも良く絡んでいる。それもエビはよくある小型のむき身ではなくちゃんと高級感が伝わる歯ごたえがある。


 美味い。流石はメルディン王立学園。これが食べられただけでも来てよかったと思えるほどだ。


 そうしてリア様と俺は一瞬にしてパスタを平らげて、店を出る。


「さて、次はどこに行きましょうか」


 そうやって周りを見ていると、目の前にささっと数名の生徒が出てくる。


「あの~、すみません。少しよろしいでしょうか?」 

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