ストライク~青春宣言委員会~
伊藤勝正
第1話
二〇六〇年にも人間の営みは存在している。デジタル技術を発展させた人間たちの動きは変わらずアナログ的なものである。
「私が御社を志望した理由は」
人間界には相変わらずと言っていいほど就職活動という儀式がある。AIが発展した今、就職活動でより良い人材を判断するのはAIの方が良いに決まっている。そんな声が後を絶たないが、未だに人間が人間を見ている風習は変わらない。
「ストライクファミリーは日本のより良い発展を目指しています!」
社長の大野友孝は毎年の様に日本国民全員にそう言い放った。残念ながら、古き良き昔の日本国はこの世に存在しない。
全てはストライクファミリー株式会社の傘下にあるのだから。全てはAIが下した未来なのだから。
伊藤勝正。
*
「大野社長。本日の会議で決まった来年度の新入社員です」
「ありがとう」
我々が作ったAIは完璧だ。就職活動の時期になるとつくづくそう思う。
「今年もバレる事は無かったですね」
部下の元原はそう言った。私は「もちろんさ」笑って見せた。
「まさか面接官がAIだなんて思ってもなかろう」
「再来年頃にはリリース出来そうですね」
「ストライクファミリーはこれで十五期連続の黒字間違いなしだ」
日本国を傘下に置いた今、我々が法律を作り、我々がシステムを構築してきた。今まで世論の反対が多かった面接官のAI化は、我々も気にかけていた。
「弊社の面接官は実は三年前からアンドロイドでした。なんて言ったら、国民はどう思うかな」
私が元原に問うと、元原は笑みを浮かべながら口を開いた。
「反対派と賛成派で大討論会が開かれるでしょうね」
「その時はマスコミに沈静化するよう情報を流して貰えばいいさ」
「いつも通り、プランBで沈静化を行うつもりですので」
「うむ」
AIによって統制された未来を夢見ていた私は、四十代になった今夢を叶えた。これから先の日本の未来はAIによってデザインされる。
私の名は、ストライクファミリー株式会社代表取締役社長「大野友孝」だ。
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