第114話 決勝戦
『それではいよいよ決勝戦に移りたいと思います! メルディン王立学園対第一帝国学園の試合です! 皆様、一度ステージへとお上がりください!』
今までとは違い、決勝戦は最初に互いの生徒同士が握手を交わすらしい。
「やる気、出てきた」
早くも臨戦態勢に入ったのか白い髪の毛を逆立て始めるライカさん。お願いだから試合前に相手に怪我を負わせるとかやめてくれよ。
そう思いながらも本日2回目のステージへと上がる。すると、観客の熱気は今までにないくらい、まさに最高潮といった様子で耳が割れるほどの歓声が響き渡る。
「改めて思うけれど、凄いわね」
「ええ。なにせこの闘神祭は全世界から注目を集めてますからね」
「きっと皆さま、魔神族との戦いでの疲弊が残っていらっしゃるのです。私達も気合を入れて頑張りたいですね」
「そう。気合い」
ライカの場合はあまり気合を入れないでほしいんだがな。一応、ハンデとして雷による身体強化しか許されてないんだから。
「うわ~、こんなの見ちゃったら私、緊張してきちゃったな~。大丈夫かしら?」
セシル会長がそう言うのも無理はない。今までは各学園に注目が分散されていたのに対して今はたったの二校に集中してるからな。
そうしてステージの真ん中に二学園の生徒たちが集結する。
「これはこれは私の麗しいリアじゃあないか」
うわ、そういえばあの婚約者を気取ってる変態王子も居るんだった。
「リアって呼ぶのやめてもらえるかしら? 正直言って気持ち悪いわ」
「君が何と言おうと僕の婚約者なのは変わらないからね。僕がそう思っている限り」
気味の悪い笑みを浮かべるクレスト。あいつにだけはリア様の手を握らせてはいけないな。
「ライカ」
「やだ、あれ無理」
「ガウシア」
「私も嫌です」
「……セシル会長」
「正直言ってしまって悪いけど私も無理かな~」
うん、皆に嫌われてるわねあの皇子。俺も全然嫌だったがあの皇子の握手の相手は俺に決定だな。
「うちのクレストがすまないな」
「なっ!? すまないとは何ですか! 兄上!」
「そのままの意味だ。うちのクレストが
「くっ、分かったよ、兄上」
不服そうにするも引き下がるクレスト。アレス皇子もあんなのが身内で可哀想だな。
そうしてリア様はアレス皇子、俺がクレスト皇子と握手をし、ステージから降りていく。クレストからは憎しみの籠った目で睨みつけられた。
関わりが短い相手に対してあんな態度を取れるのは王室でぬくぬくと育ったからだろうか?
「そういえば決勝だけ順番は先に決めなくて良いから今決めるんだけど一番手はどうする?」
ステージから控えへと戻りさっそくセシル会長が問いかける。
「私」
すると真っ先にライカから手が挙がる。ここまで我慢してきた分思い切り発散したいのだろう。
「分かった。後、二番手以降はその時々で決めるからね」
セシル会長がそう言い切った直後にアナウンスが流れ始める。
『それでは両校1試合目の選手はステージへとお上がりください』
「行ってくる」
「頑張ってください!」
「ああ、応援されているガウシア様。素敵です」
「頑張れよ」
言いつつ、今なにかおかしな声が入ったような……
「ってなんでここに居るのですか!? ヘルミーネ!」
ガウシアの横には先程戦ったアルラウネ学院のヘルミーネ・アーレントが居たのだ。全くだれも気付いていなかったんだが。
「私の試合はもうありませんし別に良いじゃありませんか」
「ま、まあ良いですけれど」
さっきまであんな態度だったくせに。
そう思っていると、ヘルミーネからジロリと睨みつけられる。
「何か妙な事でもお考えになられました?」
「い、いや?」
「なら良いですが」
何この子、怖いんだけど。
「まあまあ。そんなことよりもライカちゃんの応援をしましょ。相手は誰かしらねー」
セシル会長の言葉にそれもそうだと思い、ステージ上を見る。ん? あれは。
「クレスト皇子ですか。最初から飛ばしてますね」
ヘルミーネの言う通り、ステージの上にはあのクレストが居たのだ。1試合目から出てくるのは予想外だったが。
「まあこっちも初手にSランク冒険者を出してるんだ。お互い様だろうな」
「え!? Sランク冒険者ですって!?」
「ん? ああ、そうか。普段の姿からはちょっとわかりにくいが、ライカは別名『
俺の言葉を聞き、ヘルミーネは頭を抱える。
「いったい今年のメルディン王立学園はどうなっているのですか。粒揃いすぎです。普通なのってクロノさんだけじゃないですか」
「はは、そういうことになるな」
何か言いたそうにしているリア様をアイコンタクトだけで抑えてもらい、そう告げる。
別に俺がどう思われようがどうでもいいからな。
『それでは只今よりライカ選手対クレスト・ドゥ・グランミリタール選手の試合を始めます! 始め!』
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