第三章

第二十話「冒険者」


冒険者とは


個人や団体から依頼を受け様々な事を解決する、いわゆる何でも屋だ。


冒険者組合はそんな冒険者のサポートや依頼の斡旋、評価をする機関である。


この冒険者の評価というものは、冒険者の格付けであり冒険者を守る制度でもある。


冒険者は上から


S→A→B→C→D→E→F


とランク付され、冒険者は自分のランクの一つ上までの依頼を受注することができる。

このランクは、模擬戦闘試験や依頼の達成率

戦闘力を測ることのできる水晶での計測などなどから割り出し、格上げも格下げもある。


そして、もう一つ冒険者ギルドというものがあり、これは組合が団体で活動を認めた者たちのことを言う。


ここで出てくるのが冒険者パーティとの違いだ。パーティも団体であり人数の制約はないがギルドは依頼者から直接依頼をもらうことができる。

依頼料から組合の仲介料が引かれないのだ

他にも組合から依頼をもらったり、商会がスポンサーにつくこともある。

それに、沢山の冒険者が所属するため色々な依頼を受けることができる。


そんな冒険者ギルドにもランキングがある

ギルド全体の依頼達成率、所属冒険者のランクなどなど、様々な情報から作られるこのランキングで上位5位に入るギルド達を《五大ギルド》と呼ぶ。



         *



スルド統一国家・首都

冒険者組合本部・大会議室


「グランドマスターはまだなのか!?」


そう叫ぶのは金髪の青年、蒼に金の装飾が施された全身鎧を着ている。

彼は五大ギルドの一つ

男性のみで構成された男尊女卑の激しい最古のクラン

《英雄の盾》

ギルドマスター:メルト・アイハード


「まぁそんな急かすなよ坊主」

「何だと!」


メルトのことを坊主呼ばわりした。筋骨隆々で少し伸びた茶髪を後ろで結い、髭を剃り揃えた巨漢の男も五大ギルドの一つ

必要なのは力。魔術師はいない、ほとんどが戦闘職のクラン

《豪腕破城》

ギルドマスター:ドイルド・ディタール


「いいじゃないですか、珍しくアイン様もいらっしゃっているのですから静かに待っていましょう。そう思うでしょうショルカさん」


この飄々とした冒険者らしくない紳士服とボサボサの茶髪に片眼鏡をつけているのが五大ギルドの一つ

遠方への依頼や探索系の依頼を多く引き受けるギルド

《不死鳥の羽》

ギルドマスター:バサール・トレイル


そして、バザールに話しかけられても黙ったままいる暗い雰囲気のフードを深く被った線の細い男は五大ギルドの一つ

その詳細は組合が調べでも情報が少ないが五大ギルド内で一番構成人数の少ないクラン

《亡者の鎌》

ギルドマスター:ディザド・ショルカ


最後にバサールに名前を呼ばれて嫌そうな顔をした女性。


長い白髪をたなびかせた傾国の美女と言える美貌に豊かな胸、美しいくびれと完璧な肢体を持ち、史上最速でSランク冒険者となり史上最速で五大ギルドの仲間入りをした現在最強の冒険者と呼ばれる女性は五大ギルドの一つ。ほとんど女性で構成されたギルド

《百花繚龍》

ギルドマスター:アイン


この五人が現在の冒険者のトップ達だ。

すると、会議室の扉が開かれた。


「すまないすまない、待たせてしまったな」

入ってきたのは少しふくよかな髭を生やした初老の男性。


冒険者組合のグランドマスター

ワーク・エレノイア


冒険者組合のトップであり元冒険者でもある。


「では今回も、特殊依頼の分配を始める。まず炎竜退治の依頼だが、どこがやるかね?」


そこで、手を挙げたのは2人

《英雄の盾》メルト

《百花繚龍》アイン


「アインなぜ挙手をする!?この依頼は危険だ君がやるべきではない!」

「呼び捨てはやめてくれ、この依頼は私がやるわけではない。クランのAランクパーティにそろそろ竜殺しを経験させたいだけだ。それに、龍や竜関連の依頼達成率は私たちの方が高いはずだが?」


