四十二話「協定」


部屋中が炎に包まれた後、炎が落ち着くと二箇所だけ炎が避けている場所が現れた。

一つは帝国勢、アーサーの作り出した障壁により守られている。

もう一つはジン達だが、ルインが前に立ちルインから炎が避けるように割れていた。


『消えろ』

ルインの言葉とともに炎が粉々になって消えた。


「無事でしたかサルファ殿?」

皇帝サルファは驚きを隠せていなかったが、すぐに落ち着いてアーサーから目を離した。


「えぇ…ありがとうございます。ジン殿の騎士がいなければ危なかったです」


「それは上々、ではこの状況をどうしましょうか?」


そうこの状況は帝国としては扱いづらい状況であり、自国の防衛戦力は使用できるが皇帝の勘が不穏な空気を察知していた。


「では、相互支援協定を結ばせてほしい。始帝国は我が国の危機的状況での軍事支援。我が国は軍事支援に加え、支援に関する資金は全て我が国が補填しよう」

「陛下!」


ステインがサルファの言葉に驚いて止めようとした。

「黙れステイン!我が国が、民が助かるためには彼らの力が必要だ。先ほどの爆発の方向から相手は我が国の兵器庫を破壊した可能性が高い。そうなると、我が国の民を守ることも難しくなるのだ!」

サルファの言葉に、ステインは黙り込んだ。


「それでは、ジン殿。よろしいですかな?」

サルファの言葉にジンは頷いて立ち上がる

「いいでしょう!本当は正式な文書に起こしたい所ですが可及的速やかに対処しなければならないため、それは後回しにさせていただきます。そのため、この度のお礼は期待させていただきます」

 

サルファはジンの言葉に頷いて

「いいでしょう、楽しみにしていてください」

「では、私はこの件の対処をさせるため失礼する。サルファ殿は貴国の騎士達に民の避難をさせてくれ」

それだけ言ってジンは部屋を出た。


「よかったのですか陛下?まだよくわかってない相手とあんな協定を結んで」

今まで黙っていたというより話せずにいたシュレイがサルファにそう聞いた。

ステインはサルファが決めたことなので黙って従っている。


「いいのだ。まだ属国になったわけでも、同盟を結んだわけでもない。相互の支援を約束しただけで、どちらにも利がある…はずだ。

それにこれから知っていけばどうとでも動ける」

そう言いながらサルファには不安が募っていた。


(そうは言ったものの、今回の件…吉と出るか凶と出るか。もしかしたら帝国は悪魔との契約をしてしまったのかもしれないな)


サルファはシュレイに騎士の指揮を任せて国民の非難を任せたのだった。



         *



ジン達は部屋を出た後、今回の件で一緒に来た都市長とアーサー、騎士達を宿舎の前に集めた。


「今、帝国首都が共生国家の侵攻を受けている。そのため、私達は先ほど帝国と相互支援協定を結んだ。そして、今帝国は危機に瀕している。私たちは協定に則り帝国を支援する。そこで、ルインとアポロン、アーサーの三人に五人の騎士をつけて三つの部隊で行動してもらい共生国家の者達の無力化を頼む。残りの者達は私の護衛だ」


ジンが一歩前に出る。


「新たな情報として共生国家は私たち始帝国を新興国と侮り、私たちの第二都市にも侵攻しているそうだ。あちらはアルトリアがいるから問題はないが、このままで良いはずがない!私たちの始帝国をここまで侮辱した共生国家をねじ伏せてやれ!」


「「「はっ!!」」」


瞬時に三つの部隊は行動を始めた。

共生国家帝国侵攻部隊の制圧が開始されたのだ。

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