第166話 鉱石の謎
宿、とはいっても公爵家の別荘であるため完全に貴族が暮らす屋敷だが、その一室で俺はカリンからもらった透明な鉱石を調べていた。厳密に調べるには機器が足りないため、割ってみたり、叩いてみたり、力を入れてみたりして試していた。
そうやって調べた結果だが予想通りこの鉱石はファーブルさんが言っていたあの透明な石、ガイアであった。それもかなり高純度に保たれており、普通のガイアよりも遥かに強固で遥かに能力をその鉱石内に蓄えることができる。
「こいつは凄い」
俺が預かっている透明な剣に使われているガイアは、一見すると透明で純度が高いものだと思っていたが、遺跡内で見つけたこのガイアこそがもしかすれば本当に純度が100%のガイアなのかもしれない。
この鉱石で武具を作ることが出来れば確かに世界最強の武具だな。
「ただ問題は工房が無いことだな」
一度公爵様に工房を貸してほしいと頼んだことがあるのだが、設備が不十分であったためガイアを扱うのには適していない。というかファーブルさんの工房くらいに設備が整っているところじゃないと……。
そこまで考えてふと思い出す。
「そういえばあの遺物にファーブルさんと全く同じ工房があったような……」
「何ぶつくさ言ってる?」
突然後ろから声をかけられてガバッと後ろを振り返る。
「何だ、ライカか。驚かすなよ」
「だって話しかけても返事しないから」
「話しかけていたのか。それはすまなかったな。少しこの鉱石に見覚えがあったから熱中していたのかもしれない」
「遺跡の奴?」
「ああ。これを使えばリア様の武具が作れるかもしれないと思ってな。そうだ。ライカもこの際、何か作ろうか? とは言っても素材が足りないだろうから強化だけになるだろうけど」
リア様の剣を強化されるだけではこの鉱石は使い切れないと思った俺はライカにそう提案する。俺自身は武具を使わないくせに武具を作るのは好きなんだ。
「良いの?」
「良いさ。どうせ素材余るし」
「ちょっと待ってて。取ってくる」
そう言ってライカは部屋の外へと出ていく。ていうか結局あいつの元々の目的は何だったんだよ。
「カリンにも聞いてみるか。流石にガウシアは一からの製作ってなるだろうから素材が足りなくて無理だろうけど」
そうしてコミュニティカードでカリンと連絡を取った後に、工房へと向かうべく持ってきておいた工具と荷物をまとめて出かける準備をするのであった。
♢
「でなんでこんなにギャラリーが増えてるんだ?」
ライカ達を待つために砂浜で待っているとライカとカリンの他にリア様やガウシアまでもが待ち合わせ場所に現れる。
「クロノの武具を作ってるところ見たことがなかったから見学的な?」
「私が教えた」
「ライカ、お前の仕業か」
「私達が来るの不味かった?」
「いえ、別に嫌というわけではないんですけど、せめて部屋の外で待っておいてくださいね? 工房の中に入ると危ないので」
「え~見れないの?」
カリンが不服そうに言うが、意地悪という訳ではなくこれにはちゃんとした理由がある。
「そうだな。基本的に形を作るまでは大丈夫なんだが、それを武具にするために少し力を使う。その時に他に人が居たら怪我をさせるかもしれないとかって気が散るだろ? だから良いものが打てないんだ」
力を使った際に周りの人に危害を加えるかもしれない。そんな邪念が入った状態では良い武具など作れはしない。
「というかガウシアも武具を持っていたんだな。意外だ」
ガウシアが手に持つ一振りの剣を見て俺は少し驚く。戦闘中も普段も着けている様子が無かったからてっきり持っていないものだと思っていた。
「あっこれ私の物じゃありませんよ? ヘルミーネが腰に差していた物を持ってきただけです」
「なら本人も連れてきてやれよ」
あまりの衝撃さに思わずツッコミが入ってしまう。
「そうしたかったんですけど、騎士さんたちと一緒に訓練だと言って飛び出してしまいましたので」
「ちゃんと許可はとったのか?」
「もちろんです。書置きはしておきましたので」
なるほどなるほど書置きしたなら良いなじゃねえよ。
「とってねえじゃねえか」
「大丈夫ですよ。別に家宝の剣とかそういうのではなく販売されていたものを購入しただけですので」
これ以上言っても変わらないなと思った俺は渋々ガウシアから剣を受け取る。まあヘルミーネはガウシアの言う事なら何でも聞きそうだし大丈夫か。
こうして予想以上に多くの人員を連れながら夜の海へと潜っていくのであった。
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