第5話 冒険者の朝は早いらしいが、私は…

小鳥の囀りが聞こえる頃、目覚ましもなしに自然と目が覚めた。


見慣れない天井が見える。

私の部屋では、ない。


「うーん…」


まだ夢の中かと、もう一眠りしようと寝返りをうち、


むにょーん


「ぐぇ」


押し戻された。


「ぷ!ぷーりん♪」


黄色いむにょむにょが手を上げていた。


「…あ、プリン、おはよう」


そうだった、ログアウトできなくて昨日そのまま寝たんだった。


時間も経ったしと、試しにログアウトボタンを探すが、


「まだダメかぁ…」


まだ復旧には時間が必要なようだった。なにしてんだよ、偉い人s。


「ぷっぷっ!きゅるー…」


見るとプリンがお腹?のあたりを切なそうにおさえている。


「…あは、お腹、空いたねぇ。ご飯を食べに行こうか、プリン」


●◯●◯●◯●◯●◯●


食堂には人影はまばらだった。

でもおばさまが洗い物をしてる様子からすると、どうやらもうほとんどの泊まり客が食事を済ませた後のようだ。


「みんな、早起きだなぁ」


そう呟きながらメニューを眺めていると、水を持ってきてくれたお姉さんが


「いい依頼は早い者勝ちだからね、普段からみんな早起きだけど、今日はやけに早起きが多かったみたいだねぇ」


なるほど。どうやら、早い者勝ちでいい依頼とやらをゲットしておこうというのが、ゲーマーの基本なのだろう。そんなこと知らんがな。という初心者はこうしてのんびり起きてくるのだ。まぁ、どれがいい依頼とかわからないから、早起きしても意味ないしね。


お姉さんにお礼を言いつつ注文を済ませる。


しばらくしておいしそうな匂いがしてきた。

香ばしい魚のフリットにフルーツドレッシングのサラダ、コーンポタージュにパンの盛り合わせ。朝からしっかり食べて、今日もウサギを狩りに行こう。昨日でだいぶ慣れたしね。


「食べる?」


プリンにパンをちぎって差し出してみる。お腹空いた風だったから、なにか食べられるものがあるといいんだけど。


「ぷぷっ♪」


嬉しそうに丸呑みした。

そしてサラダの菜葉をはむはむしてる。なんかかわいい。


「これも欲しいの?」


菜葉もちぎって渡すと、嬉しそうにこれまた丸呑みした。はむはむしてたのは、私に食べていいかを聞いてたのか…。


●◯●◯●◯●◯●◯●


朝食でお腹を満たすと、昨日聞いたギルドにやってきた。

お金になるかな、鞄の中身?


「あら、お嬢さん、素材買取は初めて?」


鞄を持ってキョロキョロしていたからか、カウンターにいたお姉さんが話しかけてくれた。


「あ、はい。この鞄にウサギ狩りした戦利品があって」


「見せていただいても?」


「はい、ぜひ、お願いします」


ドサドサっ!


鞄の中身を出すと、お姉さんは少し驚いたようにしていたが、丁寧に素材の種類と数を数えてくれた。



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