第4話、レベルアップ?ナニソレ?ワカリマセーン。


「とりあえず俺のクエストを達成する為に、

これから下に向かうけどいいか?」


俺がそう言うと、


「は、はい。頑張ってついていきます。」


足を震わせながらトーマスは言ってきた。


「まぁ、気楽に行こうぜ。

ここら辺のモンスターは弱いから。」


「そ、そうなんですか?

僕はずっと荷物持ちばっかりでまだモンスターと戦った事がなくて...。」


そっか...。

それじゃあ足が震えるのもしょうがない...。


「じゃあさ、10階層のボス部屋に行くまでモンスターと戦ってみよう。

危なくなったら俺が助けてやるからさ。」


「え!?だ、大丈夫でしょうか?」


「だいじょぶだぁ~。」


俺は変な顔で言ってみた。

すると、トーマスは変なものを見るような目をして、


「....本当ですか?

もし僕が死んだらクロムさんの事一生恨みますよ...。」


「だ~か~ら~、だいじょぶだぁ~。」


もう一回変な顔で言ってみる。


「あの、ふざけてるんですか?

ふざけているんだったら怒りますよ...。」


「....この面白さがわからんとは。

いいか?

俺はトーマスが緊張しているかな~と思ってわざとやったの。アンダスタン?

ほら、緊張とけたろ?」


「確かに...。

ただふざけてたのかなと思いましたよ。

ありがとうございます。」


「わ、分かればいいさ。」


実際は本当にふざけてただけなんだが...。

トーマスは伝説のお笑いグループのトリュフターズを知らんのか?

俺はカトゥちゃんよりケーンちゃん派なんだが...って、まぁ、いいか...。

トーマスにはこれからゆっくりとお笑い道を叩き込んで行けばいい...。


「さて、行くか!」

「はい!」


俺達は下の階に向かうべく歩き始めた。

歩き始めてすぐに、

石で出来た斧を持ったゴブリンソルジャーが出てきた。


「で、出た!!」


そりゃ出るでしょ...。

だってダンジョンだもの...。


「トーマス!ソイツは動きが遅い。

相手の動きをよく見れば簡単に避けれるぞ。」


「は、はい。」


トーマスは剣を構えて集中していた。

俺は鼻くそをホジリながらトーマスの実力を見た。


ゴブリンソルジャーはトーマスに向かって走りだし斧を振り回す。

トーマスは冷静にゴブリンソルジャーの攻撃を躱わしていた。


「トーマス!

躱わしてばかりじゃなくて反撃しろ!」


「は、はい!」


攻撃が当たらないゴブリンソルジャーは怒って大振りの一撃を繰り出した。

トーマスは見逃さなかった。

その一撃をバックステップで躱わす。

隙だらけになったゴブリンソルジャーにそのまま突っ込んで首元に一太刀。

ゴブリンソルジャーの首は落ちそのまま絶命した。


「はぁはぁ。た、倒せた...。」


「やれば出来るじゃん。いい動きだったぞ。

この調子でドンドン行ってみよう~。」


「ドンドンって...。マジですか...?」


「マジ!

強くなる為に近道はない。

強くなりたいんだろう?」


「強くなりたい...。

僕は誰よりも強くなりたい!」


トーマスは決意を固め前に進んだ。

俺はしっかりゴブリンソルジャーからのドロップ品を収納して、トーマスの後を追った。

それから、トーマスは次々とモンスターを倒して行った。


なるほど。トーマスは目がいいな...。

さっきから攻撃を一回ももらっていない。

目の良さに身体も反応している。

威力はまだまだだが、鍛えれば相当いい剣士になるだろう。

荷物持ちに使おうと思っていたがこれは思わぬ収穫なのかもしれない。


俺はトーマスに感心しながらドロップ品を収納した。

そして、辺りのゴブリンソルジャーを倒し終わった時にトーマスの身体が急に光だした。


「うおぉ!眩しっ!!何だその光!?」


「えっ?クロさん知らないんですか?神の祝福の事を。」


「神の祝福?」


「自身のレベルが上がることですよ。」


「レベル?何だそれ?

俺ここ2年ダンジョンに来て、

だいぶモンスターと戦ってきたけどそんな風になったことなんて一回もないぞ。」


「えっ?逆にクロさんが謎ですよ!!

普通の冒険者は皆知っていることですよ?」


「マジか!?そんな話一回も聞いたことなかった。」


「冒険者になるときに試験とかありましたよね?」


「あったような、なかったような...わかんね。

なんせ適当だったからな。」


「要するに聞いてなかったんですね...。

そこで説明してたんですけど。

それにしても一回もレベルが上がらないなんて変ですね。

冒険者になったとき鑑定してもらわいましたよね?」


「あぁ...。

してもらったけど鑑定できなかったんだよ。

全く何だってんだよ。ギルドも当てになんないぜ。」


「いやいや、そんな人クロさんしか居ないと思うけど...。」


「まぁ、そんなことよりさっさと先に進むぞ。昼までには帰って食堂でドギマギウオッチング見なきゃだからな。」


「え!?食堂に魔導映像箱まどうビジョンがあるんですか!?」


「普通にあるだろ?俺が泊まっている宿の食堂に付いてるぞ。」


「いやいやいや!!!

普通ないですって!?いくらするか分かっているんですか?」


「わかんね。」


「金貨300枚ですよ!金貨300枚!!

普通貴族の人しか持ってないんですって!!」


「そんな事言ったてあるんだからしょうがねーじゃん。

今日のドギマギウオッチングのゲストが王都の女優フウカちゃんなんだよ。

フウカちゃんを見れなかったら俺はきっと死ぬ。いや絶対死ぬ。」


「いやいや...。そんな大袈裟な..。」


「大袈裟じゃないぞ。

冒険者としてのモチベーションが下がりに下がって俺はきっとダンジョンで死ぬ。」


「はいはい。なら行きますか。

急ぐならクロさんも戦ってくれるんですよね?」


「え?何で?

10階層まではトーマスが戦うに決まってんじゃん。俺が戦ったらトーマス強くなれないし。」


「でも、ドギマギウオッチングの時間が...。」


「だから、トーマスがガンガンとモンスターを倒していけばいいだけの話だろ?

もしドギマギウオッチングの時間に間に合わなかったら、トーマスお前をしばくだけだし。」


「おい!!そんな話聞いてねーよ!」


「しばかれたく無かったらさっさと進む。」


「あんたは鬼や~!!」


「はっはっは。俺は鬼より怖いからな!!

オラ!走れ!走れ、痴漢者ちかんしゃトーマス!」


「誰が痴漢者ちかんしゃだ!!

くそぉぉ!!覚えてろよ!!」


ここからトーマスの快進撃が始まったのだった。

そして、いつの間にか俺が荷物持ちになってたのは内緒の話だ。

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