日照り雨にはご用心

行武陽子

第1話 神社

日照り雨が降るときは、何か起きると言い伝えがあった。

そんなのある訳ないけど、面白い言い伝えだと思っていた──こうなるまでは。


遡ること数分前である。


学校帰りに晴れているのにも関わらず雨が降っているという珍しい現象が起きていたから雨宿りするところを探した。


いつもと同じ帰り道に帰っていたはずだけど、見たことのない立派な神社がそこにはあった。


「えっ……、今まで、こんな神社見たことあったけ」


いや、見たことのない。

真新しい神社が、あったら覚えているはず。

それにしても、お社もでかいから雨宿りしてから家に帰ろうかと思ったのが間違いだったのかもしれない。


神社に入る前にマナーをきちんとしないといけないから鳥居をくぐる時にお辞儀をする。


お邪魔します。


鳥居をくぐると今さっきまで雨が降っていたのに嘘のように晴れている。


「えっ……? あれっ、雨降ってたのになんで晴れてるんだろう」


それにおかしいのは、そこだけではない。

入る前の景色と入った後の景色が違うのだ。入る前に見た景色は、鳥居のすぐ側にお社があったはずだけど入った後の景色では、明らかに遠いし入る前にはなかった参道もある。


「広すぎる……」


自分が通っている学校の敷地ぐらいの広さはありそう。御社殿とは別に小さいお社もある。境内社があるとは相当でかい敷地だな。

ここは、もしかして自分のいる町ではないところに来たとか? まさか、そんな訳ないよねー。


「何者だ!」


「ひぇ!! えっ……、ケモ耳?」


なにこれ……? ドラマの撮影?


「なに、呆けている。貴様に話かけてるんだぞ」


あまりに見慣れない光景だったから、ついその人物を目で追っていたけど気づいたらすぐ側にいて自分に向かって話しかけていた。


「え、えっと……。道に迷ってしまったんですけど──ここはどこですか?」


最初にその人物と話した言葉がそれだった。というか、それしか言えない状況にいたから仕方ない。

でも頭についてるもふもふとした動物の耳が気になる。


「ここは神界だぞ?」


耳を見ていたのに衝撃的な言葉に絶句してしまう。

は? 何言ってんだこいつ。さすがに初対面なのに冗談にもほどがある。


「お前、人間か!? 結界があるから人間は入れないはずだが……」


顔をじっくり眺められてから一呼吸置いてため息をつかれる。


いやいや、最低だな! こいつ!

眺めるだけ眺めてため息かよ!!


「あぁ、すまない。結界の点検とか見直ししないとだからため息をついただけでお前にした訳でない」


「はぁ……。なるほど」


自分にため息ついてないのはわかったけど、でもお前呼ばわりは酷いよね?

名乗ってないけど他の言い方にしてほしい……。


もしかして本当にここ神界なのか。だって撮影とかならカメラとか人とか多いはずだけどそれらしき人もいない。


それに──ケモ耳つけてるのが何よりの証拠だよな。


とりあえずは、よく知らない人物を頼る他ないし様子見でもしよー。

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