第199話 練習の続き
「昨日、あの後どうしてたの?」
Eクラスの学園祭での出し物の手伝いを終えた次の日、教室でリア様にそう問いかけられる。
「Eクラスの人達に少し力を見せて欲しいと言われまして」
「力ってあの!?」
「流石に全ては見せていませんよ? 選考試合の時に見せた程度のものです」
流石に黒の執行者の状態までは見せていない。別にバレてもいいやというのはしょうがない状況に陥った時だけの話であり、わざわざ自分から正体を明かすだとかそんなことはしない。厄介ごとに巻き込まれるのは火を見るよりも明らかだし。
「今日は魔神の役割もあるらしいからね」
「良かったです」
ここ数日間、ずっと学園祭の準備として演劇をしてきている我がクラス。あと2週間は切っているのだろうか? 俺達演者側よりも小道具や大道具担当の方が大変そうだ。
「私が倒してやる」
「いや、ライカ。お前はこっち側だ」
相変わらずライカは無表情で変なことを言ってくる。やはり多少の感情の起伏が無い限り、表情には出ないからこれが冗談なのか本気なのか分かりづらい。
「急ピッチで作る分、セットが壊れないか心配ですよね」
「それもそうだね~。まあ最悪クロノだったら何とでもなると思うけど」
「別にカリンでもなんとかなるだろ」
何故俺に限定するのか。ていうかSクラスの面々であれば怪我をする心配はないだろう。
「やあやあ、君たち。何の話をしているんだい?」
5人で話しているところに演劇を取り仕切っているクリスが来る。こいつが自発的に来るときは何かしら用事があるときだけだ。
「大道具が落ちてきたら大変ってお話です」
「ああ、それなら大丈夫さ。大道具担当の人に物を強化する能力に長けている人が居るからね。よっぽどじゃなければ危ないことはないと思うよ」
よっぽどのことが起きなければ、ね。物を強化するってことは通常よりも硬くなっている可能性があるから危ないんじゃないか? ま、まあよっぽどじゃなければ崩れないんだし大丈夫か。
「それよりさ、聞いたかい? 我等がSクラスの演劇は3日間開催される学園祭の最終日に行われるらしいんだ。それも午後の大トリだよ」
「ホント?」
「本当さ。生徒会での話し合いでそうなったのさ。一応、今回の学園祭は生徒会が運営するからね」
「どうしてそうなったのでしょう? 普通なら一年生は初日に発表することが多いと聞きましたが」
「今回の一年生は豊作だからね。特に君たち、上級生を抜いて闘神祭に出場しただろう? そんな素晴らしい能力を持っている人たちは是非に最終日の一番注目が集める時に開くべきだと結論付けられたのさ」
これ自分で言っていて恥ずかしくないのだろうか? 絶対にクリスにも向けられた言葉だと思うんだが。
「それを伝えに来たのさ。一応ここにはヒロインと魔神が居るわけだしね。それじゃ」
そう言ってクリスは俺達の下から離れていく。
「大トリなんですね。なんだか急に緊張してきてしまいました」
「大トリ、我もトリ。フフッ、フフフフ」
なんか日に日に世界樹の様子がおかしくなっている気がする。ガウシアもそれに慣れてきたのか今の言葉を何の違和感もなくスルーしている。
♢
「くっ、勇者め。貴様などこの一撃で」
稽古場で出せてかつ迫力のある破壊の力を溜める。放出するわけではないため、傷つけることはないが、一応威力を抑えたまま。
「このまま終わらせる! アイシクルソード!」
氷でできた剣でジオンが俺に斬りかかる。体に触れる前にその氷は先端から消えていき、それに合わせて俺はうめき声を上げながら後ろへと吹き飛んでいく。
「ライデン様!」
「グレシア」
魔神を見事封印した勇者と姫様はそのまま愛を誓うのでした。チャンチャン。
「はい、オッケー! 大枠はこれで良いから後はこれを本番までに仕上げていこう」
そうしてその日の練習は終わるのであった。
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