第二十九話「雷神」


ネオンテトラ・西方

リーシャと分かれたゼウス


そして、ゼウスと戦うリード


二人の攻防は想像を絶する物だった

既に周りの冒険者は巻き込まれないように離れている。


雷が走ったと思ったら地面から壁が現れ防ぐ

地面が鋭利な形状になりゼウスを襲うが落雷で防ぐ。そして、接近戦はリードがスピードで翻弄するならゼウスは攻撃を防いで重い一撃を繰り出す。


リードはそれを避けて横腹を狙うが腕を掴まれ投げられる。地面に叩きつけられても気を抜けない。ズドォオオンと砂埃を舞わせながらリードは痛みに歯を食いしばって耐えるが、リードを大きな影が覆う。そして、リードは後ろに転がって避ける。居た場所はすでにゼウスの腕が突き刺さっている。


「うわぁバケモンかよ」

ゼウスは腕を引き抜き手の砂をはたく


「いやいや、おぬしもやりおる」

リードはゼウスに褒められても不服そうな態度を取る。


「あんた、本気出してないだろ。そんなあんたに言われてもあたしは嬉しくないね」

そう言いながらリードは近くに落ちていた拳大の石を拾う。

「あたしはね強い奴と戦うことが喜びなんだよ。そして、強くなることもね。そのためなら何だってするさ!」

リードは石を投げ上げ落ちてきた石を殴る。

それによって籠手に込められた魔法が起動し石が鋭利な円錐状の矢となる。


「こんなもの…」

ゼウスが石の矢を手で掴もうとした時


パァァァアアン


と矢が破裂して炸裂弾となる。

「なに!?」

ゼウスは咄嗟に手で防ぐ。そのせいで視線を一瞬離してしまった。

それをリードは逃さない。一度の踏み込みでゼウスの目の前まで届いた力強い踏み込みは地面に大きな足跡を残す。


「おらぁ!!!!」


リードの渾身の一撃はゼウスの腹に直撃し体が少し浮く。そして、リードはパンチの勢いのまま体を一捻りし足を踏み替え左足で蹴り飛ばす。ゼウスの体は吹き飛ぶ


「クソッ!」

リードは怒りを漏らした。リードの二撃目の蹴りはゼウスの腕で防がれており、ダメージがあまり入っていない。


そして、リードは走り出し吹き飛んだゼウスに連撃を与える。ゼウスはただ腕で防ぐだけだ。リードは蹴り上げ、ゼウスは空高く吹き飛ばされる。

リードは追撃として地面を殴り籠手の魔法を発動。地面が槍のように勢いよく飛び出すがゼウスに防がれたのか粉々となる。


リードは落ちてきたゼウスに回し蹴りを繰り出す。

ゼウスは飛ばされるが空中でクルリと体勢を整え着地する。

ただゼウスは黙っている。そして下げていた顔を上げると、その顔は満面の笑みだった。


「ガハハハハ!愉快!愉快!」

「何だよ突然」

ゼウスの突然の爆笑にリードは少したじろいだ。


「おぬしの気持ち、よくわかった!わしも少しばかり本気を出すとしよう」

「そうだよ!そうでなくちゃ!」


リードはゼウスの言葉に笑みをこぼす。

だが、ゼウスの言葉には嘘がある。当然本気など出さない。ゼウスとして本気を出すだけである。


雷人らいじんころも

ゼウスの一言により体に雷を纏う。これはゼウスの独自魔法で段階によって強さが変わる。この《雷人の衣》はその中でも下の方に分類される。


「いいぞいいぞいいぞ!そうでなくちゃ!じゃあ、あたしも奥の手を出すかね!」

そして、リードは両手を地面に突き刺す。


「第五階梯魔術・土精霊の重装」

その魔術を唱えると突き刺した腕に地面から土がまとわりついていく。土はリードの全身を覆うように動き、全身を包む。そして土が蠢き形が形成されていく。


それは、まるで土でできた全身鎧であり。デザインは近未来的なアーマードスーツのようであった。


「さぁ始めるぞ!心昂る戦いを!」


リードは踏み込んだ。地面は抉れ、砂埃が爆発したように舞う。


そして、ゼウスも対抗するように踏み込む、地面は抉れ、瓦礫が舞う。


二人は共に右手で思い切り殴り、ぶつかった


その衝撃は二人を吹き飛ばし、衝撃で家々の窓が割れていく。吹き飛ばされた二人は地面を滑るように着地して睨み合う。


次は蹴りが交差した。

繰り出された拳は双方に当たる

そこからの攻防には誰も近づけなかった


速すぎる拳は目で捉えることができない

ゼウスの猛攻を技で受け流すリードはカウンターを入れるがそれにゼウスも合わせてくる

リードの拳は当たり、ゼウスの拳はリードの頭を掠って頭鎧の一部と共に髪を数本消しとばした。

ゼウスは体勢を崩したリードを見逃さず左手で突きを繰り出す。リードは咄嗟に両手で防ぐが腹部に鈍痛を感じた。左は防いだが右手が腹部を殴っていた。


「離れろ!」

リードは痛みに歯を食いしばりながら態勢を整えるため離れようとゼウスを蹴った。


「楽しいぞ!おっさん!」

「そりゃよかった」


既に肩で息をするリードは満面の笑みを浮かべている。当然、《土精霊の重装》のバイザーによってゼウスからは見えない。


「だけどな、おっさんはまだ本気出してないだろ。余裕が透けて見えるんだよ。今も息を切らしてないしな」

「バレてしまったか」

リードは少し呆れた態度を取る。


「あのな、あたしは高みが知りたいんだ。おっさん…いや、ゼウスの本気の一端でもいいから見せてくれ!」

リードはそう言うと合掌した。


「発動・巨人の大拳」

すると、リードの周りの瓦礫や土が空中に集まっていき3mほどの巨大な拳が現れる。


「本当は隠してたかったんだけど、あたしの本気だ」

「いいだろう、わしの力を見せてやろう。高みを知り、慄け!」


ゼウスは深呼吸をした。すると、纏っていた《雷人の衣》が霧散していく。


「雷装」

その一言と共にゼウスは雷の鎧を纏う。

そして、リードに手招きをする


「さぁ、かかってこい」


その瞬間、リードは踏み込んだ。


瞬間移動かのようにゼウスの元まで一瞬で接近すると。《巨人の大拳》を振り下ろした。

ゴリィという重たい音がしたがゼウスはただ真っ直ぐ立っている。連撃が続く、ものすごい猛攻が続く。


だがゼウスはただ真っ直ぐ立っている。


リードの顔に焦りと疲れが見えてくる。

攻撃は50連撃となった。ゼウスは真っ直ぐ立って痛みを感じさせない。


そして、リードに笑いかけ拳を構える


「第八階梯・雷天爆掌らいてんばくしょう

リードに拳が繰り出された。鎧は粉々に弾け飛び、衝撃が貫通する。


「くそっ…」

リードは血を吐き、膝から崩れ落ちた。


「おぬしもよく戦った。あと100年でも修行すればいい勝負かもしれんな」

「馬鹿にしやがって…」


リードは倒れ伏し口の端から血を垂らしながら答えた。

「まだ意識があったか、その点は褒めてやろう。今からわしはリーシャのとこ…何だあれは!」


ゼウスが話していると、ものすごい光がネオンテトラの最西で光り輝く。

その光は空へ届かんとしていた。


そして、光の中に現れたのは純白の何か

「あれは竜?いや龍に近い力を感じる。アインジン様に高階梯を使って報告するべきか?」


ゼウスは次の行動を迷った。

リードがこの場から消えたことにも気づかないほどに。

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