夜になった。
夜になった。
俺は夕飯を食べ終えて自室に戻り、明日の登校に備えて荷物の整頓をしていた。
夏休み最後の日の夜はなんだかとても静かだった。
むしろ静寂という音が鳴り響いているんじゃないかと思うほど、その静けさはいつも以上に強く感じられた。
だが、この期に及んで慌てるようなことはなかった。
高校生活も残りのほうが少ないくらいだったから、長期休業明けに向けて用意しなければならないことはだいたい頭に入っていた。
まあ、こんなもんだろう。
独り言を呟くみたいに心の中で荷物の整理に決着をつけ、俺は必要なものを詰め込んだ鞄を閉めようとした。
そのとき、勉強机の上に置いてあった携帯が鳴った。
手に取り確認すると、千歳からのメッセージが届いていた。
そこにはたった一文――。
〈追試、三科目とも合格しました〉
飾り気のない結果の通知。事実だけを記した必要最低限の報告。
それに対し、俺はすぐに返事を送った。
〈おめでとう〉
後輩を祝う先輩の一言。これ以上足すことも減らすこともできない五文字。
それだけ送信して、俺は携帯を机の上に戻した。
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