第13章
第169話 魔神教団の本拠地
グランミリタール帝国にて、またもや各国の首脳達が集い、会議を開いている。魔神教団を『世界の敵』と認定してから都度、国家間でやり取りをしているのだ。
「それでハミルトン殿。此度の会合は如何なる理由で招集なさったのか?」
主催者であるグランミリタールの皇帝、ハミルトン・ドゥ・グランミリタールに冒険者の国バルキメデスの王、カイザー・バルキメデスが問う。
「うむ。その件についてなのだが……ガイアス殿。話していただけるか?」
「承知した」
ハミルトンに声をかけられたメルディン王国、国王のガイアス・ディ・メルディンが話し始める。
「私の下に魔神教団に関する重要な情報が入った。長らく見つからなかった魔神教団の本拠地の場所が判明したのだ」
ガイアスのその衝撃的な発言に一同がざわめく。それもそのはず、魔神教団の本拠地は今までどの諜報機関がどれだけの勢力を投入しても見つけることが出来なかったのだから。
「一体どのようにして見つけたというのだ?」
「それについては控えさせてもらう。ただ、確かな筋からの情報だとは言っておこう」
他の王の問いかけにガイアスはそう応じる。しかし、この場の多くの者が今の一言でどの組織が絡んでいるのかはということ勘づいているだろう。それ以上、ガイアスに問いかける者は一人も現れなかった。
「私もガイアス殿からこの話を伺ってね。早速、我らの手を合わせて魔神教団本拠地へと乗り込む連合軍を結成したいわけだが」
「それについては私が率先して行おう。私ならば冒険者たちから志願兵を募ることもできる」
「私も手伝おう。もとはと言えば今、魔神教団に与しているエルザードの者どもは私の配下であった。その贖罪の意も込めて」
「うむ。メルディン王国が加わってくれるとありがたいな。貴君の下には優秀な生徒たちがいらっしゃるゆえに」
メルディン王立学園と言えば第一帝国学園と並び世界で名を馳せる超優秀校だ。そこの教師陣が皆優秀であることは言うまでもない。そうしたところから戦力をひねり出すことができると考えたカイザーはガイアスの提案を快く受け入れる。
「他の国でも自国の兵士から志願兵を募っておいてくれ。進捗次第で決行するゆえ準備はしておいてほしい。それでは」
それから各国からどれほどの戦力を集められるか、物資補給が出来るかを確認したのちに会議は終わる。国家レベルでの魔神教団殲滅が始まろうとしていた。
♢
「皆、久しぶり!」
長期休暇明け、俺達は学生寮へと戻り、休暇前と変わらず学校へと向かっていた。
「お久しぶりです。海ぶりですね」
「久しぶり、リア、カリン。それとクロノ」
教室へ着くと、先に着席していたライカとガウシアからリアさんの挨拶に対してそう返事がくる。
「「久しぶり」」
俺とカリンも二人にそう返し、俺はリア様の隣の席へ、カリンは俺の隣の席へ腰掛ける。教室を見渡した感じ、クリスやジオンはまだ到着していないようだ。
「そういえばガウシアってもうゼルン王国に居ても体調を崩さないようになったんでしょ? 戻りはしないの?」
「戻りませんよ。だってせっかくこちらでお友達がたくさんできたのですから。それにまだ黒の執行者様のお姿を拝見しておりませんからね」
まだそんなことを考えてたのかよ。一瞬、ヒヤッとしたわ。
「黒の執行者ね~?」
「何だ?」
「別に~?」
カリンがわざとらしく俺に話題を振ってくる。だが、俺はそれを華麗にパスする。残念だったな。こういうのは今までも経験してるから慣れっこなんだよ。
「そう言えば闘神祭って結局どうなったのでしょうか? 優勝が決まる一歩手前で中止になってしまいましたし」
「決勝戦だけやるかそれともこのまま今年は無しになるかどっちかじゃない? 最近は特に魔神教団の動きも不穏だし」
「私もそう思う」
「ですよね~。はあ。黒の執行者様の鎧、欲しかったですのに」
いや要らんだろ。というかリア様達の話題でも上がっているように最近、学生たちに限らずどの人も新しく「世界の敵」に認定された魔神教団の話題で一杯だ。ただ、魔神の時よりもどこか警戒心は希薄な気がする。自分たちに実害がないからだろう。
それにまだ国家レベルの規模という訳ではない。いや、戦力で言えば既に国家レベルではあるが、所属している人員がそこまで多くないため、軽く見られがちなのである。
「どうしたのかな? 何だか廊下が騒がしいよ?」
「本当ね。どうしたんだろ」
カリンの言葉で俺もその異変に気が付く。やけにざわざわしている気がする。かと思えばバンと勢いよく扉が開き、Sクラスの男子生徒が興奮気味の顔で一枚の紙きれを持ちながら教室へ入ってくる。
「Sクラスの皆! これに志願しないか!?」
そういって見せられたのは魔神教団殲滅隊とでかでかと書かれた一枚の白い紙であった。
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