第二十七話「触らぬ神に祟りなし」


「姉上!!」

アズラエルは焦り、叫んだ。


(ハハッ焦ってる焦ってる)


黎春リーチュンはさらに笑みを深くする


(ていうか、この女あのおっさんの姉ちゃんかよ!似てねー)


「逃げろ!!」


(何言ってんだよwww)


黎春リーチュンはさらに笑みを深めクスクスと笑っている。


「無理に決まってるだろ、この魔術は第四階梯・影鎖えいさの呪縛て言う高等魔術なんだよ!Sランクでも抜け出すのは無理ってもんだ!」


それを言われてもなおアズラエルは焦っている。


「やめろ!逃げてくれ!」


(あいつ何言ってんだ?)


黎春リーチュンはアズラエルの言動を気にしながらも叫ぶ。


「お前の姉が殺されたくなかったら負けを認めて引け!わかったな?」

「うるさい!逃げろ!」


どことなく自分を無視したような言動に黎春リーチュンは徐々に苛立ちを覚える。


「だ・か・ら!無理だって言ってんだよ!聞いてんのか?お前の耳詰まってんのか?」


そして、アズラエルが何を言ってるのかさらに分からなくなる。


「早く逃げろ!お前に言ってんだ!早く姉上から離れろ!」

「あぁ?何言ってんだ?」


すでにアズラエルの姉であるミカエルは魔術で拘束しておりナイフを首に突きつけている状態だ。普通なら抜け出せない。


それは相手がミカエルじゃなかったらの話だ


「やめろ姉上!」

「はぁ?」


すると、ミカエルの体が薄く光り影鎖の呪縛が浄化される。


そして、一瞬にしてミカエルが黎春リーチュンの方へ向き拳を握り構える


そして殴った。


一発ではない約百発もの回数殴ったのだ。

拳の速度は音を超え


光すら超えた。


一般人から見たら拳を構えただけに見えただろう拳に

黎春リーチュンが気づくことはなかった。


「聖天の流星」

「はぇ?」


ミカエルの言葉と共に黎春リーチュンの体に拳の殴られた痕が徐々に現れ、体が浮いていく。


黎春リーチュンが気づいた時にはすでに体が後ろへ吹き飛ばされていた。


黎春リーチュンの体はボールのように跳ねながら吹き飛び家屋の壁に衝突。白目を剥いて倒れた。


アズラエルはやってしまったとばかりにため息をついている


「はぁ、姉上やりすぎです」

「あら?私何かしちゃったかしら?」


ミカエルは何をしてしまったのか分からずに首を傾げている。


「周りを見てください」


ミカエルが周りを見渡すと、お互いに戦っていたギルド《百花繚龍》のメンバーとギルド《亡者の鎌》と裏ギルドの者たちが驚きでポカンとしている。


黎春リーチュンがミカエルにあの様やられ方をしたので敵方の《亡者の鎌》と裏ギルドの者たちが恐怖で逃げ出した。


「「「うわぁぁあああ!!!!」」」


そして、ギルド《百花繚龍》のメンバーは逃げる者たちを捕らえる為に思考を切り替えて動き出した。

「《百花繚龍》のメンバーは直ちに逃げ出したものを捕らえよ!」


アズラエルの指示が行われ、ミカエルは未だに首を傾げて考えている。


「ねぇアズちゃん。私なんかしちゃった?」

「姉上、アズちゃんと呼ぶのはやめてくださいと言っているでしょう」


そして、アズラエルはため息をついてから話を続ける。


「私たちは正体を隠しています。そして、この世界の住人たちは私たちより平均的な能力値が低いのです。そこで高すぎる、あり得ないものを見てしまえば怪しまれる場合があるのです。だからアインジン様達は手加減をしているのですよ」

「そうだったのね、ごめんなさい。今から気をつけるわ、アズちゃん」


「だから、アズちゃん呼びはやめてって…」


ズバァァァアアン!!


すると、遠くに大きく美しい斬撃が見えた。


「あれはヴィジーか?」

「そうみたいね。でもヴィジーさんなら大丈夫よ」


ミカエルの言葉にアズラエルは当然と言わんばかりに頷く。


「当たり前です、心配なんて必要ないですよ。それより私たちは皆の手伝いをしましょう」

「そうね、お姉ちゃん頑張るわ!」


ミカエルは両手を体の前で握った


「姉上はすでにあやつの相手で頑張ったでしょう」


アズラエルはミカエルが吹き飛ばした黎春リーチュンの方を見た。

「なに?あの者は逃げたみたいですな」

「大丈夫なの?」


「大丈夫ですよ、すでに私たちで倒せる相手と分かったのですから」

「そうね、それよりみんなの手伝いに行きましょう」


そして、アズラエルとミカエルは《百花繚龍》のメンバーと共に残党狩りを始めたのだった。

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