眼鏡を落とすと俳優になれるらしい
あぶらあげ
第1話 冴えない男
俺の名前は武田峻輝、高校2年生だ。丸ふち眼鏡をかけた、まあいわゆるボッチだ。学校の成績は優秀だが、運動はできない、もちろん彼女もいないし童貞である、そんなありきたりな男だ。
まあこんな自己紹介はおいといて、今俺は超非常事態なのだ。どんな状況か?そう、それは、
遅刻しそうなのだ!
この状況、遅刻常習犯だったら急がないだろう。しかし俺は小学校から今まで一度も遅刻したことがない。それなのに遅刻するということは一つのアイデンティティを失うことを意味する。遅刻しても一緒に笑う友達はいないが、俺は遅刻するわけには行かない。目の前には乗らなきゃいけないバスが到着している。俺はあのバスに乗らなければならないのだ。
走ったせいで眼鏡が落ちてしまった。しかし俺には眼鏡よりも大切なものがある。後で母ちゃんには怒られるだろうが無視して走る。
しかし無常にもバスが走り出してしまった。
「うそだろ〜」
膝から崩れ落ちた俺に1人の男性が話しかけてきた。
「あの、眼鏡落としましたよ」
「あ、ありがとうございます」
そういって次のバスを待とうとする。まあどうせ遅刻だが
するとその男性が声をかけてきた。
「すいません、少しお時間よろしいですか?」
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