第二十五話「異変」


「大変です!大型魔術結界がネオンテトラを覆うように発動されました!」


それは突然だった。だけど私以外のギルドメンバーは焦っていなかった。


「どうしましょう、ゼウスさん」

「まず、外との連絡ができるか確認しろ」


そして、ギルドマスターがいない時のギルド管理権を持っているゼウスさんが指示を出す。

指示を受けた探査魔術の得意な冒険者が調査を始める


「ダメです。妨害魔術が結界に組み込まれてます」

「なら、わし達でどうにかするしかない。誰かは知らんが、わしら《百花繚龍》に手を出したらどうなるか教えてやれ!」

「「「はい!!」」」


私は、ただただ驚いた。これが冒険者ギルドのトップなんだと



          *



「相手の特定はできたか?」

「はい!おそらくですが《亡者の鎌》の仕業だと思われます。《亡者の鎌》ギルドマスターと数人の幹部を確認しました」


すると、調査をしていた冒険者の顔が徐々に青ざめる。五大ギルドの一つである《亡者の鎌》が攻撃を仕掛けてきたのだから当然だ。それに、最近の《亡者の鎌》はギルドマスターが新しくなってから悪い噂がちらほら聞こえてくる。今回もその一つなのか?冒険者組合規定に違反してでも実行したい何かがあるのか?

と考えてしまう。


そして、事態が動き出す。


「大変です!《亡者の鎌》が動き出しました!港街の各方面から数百人規模でこちらに向かっているようです」


それにはゼウスも驚いていた。

「それはおかしいぞ!《亡者の鎌》の所属人数より多いではないか!」


そう、《亡者の鎌》は数十人しかいない五大ギルド内で一番少数のギルドなのだ。


すると、ヴィジーがゼウスの隣に並ぶ。


「ゼウス様、おそらく《亡者の鎌》は裏ギルドと繋がっていると思われます」

「裏ギルドか!」


裏ギルド


主に犯罪を犯して冒険者組合を追放された冒険者が暗殺や密輸、テロに殺人、組合で違法と定められた依頼を受ける集団のことを言う



「《亡者の鎌》め!ギルドから追放されるような事を起こして何が目的だ!?結界の効果はまだ判明しないのか?」

「まだです!あと少しで解析終わります!」


「よし!では、各方面から来る奴らの相手をしてやるぞ」


港街ネオンテトラは東に大きな港があり、その周りに半円状の外壁を持つ街だ。


「わしは西に行く。ヴィジーは北を」


「わかりました」

ヴィジーは早速戦いの準備を始める


「ミカエルとアズラエルは南を頼む!」

「お任せください」

「ハッ!」

ミカエルは笑みを浮かべ、アズラエルは拳を合わせてお辞儀する。


「では各自準備を始めろ!」


そして、ゼウスが指令を出したあと結界を解析していた冒険者が慌てて走ってくる。


「ゼウスさん!結界の効果がわかりました!」

「わかったか」


「この結界は禁止魔術の素体魔素化術式と魔素凝縮術式の組み合わせです」


素体魔素化術式は

人の体を構成する物質を全て魔素に変換する魔術であり。使用するために人一人の命が使われるため禁止されている。


そして、魔素濃縮術式は

この術式は禁止はされていないが、今回の場合たくさんの人が魔素となり凝縮されると強大な力となる。もしそれが人間に凝縮された場合、その人間は人を超えた存在になりうる


「なんだと!それはどうすれば阻止できる?そして、いつ発動する?」

「西の外壁付近に巨大な魔石があります。それが結界の調整に使われています。その術式を書き換えれば阻止可能だと思われます。そして、おそらく発動まで3時間ほどかと…」


「3時間か…よし!では、今術式の書き換えができる者はいるか?」


誰も手をあげない


「そうだったな、この規模の術式だとハリシャが適任だが今日はアインについて行っているんだったな」


今日は組合本部で五大ギルドマスター会議が行われている。そのためジンをはじめツバメにハリシャも不在なのだ。Sランクであるハリシャは魔術も得意としていて魔術の書き換えもできる。そんなSランクがいないのだ


ギルドに暗い雰囲気が漂う


その空気を変える者がいた。


1人の冒険者が手を挙げる


「リーシャできるのか?」

手を挙げたのはリーシャだった。


「やってみせます、私が得意なのは『かく』魔術です。実家でも魔術の書き換えは得意でした」

リーシャの瞳は強い光を放っていた。


「よし!リーシャ任せるぞ!西に向かうギルドメンバーはリーシャを守れ。《百花繚龍》が世界一のギルドだと言う事を教えてやれ!」


「「「ウォォォオオオオオオオ!!!」」」



          *



「緊張してるの?」

「緊張しますよ、大きな仕事を任されたんですから」


すでにヴィジー達は北に、ミカエルやアズラエル達は南に戦いに向かった。残ったのはリーシャ含むゼウス達だけだ。

そんな中、緊張して深呼吸を続けてたリーシャにスハラが話しかけた。


「大丈夫だよ私たちが守るから」

「はい…」


「よし、準備も終わったから。わしらも行くぞ」


そして、ゼウス達も動き出した。 


西の外壁へリーシャ達を先頭に向かう


リーシャの隣にはスハラが後ろにはゼウス達がいる。


「敵が来てるにしては静かですね」

「気をつけなリーシャ敵が潜んでるかもしれないからな」

「はい」


ギルドから数百m走った辺りで異変が起こる


地面がゴゴゴゴゴゴゴと音を鳴らす。


全員が立ち止まり周りを警戒する。


リーシャ達も警戒のため周りを見渡す

リーシャの隣にスハラがいて、ゼウス達が2人から少し離れた所にいる。それが悪手だった。


突然、ゼウス達とリーシャ達の間に

高さ・数十m、幅・数百mにもなる大きな土の壁が現れる。


壁はリーシャとスハラをゼウス達から離れさせた。


「あぁ残念だ。本当に残念だ。いい友達であり後輩になると思ったんだけどな」

リーシャはその声の主に目を向ける


「リードさん!!」


壁の上にいたのはリードだった。


「やっぱり、リーシャは《百花繚龍》のギルドメンバーだったか」

「何を言ってるんですか?こんな事はやめてください!」


「それはできない話だな、しかも目の前に強そうな奴がいるじゃないか」

リードはゼウスのことを見てそう言った。


「いいさ、リーシャ。たった2人で止めに行けばいい。止められるならな」

「リードさん!この結界が発動すれば中にいる人は魔素になってしまうんですよ!?」


「私は強い奴と戦えるならなんでもいいんだよ。この計画だってな、どうでもいいんだよ」

「いいですよ!絶対この結界を解除してリードさんから話を聞かせてもらいます!絶対死なせませんから!」


そう叫んでリーシャはスハラと共に西の城壁まで向かった。


「あぁ行っちまったか」

寂しそうにリードはつぶやく


「お主はリーシャの友人なのかな?」

ゼウスはリードに向けて質問する。


「あぁそうだな友達だな…だが!今は関係ねぇ!お前Sランクのゼウスだろ?戦ってあたしを楽しませてくれ!」

リードはそう言って壁から飛び降りる。


「いいだろう!全力で来い!」

ゼウスもそれに応えた。

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