メルトが立ち上がる。

「それは、アイン達がいるからじゃないか!」


そこにワークが割り込む

「落ち着いてくれメルト君。実際達成率はアイン君達の方が高い。言っては何だか、最近の英雄の盾は達成率が徐々に下がってきている。アイン君を融通するわけではないが組合としても百花繚龍に頼みたいのだが、どうかな?」

「くそっ…」


メルトは諦めてドスンと椅子に座った。


「ありがとうメルト君。では、この依頼は百花繚龍にお願いしよう。そして次の依頼だが、商業ギルドから神樹国家シルフィリアの調査依頼が来ているが…」

その依頼に手を挙げているのは《不死鳥の羽》のみだった。


「やはり、バサール君のところだけか…では、この依頼は不死鳥の羽にお願いしよう」


そして、一つ一つ依頼が処理されていき

全ての依頼の分配が終わった。


「では、今回の五大ギルド特別会議を終わりにしよう。あ!あと、新しく建国された始帝国だが。組合での交渉により始帝国での冒険者の活動許可が降りたよ。始帝国に関しては情報を集めてから再び会議を開くと思うから覚えておいてくれ」


会議はワークの言葉で終わりとなった。

 

会議終了後


冒険者組合本部の廊下にて


「会議は終わったのですか?アイン様」

そこにいたのは和服を着崩してサラシを巻いた女性


「あぁツバメもよく待っていてくれたね」

「今回はどんな依頼が分配されましたか?」


「炎竜退治、昇格試験の監督官、クラーケン退治の三つだね」

「炎竜にクラーケンですか」


「担当させるパーティは後で決めよう」

「わかりました」


とアインとツバメが話をしていると、そこに割り込む男が現れた。


「おい!アイン」

その声に再びアインは嫌な顔をする。


「何用ですか?メルト」


そこに現れたのは《英雄の盾》のギルドマスター・メルト


「何用ではない!いつになったら僕のギルドに入るのだ!?」


アインはため息を吐く

「その件はお断りさせていただいたはずです。そもそも、あなたのギルドに女性は入れないはずでは?」


「そんな物、僕が変えてみせる!」


「そうですか、ですが私は今のギルドを捨てる気はありません。今もこれからも。では失礼します」

「ちょっと待っ…」


そして、アインはツバメと共に転移した。


「長距離転移とは、さすが僕が認めた女性だ」


そんな感じのメルトに話しかける人物が現れた

「おいおい!めんどくさい男は嫌われるぜ〜」

《豪腕破城》のギルドマスター:ドイルド・ディタールが話しかけてきた。


「うるさいぞ、ディタール。そして、ぼくはめんどくさい男なんかじゃない」

「フラれてもしつこく誘うのは十分めんどくさいと思うがな〜」

「ウッ!」


メルトは的を射抜かれて、たじろぐ。


「まぁあの《英雄の盾》のギルドマスターが1人の女に夢中なんて珍しいこともあるもんだ」


そう、メルトがギルドマスターを務める《英雄の盾》は冒険者組合創立当初からある、古いギルドである。男性貴族達が男性のみでギルドを立ち上げたのが始まりで、当時の男性優位の考えが未だにギルド内に充満している。その筆頭がメルトだったのだが、アインと出会ってから考え方が優しくなってきているのだ。


「まぁアインはいい女だからなぁ」

「それだけの言葉では終わらないぞ!」


と大声で叫び、どんどんとアインの良い所を述べていく。ディタールはめんどくさいスイッチを押してしまったと後悔した。


「わかった!わかった!お前の気持ちは

じゅーぶんわかった!そういうことだから、じゃあな俺も仕事しなきゃならねぇんだ!」

と半ば無理やり切り上げてその場を去った。


「まだ話し足りないが、まぁいいとしよう!」

とアインに嫌われていることも理解せずに

今日アインと話せたことに気分が上がり、若干スキップ気味な歩き方でメルトはその場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る