第22話 グラン副会長
学食から帰ると、教室の前に先程リア様を生徒会に誘ってきたグラン副会長が壁に背を預けて立っている。
「リーンフィリア様、そろそろ生徒会に入ることをお決めになりましたか?」
リア様の姿を見つけると、すぐに近寄ってきて手を差し伸べる。
しかし、余りにも急ではないだろうか。ついさっき誘ったばかりだろうに。
案の定、リア様もお困りになられている様子だ。
「中々、生徒会室にいらっしゃらなくて心配していたのですよ」
「え、えと、私はまだ生徒会に入るかは決めてなくて……」
「ああ、まだ迷っておられたのですか。それは申し訳ありません、少し焦りすぎました」
そう言うと、手を引いて副会長は歩いていく。
ドンッ。
「ああ、すまない。見ていなかったよ」
グラン副会長は何故だか俺に肩をぶつけてスタスタと歩いていく。謝る時も一切俺の方を向かない。
別に痛くはないが、何のつもりだろうか?
明らかに俺に悪意を持ってぶつけたとしか思えない程の距離感であった。
「何、あいつ。腹立つ」
「今のは明らかに悪意がありました」
ライカとガウシアがグラン副会長の俺に対する言動に腹を立ててくれる。リア様も少し眉根を寄せていらっしゃる。
「良いよ。別に気にしてないから」
大方、平民に対する悪意だろう。それも尊敬するリア様の隣にいつもいる平民の俺の存在が煩わしいという感じの。
リア様の付き人をやっていると少なからず感じられるものだ。学園に入ってからもそういう視線で見られることはある。
未だ不快感に顔を歪めている3人を促して教室の中に入る。一々ああいうのに目くじらを立てていたらきりがない。
♢
「決めた。私、生徒会に入らない」
授業終わり、帰りの用意をしていると、突然リア様がそう言う。
「ど、どうしたのですか?いきなり」
本当に何の脈絡もなくおっしゃられたため、ガウシアも驚いている。
「生徒会に入らないって決めたの」
「それは聞きましたけど……」
どうしましょう、とガウシアが俺の方を見つめる。
「まあ、リア様がそう決めたのならそれで良いのではないでしょうか」
俺にリア様にどうこう言う権利は無い。リア様が生徒会に入るメリットも感じられないし、嫌なら無理に入らなくても良いと思う。
「それは昼休みのことがあったから?」
ライカの言葉を聞くと、リア様はこくりと頷く。
「あんな態度を取る人が一緒でうまくやれる自信が無いわ」
はっきりと言い切るリア様。その言葉の節々にはグラン副会長に対する不快感が漂ってきた。
そうして俺達がガラッと教室の扉を開くと、すぐ前の廊下に件の男が立っていた。グラン副会長である。
「お疲れ様です、リーンフィリア様。もう御心はお決まりになりましたか?」
昼休みに聞いたばかりだというのにしつこい男だ。昼休みの俺に対する態度が無くても多分嫌われてるぞ。
「はい。決まりました」
「それは良かったです。それでは早速生徒会室の方へ……」
「いえ、生徒会に入ることを決めたのではありません」
リア様がグラン副会長の差し出す手を拒み、そうおっしゃると、グラン副会長の動きが固まる。
「そ、それはどういうことでしょうか?」
「率直に言います。私は生徒会のお誘いをお断りいたします」
はっきりと告げるリア様。それを有り得ないという顔でグラン副会長が見つめる。
そしてキッと鷹のような目で睨みつける。睨みつけたのはリア様に対してではない。ガウシアに対してでも、ライカに対してでも無い。
その鋭い眼光は真っ直ぐに俺を捉えていた。
「貴様だな? 貴様のせいだな?」
「は?」
突然向けられたグラン副会長の憎悪に俺は首を傾げるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます