第十三話「開戦」


首をかき切ったブラスは仰向けに倒れた。

その死体にヴァルシアと共に近づく、


「ヴァルシア。お願い」

「わかりました」


すると、ヴァルシアは死体に掌を向けると

ヴァルシアの靄が放出され、死体を一瞬包み込む。


「大丈夫です。悪魔イディンの精神の存在は確認されません」


その言葉に安心し、ブレイブ王に向く


「ブレイブ王、あなたの息子は悪魔を倒したようです」

「そうですか…」


みんな暗い顔をしている、泣いている者もいる。ルイやセインはすでに泣き崩れている。


だが、ブレイブ王はこの場にいるエルフ全員に向けて一喝


「泣くな!」


ブレイブ王は泣きそうなのを堪えながら叫んだ。


「泣いてもブラスとムートは戻ってこない!

涙で救えるのは自分だけだ!」


その言葉に皆が涙を拭う。


「悲しむことは悪いことではないが、悲しみですべき事を忘れるな!王子達の行いは国のため民のため、家族のためにした事!ならば!私たちも悔やんでいるだけではなく、この国を守るために行動をしなければならない!」


ブレイブ王はジン達の方へ来ると


「そして!強力な味方がここにいる!」


僕は優しくエルフ達に言葉を投げかけた。

「私たちにお任せください。私たちが魔物を殲滅するので、皆さんは守ることだけを考えていてください」


「ありがとうジン殿」


ジンとブレイブは互いに握手をし、今後の作戦を立てるのだった。



         *



「そうか、イディンがやられたか」

下級悪魔の報告を聞いたガニングはそう口にした。


「まぁその程度だな、次の作戦を始めるぞ」

「はい!」


下級悪魔が去っていく。


「神樹国家との戦争再開だ」


その夜、森にはガニングの高笑いが響いた。



         *



悪魔騒動の翌日、神樹国家シルフィリアの大樹の城。


城の会議室


「大変です!魔物達が動き出しました!」


武官の伝令を聞いた国王ブレイブはジンの方へ向き「頼みます」とだけ言った。


今回の戦いにはシルフィリアの戦士は出ないことになっている。シルフィリアの戦士は国の守りに使うためだ。戦いは主に森羅騎士団の騎士と断罪ノ聖典が行う、一応魔族ガニングはヴァルシアに相手をさせる。


そして、今回の作戦は「天主」ルーラ麾下の神官天使5人の内の2人にシルフィリアの街を守るために第八階梯魔術《新星結界》を張ってもらい。残りの3人で魔物達を逃さないために、この国と神樹の森全てを覆う第六階梯魔術《不壊結界》を張ってもらった。


そして、断罪ノ聖典1人をリーダーにし森羅騎士団の騎士5人をつけた部隊を4つ作り東西南北に分かれて戦ってもらう。



僕はすでに編成を終えた部隊の方に向く


「今回君たちには東西南北にそれぞれに散ってもらい魔物の殲滅をしてもらう、情報によれば東西南北には魔物を導いている悪魔がいるそうだ。それは断罪ノ聖典に任せる。そして、最後に…」


全員が黙って僕の方を見る


「我、ジン・ファウストが汝らに問う。準備はできているか?」


騎士達は静かに首肯する。


「よろしい諸君。では、神樹国家に蔓延はびこる害虫を一匹残らず潰そうじゃないか」


ジンは両手を広げる


「さぁ楽しめ…鏖殺みなごろしだ」


「「ハッ!」」


覇気の籠った返事と共に騎士と断罪ノ聖典達は動き出した。



後に神樹国家シルフィリアの王、国王ブレイブ・シルフィリアはこの時のジンは泣いていたと語った。目尻は悲しみで垂れ下がり涙を流していたそうだ…








口では裂けそうな笑みを浮かべながら



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る