第四十六話「大天使ユダ」
帝国首都、帝城前
ジンたちはアーサーや各都市長の報告を受けていた。
「ルイン様、敵方魔術師隊を殲滅」
「アーサー様、敵方騎士団の団長を撃破。他騎士団員の保護を要請しています。騎士団は天使に操られていたそうです」
「アポロン様、天使を1人撃破」
ジンの元にいた騎士たちが報告を受け、再びジンへ報告する。
「ルインとアポロンに関しては了解した。お疲れ、と伝えておいてくれ。アーサーに関しては一度敵方騎士団員を拘束の後詳しいことを聞こうと伝えてくれ」
「「「承知しました」」」
そして、騎士団が都市長らに報告をしようとしたその時。
「ッ!!総員戦闘態勢!!!」
アーサーの補佐官であるランスロットが叫んだ。
全員の視線の先には優雅に上空から降り立つユダがいた。
「先程ぶりですね、ジン様」
「何をしに来たのかな?」
そう話しているうちに、ランスロット達がユダを包囲しようとジリジリ動く。
「あなたをお迎えに来たのです」
「君に迎えられる理由がないな」
「私にはあるのです」
ランスロット達はユダを完全に包囲する。
「それを僕が拒否したらどうするのかな?」
「力尽くで連れて行かせていただきます」
「それじゃあ、僕は力尽くで情報をもらおうか」
ジンが言い終えた瞬間、ランスロット達騎士団は言葉もなくユダに襲いかかる。
しかし、その攻撃は全て当たらなかった。
「転移で避けたか」
ユダは上空で翼をはためかせている。
「私と一対一で戦いませんか?」
「いけませんジン様!ここは私たちにお任せください!」
ランスロットが割り込むように叫び、攻撃を開始しようとするがジンに抑えられる。
「大丈夫だよ、ランスロット。少し遊ぶだけさ。もしもの時は助けてね、信頼してるからさ」
ジンは笑顔でランスロットに言うと、ランスロットは少し顔を赤らめて言う。
「は…はい」
「ということで、始めようか」
「お手柔らかにお願いします」
ユダが両手でスカートの裾を軽く持ち上げ礼をして戦いの火蓋が切られた。
*
「第五階梯多重詠唱・
ユダの周辺に術式が複数浮かび上がり純白の槍が飛翔する。
しかし、ジンはことごとく剣を操りそれを防ぎ切り替えして攻撃する。ユダは攻撃をなるべく迎撃するがジンの猛攻により度々短距離転移を行い避ける。
(流石に辛いわね。何百もの剣を浮遊させ操るなんて規格外にも程があるわ。しかも、ど剣も特級や超級の業物。攻防共に完璧。私は押されるばかりでこのままでは負ける。…どう切り崩そうかしらね)
と思考しつつユダは冷静に対処する、負った傷も深くはない。鮮やかに飛翔しながら剣を避ける。
ジンは浮遊魔術で上空に止まったままピクリとも動いていない。
「完全に私のことを舐めてるわね」
ユダが苦笑まじりに呟く。
「弾かれるなら吹き飛ばすだけよ!第五階梯強化詠唱・
ジンを覆うような光線が放たれた。
「第六階梯・
ジンの術式によって
「な!?」
ユダは驚愕して回避行動を取るが
「うっ!!!」
翼の一部が焼け焦げた。
翼は魔術での飛行能力向上させるだけなので落ちはしないが、痛みと疲れでユダの額から汗が流れる。
「やはり、一筋縄ではいきませんね」
いまだにジンの周辺には数百もの剣が浮遊している。
「そういう君もこれで終わりではないだろ?」
「えぇ当然です。ここからは本気で行かせていただきます」
そして、さらに激しいジンの攻撃が始まった。先程までは剣を攻撃と防御に分けていたが、全てを攻撃に回した。
ユダはそれを全力飛翔で避ける、剣が何度も掠るが逃げる。そして、詠唱を紡ぐ。
「逃げてるだけじゃ勝てないよ」
逃げ続けるユダに向かってジンが話す。
「そんなことを言っていられるのも今のうちですわ。私の魔術が完成したのですもの」
ユダがピタリと空中で止まる。
ジンは止まったユダに向けて全ての剣先を向ける。全ての剣がユダに向けて放射された。
「第六階梯・空転領域」
その瞬間ユダはその場から消え、剣は空を切る。
ジンは見上げる。先程までユダがいた場所の上空にユダはいた。ジンを上から見下ろしている。
「その転移が君の本気なのかな?」
「いえいえ、転移など先ほどもしていたではないですか。この魔術は先程までのものとは別物です」
「それで戦況が変わるかな?」
ジンは会話をしながらユダの周辺360度全てに剣を配置していた。
「全方位攻撃を転移でかわすか?魔術の予備動作が起きた時点で転移予測をして殺せるけど…どうする?」
ブォッ!!
風を切る音と共に全ての剣が放たれた。
しかし、ユダは動かない。転移もしない。
全ての剣がユダに当たりそうになった。その瞬間、剣が全て消えた。
ジンが驚いていると、剣はジンの360度全方向に現れて物凄い速さで飛翔してきた。それをジンはスレスレで止めた。
「へぇ…」
ジンは属性別の第五階梯魔術を5つ放つ。しかし、またしても魔術が消えて次はジンの背後から魔術が迫ってくる。ジンは魔術を軽々と避けた。
「どうですか?どんな攻撃も私には当たりません。しかし…」
ユダは魔術で作り出したナイフを投げる。
ジンは避けない。ナイフはジンの頬に小さな傷をつけただけだった。
「私の攻撃は当たるし傷をつけます。あなた様はどうしますか?」
ジンは魔術で浮かしていた剣を手に取る。
「それなら直接攻撃するまでだ」
剣を構えてユダへと斬りつける。しかし、ユダへと当たるかどうかの瞬間。ジン自身が転移して空振りに終わる。
「無理ですよ。どんな攻撃も私には通用しません」
ジンは剣を捨てる。そして、ジンの周りを浮遊していた剣も霧散して消えた。
「あら?諦めたのですか?」
ジンは黙っている。
「では捕らえさせていただきます。第六階梯・
ジンの体を禍々しい影が這う。
しかし…
「第十階梯・
ジンが魔術を唱えた瞬間、ジンの体を這っていた影が消えた。
「え!?」
ユダは慌てて魔術を発動する
「第七階梯!
覆うような大きな影がジンを襲うが…
「断界」
空間が断たれる。
魔術もユダと共に切断した
「え…なぜ…?私には魔術が当たらないはず…」
ユダは口から血を吹きながら落ちていった。
「魔術を消したのだからくらうのは当たり前だろうに。まぁ消してなくても関係ないけどね」
ユダを倒し、ジンはランスロット達が待つ城下へ戻っていった。
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